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2013/12/01(日) 13:12

ポラス「子育てママの理想の家」完成 子育て・夫婦・地域問題などを反映

投稿者:  牧田司

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「子育てママの理想の家」

 ポラスグループの中央グリーン開発は11月29日、地域の子育てママさんの提案をそのまま建設・販売する「子育てママの理想の家」4棟が完成したのに伴い報道陣向けに公開した。

 「理想の家」は、今年1月、地域の子育てママを支援する活動を行なっているNPO法人子育てパレットと同社グループが協働で立ち上げた「子育てママの理想の家をつくろう」プロジェクトによるもの。4月のコンペティションによって4作品を選定。当初の予定では6名の審査員によって選ばれた最優秀プラン「Give&Take」のみをモデルハウスとして建設されることになっていたが、他の3チームも「建築に値する」と判断されて全棟を建設することになったもの。11月16日から販売されている。

 挨拶した中央グリーン開発事業部長・戒能隆洋氏は「全206棟のうち169棟を供給し151棟を販売することができた。2年間で完売する当初計画通りに進捗している。今回の『理想の家』を始め補助事業の太陽光・HEMSなどを採用した住宅を供給して販売スピードを加速させていきたい」と話した。

 今回公開されたモデルハウス4棟のうち最優秀の「Give&Take」(土地面積約96㎡、建物面積約96㎡、価格4,080万円)が販売済み。戒能氏は「このプランはもっとも条件が悪かったにも関わらず、プランの良さが評価された」と提案者を称えた。

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 記者は、最初のコンペティションを取材したとき、小さな子どもの声を含めてにぎやかな模様をストレートに伝えて顰蹙を買った。改めて関係者にお詫びしたい。

 実際の建物が完成したのを見て、「子育てママ」の問題は、単にママの置かれている問題だけでなくパパの立場、就労条件、地域とのコミュニティの問題など様々な問題が建物に反映されていると感じた。以下、ママさんやパパ、デベロッパーの商品企画担当者、営業マンにも参考になるはずなので、思ったままを紹介する。不愉快な表現があるとすれば、すべて記者の責任であることをお断りする。

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「Give&Take」の提案者(左から加藤さん、宮下さん)

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 Bチームの「Give&Take」モデルハウスが「花丸」だ。ハウスメーカーやデベロッパーの発想の域を飛びぬけていた。記者がもっとも評価したのは主寝室から梯子ではなく階段でつながっているロフト「パパのくつろぎ空間」。ロフトにこもって仕事ができるし、布団を持ち込めば一人寝もできる。もちろん酒もタバコも吸える。企画した宮下さんは「みんなに聞いたら、男の人ってこもりたがるのよね」と話した。当たり! 世の男性は押入れや段ボール箱にこもった経験は必ずあるものだ。子宮願望といってよい。これを巧に取り込んだ。(関係ないが安部公房の「箱男」もお勧め)

 対面キッチン&リビングとつながった1階の段差リビングもいい。小上がりのステップを3段、高さ約60センチにしたのがミソだ。

 この種の段差リビングはポラスも他社もよく提案するが、高さはせいぜい40~50センチだ。60センチにしたのは「結婚当時の写真とか子どもの記録、捨てたくない思い出がつまったガラクタ、季節の入れ替えものなど何でも収納したい」(宮下さん)というのがその理由。高さが低いと作業がしづらく、まるまる収納スペースにできないのは容易に想像がつく。これは、ポラスの住宅は1階の天井高を2.7メートルにしているから実現したプランでもある。2.6mだと60センチの高さを確保したら、段差リビングは居室にならない(建基法では居室の天井高は2.1メートル)。

 このほか、玄関と連結している土間収納はプロがよくやる提案だ。巨大パントリーもいい。

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左から段差リビング、階段つきパパの空間、土間収納

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 Cチームの「私たちの理想の家ストーリー」が「三重丸」。出隅入隅などを多用してコストをまったく考慮していないのがいい。圧巻は2階の提案だ。主寝室は8.9畳大、その隣には小さな子どもを想定した5.2畳大の洋室がオープンになっており、さらに親子はもちろん夫婦のコミュニケーションの場ともなるサンルーム&多目的空間が提案されている。一体として利用すれば20畳大の空間が実現する。これはすごい! 

