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2014/05/22(木) 00:00

東京都 最新の技術を導入した環境配慮型の施設完成

投稿者:  牧田司

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「新省エネ東京仕様開発提示プロジェクト研究」施設(庇の下に「ライトシェルフ」がある)

 首都大学東京リーディングプロジェクト「新省エネ東京仕様開発提示プロジェクト研究」に基づいて建設された都の施設を見学した。

 同施設は、東京都と首都大学東京都市環境学部特任教授・山本康友氏らが中心になって4年間にわたり研究を続けてきたもので、IT技術を駆使し、太陽光発電、再生可能エネルギーの導入、地中熱利用ヒートポンプ、木材の利用、壁面緑化など現状で最高水準の省エネと省エネ仕様で整備したもの。

 都財務局建築保全部機械技術担当課長・中村圭一氏は、「この施設と同等規模のものと比べ半分以下のエネルギーで運営できるよう試算して建設された。環境配慮のためにコストをかけており、この施設のデータ結果を踏まえ、今後の施設に採用していく」と話している。今後、計測データを蓄積して検証する。

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「エコパティオ」(ツタが生長していないのが分かる)

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屋上の太陽光パネルと屋上緑化

◇     ◆   ◇

 この施設について山本教授が「最高レベルの環境配慮型ビルにした」と語ったよう、様々な最新技術が導入されている。まず、自然光採光・自然換気装置。自然光採光では、南側外壁に取り付けられた「ライトシェルフ」は太陽光を取り込み、反射させて室内の天井などを明るくする。

 自然換気システムは、最低と最高の温度を設定すれば、その温度内で窓が自動的に開閉し、外気と室内の空気や風の入れ替えを行い、快適な執務環境を保つものだ。強風時には、室内の書類などが飛散しないよう自動的に閉じられる。三協立山の製品だった。

 南側から取り入れた風は北側の窓から抜け、「エコパティオ」を通じて上空へ流れるようになっている。「エコパティオ」の壁面には緑化も施されている。地中熱利用は大きなスペースが必要でイニシャルコストが掛かることから期待はされているほど普及は進んでいないが、この施設では冷暖房費を大幅に削減できるとしている。

 屋上には太陽光発電施設や屋上緑化とともに保水性のタイルが採用されていた。建物の北側壁面には「エコウォール」が採用されており、車の排気ガスや騒音などの環境負荷を軽減する。1階の受付コーナーのカウンターには多摩産材のスギが使用されていた。

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自然換気装置の窓が開いている状態(左)とエコウォール(ここもイタビカズラがほとんど生長していない)

◇        ◆     ◇

 記者が感動した最高レベルの環境配慮型ビル「日土地虎ノ門ビル」との比較にはならないが、立派な施設だ。一つ注文がある。壁面緑化と外構だ。竣工したばかりなのでやむをえない部分もあるが、「ココパティオ」(中庭)」の壁面緑化用のアルミ柵は剥き出しで、カロラインジャスミンなどのつた植物は10センチほどもなく、壁を這い上がるどころか地を這っていた。中村氏は「計画ではもちろん4層まで届くことになっているが、コストもかかるのでどうしても外構にしわ寄せがくる」と申し訳なさそうに話した。外構の樹木も幼木が目立った。

 ビルもマンションも価値を大きく左右するのは緑だ。時間が経過すれば立派な樹木に育ち、壁面緑化も完成するのだろうが、都が誇る建物とは対照的な貧弱な緑が気になった。

 もうひとつ、これはどうでもいいことで尾篭な話で申し訳ないのだが、面白かったので紹介する。雨水利用のトイレだ。

 都心部のオフィスビルほど豪華ではなかったが、女性用トイレはしっかりと気配りされていた。便器は消音・擬音装置付きで、すがすがしいさわやかな軽井沢の小川のせせらぎのような水音がした。

 その一方で、男性用の小便器は小型で飛沫が四方八方へ飛散するのではと心配になった。大便器も女性用とは対照的に、糞尿はもちろんだが義憤やら憤怒やらの不条理を一挙に海に放出するかのような九頭竜川の激流の水音そのものに聞こえた。

 木村技研の「節水トイレ」が採用されており、同社のホームページには「画期的な商品」「トイレブース内に利用者が滞在する時間を対人センサーで計測し、滞在時間の長さに応じて大用・小用を判断します。それぞれに必要な水量を流し分けることで、ムダな洗浄水をカットすることができます」とある。

 しかし、ちょっと待ってほしい。いくら最近は草食系なり絶食系が増えているとはいえ、わざわざ小を足すために大のブースに入り、長く滞在する男性はいるのだろうか。時間センサーでなく臭いセンサーはできないのか。擬音装置は小川のせせらぎがいいのかよく分からないが、華厳の滝は逆効果か。

 施設は一般の方が見学に押し掛けられると業務に差し障りがでるのかオープンにされていないが、もちろん拒否ではない。壁面のツタが生い茂る数年後には素晴らしいビルになるはずだ。

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男性用トイレ

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外構

全てが腑に落ちる首都大学東京「リーディングプロジェクト最終成果報告会」(2014/3/19)

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