大京は3月11日、日本初の「太陽熱戸別給湯システム」を採用したマンション「ライオンズ練馬レジデンス」が竣工したのに伴い報道陣向けに内覧会を実施した。
「太陽熱戸別給湯システム」は、屋上で集熱された熱を利用して貯湯タンクの湯を沸かし、高効率の熱源機エコージョーズと組み合わせることでバスやキッチンなどに効率よく給湯するシステム。
太陽光パネルのエネルギー変換効率が10~20%であるのに対し、太陽熱のエネルギー変換効率は40~60%と高く、現地は周辺に高い建物が建つ可能性が低い第一種低層住居専用地域に立地し、最大限に屋上を利用できることから同社は採用に踏み切った。 「ソーラー追い炊き」と「風呂熱回収」が行えるシステムは今回が初めて。
システムの採用には1戸当たり約80万円のイニシャルコストが掛かっているが、このうち3分の2は経産省と東京都環境公社の補助事業で賄われている。入居者は3人家族で給湯使用量の約25%を太陽熱で賄うことができ、CO2削減量を約37%削減できるとしている。
マンションは西武池袋線練馬駅から徒歩11分の4階建て全61戸。坪単価は247万円。残りは2戸。
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なかなかいいマンションだ。「太陽光」か「太陽熱」か、記者もまだよく分からない部分もあるが、今回のシステムは触媒を屋上までポンプで揚げるのは12mが限度のようで、低層マンションにしか採用できないのがネックのようだ。
61戸の戸数の割には立派な水盤とミスト散布装置があり、同社独自のパッシブデザインも採用されている。この水盤・ミスト散布・パッシブデザインは大きな威力を発揮するのではないか。
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今回の「太陽熱戸別給湯システム」は「日本初」と同社は謳っているが、「日本初」は=「世界初」だそうだ。先日、記者発表会を行った東急不動産「ブランズ品川勝島」の「マンション戸別エネファーム」は「世界初」と謳っていた。
「日本初」と「世界初」は雲泥の差があるような気がするが、わが業界はこの種の「初」をここのところ連発している。「世界初」はさすがに「品川勝島」だけだが、「日本初」「業界初」「首都圏初」「○○区初」「○○エリア初」「○○駅圏初」などあげたらきりがない。しかも「初」を謳うのは設備機器だけでなく、規模や高さにも用いられるから「初」もの尽くしだ。
だれかが「2番じゃダメなんですか」としゃべり大ひんしゅくを買ったが、1番じゃなきゃダメな場合と2番でも3番でもいいのはケースバイケースだ。日本で2番目に高い「北岳」は記者も含めてほとんどの人は知らないだろうが、知らなくたって問題はないし、北岳に怒られることはない。
先の冬季オリンピックでわれわれは羽生結弦さんの金メダルに沸き返った。しかし、その一方で、メダルが取れなかった高梨沙羅さんや浅田真央さんにも拍手喝采したではないか。
「初」を謳うデベロッパーは根拠を示しているので問題はないのだが、いったいその「価値」はどの程度のものなのか「見せる化」を図らないと、みんな希薄化してしまうだろう。ユーザーはそんな「初」に惹かれてマンションを購入しているとは思えないし、そもそも不動産は〝唯一無二〟の特性を備えている。その土地の魅力を最大限に引き出すのがデベロッパーの役割だ。