青木茂建築工房 賃貸を分譲の「千駄ヶ谷 緑苑ハウス」に再生
青木茂建築工房(主宰:青木茂首都大学東京特任教授)が11月12日、青木氏がリファイニング建築の設計・監修を担当する再生マンション「千駄ヶ谷 緑苑ハウス」の解体現場見学会を行った。JR千駄ヶ谷駅から徒歩3分の賃貸マンションを同社として初めて分譲マンションに再生するプロジェクトで、行政、不動産、設計事務所、研究者ら約300人が押し寄せた。
物件は、JR中央・総武線千駄ヶ谷駅から徒歩3分、渋谷区千駄ヶ谷5丁目に位置する7階建て全17戸 (非分譲住戸1戸、非分譲事務所3戸、一般分譲13戸) の規模。専有面積は38.93~50.25㎡、現在分譲中の住戸(6戸)の価格は3,390万~5,180万円。坪単価は290万円。リファイニング工事は山田建設。完成予定は平成26年2月下旬。売主はハチハウス。媒介は三井不動産レジデンシャル。既存建物は築43年が経過。再生工事を着手後、これまでに半分以上が分譲済み。
青木氏は、「見学者が100名、200名は想定していたが、300名を突破するとは。僕もよく分からない。こういったプロジェクトは大きな可能性を秘めている。旧耐震でも再生できないほど耐震性に問題があるのは100棟に1棟ぐらい。今回のプロジェクトは賃貸にするか分譲にするか、事業主をどうするかなどに時間を割かれたため企画段階からこれまで3年がかかったが、現在の事業主は決断が速かったため、3か月で基本設計ができた。検査済証があったため、今回の工事では建築確認の必要はない。行政と協議を行い、確認申請が不要の工事内容であることを確認している」と語った。
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まず、見学者の数から。見学会の直前、9日にメールが届いた。「このたびは『千駄ヶ谷 緑苑ハウス リファイニング工事』の解体現場見学会に沢山の参加のお申し込みをいただきありがとうございました。現時点におきまして参加者数が約300名に達しましたため、安全上の観点から、大変恐縮ではございますが受付を締め切らせていただきます」と書かれていた。
この人数に驚いた。何かの間違いではないかと思った。大手デベロッパーが分譲するマンションの見学会でも多くて50人ぐらいしか集まらない。青木先生とハチハウスには失礼だが、たかが17戸の再生マンションに300人もの見学申し込みがあるはずがないと思った。青木先生が〝さくら〟として学生さんを動員したのだろうと思った。
ところが、当日の現場は見学者でごった返していた。主催者によると見学者は国交省を含めた行政、不動産会社、建築設計事務所、大学の研究者が中心で、学生さんらしき人は数えるほどしかいなかった。ビルやマンションの再生が大きなテーマになっているが、300人という数に関心の高さをうかがわせた。
リファイニング建築とは同社の登録商標で、従来のリフォームやリノベーションよりさらにレベルの高い安全性を確保し、トレンドを見据えたデザインを施した再生手法のことだ。
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現地は、敷地北側に新宿御苑が見渡せる立地。すぐ近くにはトーセイが分譲して早期完売した「THEパームス千駄ヶ谷 御苑の杜」(23戸)が建っている。 従前建物は賃貸と事務所の複合用途建築物。
旧耐震の建物であることから、様々な手法により耐震補強を行い、第三者調査機関に委託し、躯体の耐用年数推定調査を実施。税法上の残存耐用年数は7年であるにもかかわらず改修後の物理的耐用年数は残り50年と評価された。35年の住宅ローンも借りられる予定である。
モデルルームは内装と設備の一新を図ったもので、天井高は約2400ミリ(スラブ厚120ミリ、階高2800ミリ)。二重床・二重天井。従前は北側住戸には小さな窓しかなかったものを、耐震補強することで幅約6mの開口部を設けて窓にしている。
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分譲単価について。新築ならいくらぐらいか判断ができるが、躯体をそれほどいじらないリノベーションでもないから評価は難しい。工事費については青木氏から聞いたが、これは売主のこともあるから明かせない。ハチハウス・青木歩実社長(青木氏とはたまたま同姓)は「坪単価は新築の8掛けと考えていただいて結構」と話した。
見学会に参加していたある大手のリフォーム会社の常務と取締役は、青木社長から単価を聞いて「よく付けましたね」と感嘆の声を上げたので、記者は「それは安いという意味? それとも頑張った値段? と解していいのですか」と聞いたらすかさず「もちろん、頑張った値段」と返ってきた。