 多目的空間については「折りたためるカウンターの反対側は、狭いながらもパパ専用のスペース。家族が寝たあとでも眠りを妨げることなく読書をしたり持ち帰った仕事を片付けたりができます。ママが反対側に座って洗濯をたたんだり…すれば夫婦の会話も自然に生まれます…」とあった。

 「子育て」は「働くママ」の問題だし「夫婦関係」の問題だ。さらにいえば近隣住民とのコミュニケーションの問題かもしれない。このCチームは30坪の住宅に夫婦の空間として2階のほとんど全てを提案しているのが素晴らしい。1階キッチン隣の勝手口、玄関サイドの納戸の提案もいい。

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「私たちの理想の家ストーリー」を提案した坂本さん(写真は左からサンルームと不思議な空間、主寝室と子ども部屋)

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 Aチームの「~家族が楽々HAPPYスマートライフ♪~」、Dチームの「つながる家族繋がる時間」は、ポラスの住宅とそん色ないが、強烈にアピールしたBやCと比較するとコンペ作品として物足りなさを感じた。

 Aチームのプランの玄関・框・ホールの提案は消化不良。アピールしたいことをもっと明確にしたらよかったのではないか?

 中2階のPAPAスペースももう一工夫が欲しい。広さは1メートル四方。机とパソコンがセットされていた。ここに夫なり妻なり子どもが「こもって」何かやるだろうか。疎外感を味わうだけではないか。Bチームのプランのように自らの意思で入るのと、追いやられて入るのとではまったく意味が異なってくる。

1階の約3畳大のリビングに面した階段下畳コーナーも狙いはいいが、空間の高さは約130センチ。子どもが成長したらどういうペースになるのか、居室としても使えない。

 Dチームのプランは、「子育てママ」の主張が強すぎる感がある。1階の洗面室に隣接した日当たりのもっともよいところに「ママコーナー」を設置し、その一方で、北側の1畳大もないところに「パパの秘密基地コーナー」を設置していた。これには正直驚いた。パパがかわいそうだ。

 ところがどうだ。この理不尽なプランの感想をわが社の働く女性に聞いたら、「このプランはよく理解できる。パパのものなんか捨てたくてしようがない。置いてもらえるだけでありがたいと思うべき」と痛烈な答えが返ってきた。

 プロジェクトのWeb人気投票ではAチームが21.8%、Bチームが28.4%、Cチームが19.6%、Dチームが30.2%の支持を集めたそうだ。つまり、もっともママの主張を盛り込んでいたこのDチームのプランが一番ママに人気があったということだ。これは、子育てママに非協力的なパパ社会に対するママの趣意返し、倍返しではないかと考えてしまった。

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 家事労働をどう考えるかを聞くため、「食洗機」についてコンペ参加者に聞いた。

 「私は食洗機が欲しい」

 「食洗機はいらない。食器洗いは苦にならない」

 「旦那に食洗機欲しいと話したら『お前、専業主婦だろ、それぐらいやれよ』と言われた。来春から私も働くようになるから、買ってもらえそう」

 「えっ、食洗機付いていないの? 私は三人家族で食器洗いにかける時間は10~15分」

 「食洗機は最初から付かないと聞いていた」

 別の子育てママ3人に聞いた。

 「食洗機は必需品。ルンバもそう」(2人。そのうち階段を上り降りするルンバが開発されるのではないか)

 「うちは旦那が夜遅いから食事は娘と二人。食器洗いは10分で済む。ディスポーザーはあるととても便利」

 記者は子育てママ、働くママにとって食洗機は必需品だと思う。最近は価格の上昇で食洗機をオプションにするところが増えているが、一次取得層の住宅こそ標準化すべきだ。家事労働の価値を理解できない商品企画担当や営業マンは失格。売れるものも売れなくなってしまう。

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 この企画が発表されたとき、どうせママさんたちは販促のための〝客寄せパンダ〟になるのだろうと思った。プレゼンもほとんど聞いていなかった。

 ところが、ママさんたちのプランを盛り込んだ上棟式を取材して、考えを改めた。ポラスは真剣に入居者とともに地域とのコミュニティ形成に取り組んでいた。スタッフも入居者も汗だくになりながらイベントを楽しんでいた。

 そして今回。4つのプランをすべて見た。B、Cとも素人の域を超えていた。AとDはB、Cと比較するとややインパクトに欠けていたが、思いはひしひしと伝わってきた。各チームともキッチン、収納、浴室などには力を注いでいた。それだけ現状の住宅は子育てママや働くママの希望する住宅とかけ離れているということだ。

 現段階で4プランのうち売れているのはBプランというのも納得だ。供給サイドは〝売れない〟リスクを恐れて万人受けするプランにするが、Bプランはそうではないことを実証した。

 今回の経験でポラスは供給サイドと消費者の間には少なからずずれがあることを学んだはずだ。潜在的なニーズも把握したはずだ。今後、どのように商品企画に生かしていくか楽しみだ。 

ポラス 優秀賞モデルハウス上棟式に150組・450人が参加(2013/9/2)

ポラス 「子育てママの理想の家」コンペ大会(2013/4/26)

 

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