RBA OFFICIAL
 
2014/12/15(月) 00:00

マンション管理協 2年間に全4冊1,630枚の研究調査報告書

投稿者:  牧田司

IMG_2559.jpg
「住生活総合サービスの需要の明確化に関する研究」研究報告会(TKP八重洲カンファレンスセンターで)

 マンション管理業協会(管理協)は12月14日、「『住生活総合サービスの需要の明確化に関する研究』研究報告会」を行った。同研究はA4判150ページにのぼるもので、筑波大学教授・花里俊廣氏を代表とする研究グループが管理協から受託されて、マンションの管理組合のコミュニティとしてのあり方や管理会社が行う問題解決などについて役割や意義、有用性を明確にしてまとめたもの。昨年発刊された「『マンション管理における顧客需要の明確化』に関する研究」(A4判130ページ)に次ぐもの。会員会社、マンション管理組合、一般等から約60名が参加した。

IMG_2563.jpg
花里氏

◇      ◆     ◇

 管理協は別掲のように11月26日にも有識者への研究委託を進めている「マンション管理業の将来展望に関する研究」(代表研究者・大橋弘東京大学大学院教授)のうち、平成25年度に実施した「マンション管理業の実態調査 結果報告書No.2」(A4判、94ページ)が刊行したのに伴う調査結果報告会を行っている。

 原稿量はA4で464ページ、400字原稿用紙にして約1,630枚。長編小説数冊分だ。研究に関わった大学の先生は7名。2年間でこれほどの量で、しかも、マンション管理の現場担当者や購入者へのアンケート・聞き取りを行い過不足なくまとめたものはおそらく過去にないはずだ。マンション管理の〝バイブル〟として今後研究者や管理の現場で読まれると確信する。

 記者もすべて読んでいるわけではないので、ここで一つ一つ紹介できないが、興味のある方は管理協・電話03-3500-2721へ問い合わせていただきたい。無料というわけにはいかないだろうが、実費で購入できるはずだ。

◇       ◆     ◇

 今回の報告会でとくに記者が注目したのが、日本工業大学建築学科准教授・佐々木誠氏が担当した「コミュニティサービス:コミュニティの価値とサービスのニーズ」に関する論文だ。33ページにのぼりコミュニティの定義から視点、価値、支援サービスの可能性まで踏み込んでいる。ここまでマンションのコミュニティに踏み込んだ論文はまず過去にないはずだ。

 コミュニティの価値と評価については、多様なニーズがあることから例えば数値的に示すのは難しく、「中古の不動産情報へのコミュニティ情報の新設」提案は「断念」せざるを得なかったと佐々木氏は語ったが、新たなコミュニティサービスの提案はマンション管理組合-居住者-居住者複合体-マンション自治会が何らかのきっかけで複合的に結合し、単なる単棟のマンションだけではなく地域を巻き込んだより高次の地縁コミュニティの社会的意識化が可能となるとしている。

 花里氏は、様々な分析手法を用い、耐震改修を行った江戸川区のマンションは70㎡平均で139万円/戸(坪6.5万円)高く取引され、耐震改修に200万円/戸かかるとすると、公的補助が3分の1くらい出るので。元が取れると報告した。

IMG_2569.jpg
佐々木氏

◇       ◆     ◇

 花里教授をはじめ研究に携わった方々の講義をいちいちごもっともだとうかがった。花里氏の報告については中古市場がいま一つよく分からないのでコメントは保留する。新築市場は、その時々の市場が判断するので、質の高い・単価が高いマンションが売れるわけではない。

 一つだけ記者のくりごとを聞いていただきたい。管理会社だけではないマンション業界全体の「問題解決に取り組む姿勢」の問題についてだ。わが業界は「問題解決」に対していつも後ろ向きで、それが販売促進につながるかどうかという視点でしか考えてこなかったのではないかと思うからだ。

 そのいい例がマンションマナーだ。現在、「ペット飼育可」は常識になっているが、各社が「ペット飼育不可」から「可能」にしたのはせいぜいこの10数年前のことだ。バブルが崩壊しマンションの売れ行きが悪化していたときに、販促の手段として各社が採用したのがはじまりだ。記者はそれ以前に、「ペット飼育を認めるべき」と大手の管理会社に取材というより直談判したが、ほとんど門前払いだった。

 「ペット不可」から「ペット可能」へ180度の転換を図ったのと真逆の転換を図ろうしているのが、人権を無視するような禁煙ルールの規約化だ。

 ここ数年、デベロッパーは専用使用権があるバルコニーを含めてマンションの共用部分での禁煙条項を原始規約に盛り込むようになった。

 平成14年に施行された健康増進法が法的な根拠になっており、医学的根拠が希薄でもあるにも関わらず、タバコを吸わない人より吸う人のほうがガンの発生率が高いなどとする疫学的な理由でもって、そしてそれだけでは説得力がないとみると「受動喫煙」を持ち出して吸わない人の恐怖心をあおり、さらには「タバコのポイ捨て」などという理由にもならない理由を持ち出して、有無を言わさず禁煙に乗り出した。記者はこれが怖い。タバコも酒も嫌ったヒトラー的発想ではないか。

 ペットを飼う人も飼わない人も、タバコを吸う人も吸わない人もそれぞれの権利を認めあい共存するのが民主主義であり、集合住宅でのルールであるはずだ。一方の側の権利のみを振りかざすのでは絶対に快適なマンションライフは保障されない。

 マンション管理会社は、親会社のマンションデベロッパーのこの暴挙に何ら反抗しない。そのような業界団体が、本気で「コミュニティサービス」を実践するかどうか注視したい。

 もう一つは、マンションの「コミュニティ」についてだ。

 今でこそデベロッパーは「コミュニティ」の大切さをアピールし、支援の取り組みを活発化させているが、以前はそうでもなかったし、最近は〝販促の手段〟としての意図が見え隠れする。本気度が試される。コミュニティ支援活動が正当に評価され、フィーとして報われるのが理想だと思う。佐々木氏が研究論文に記載することを断念した「中古の不動産情報へのコミュニティ情報の新設」はどこか実施に踏み切ってほしい。

 さらに、マンションの「自治」「管理組合」について。

 かつて戦前の自治会・町内会は戦争推進の役割を担わされた歴史がある。今でも地方自治や大学自治をめぐっては国などの干渉、支配が問題になるケースが少なくない。だから「自治」に対して政治的な匂いをかぎ、嫌悪する人もいるのではないか。記者は英語嫌いだが、英語ではself‐government、あるいはマンションなどの集合住宅の自治会などはresidents' associationと訳されるのだろうが、自らが治める-なかなかいい和訳だ。

 「管理組合」もまたしっくりこない言葉ではないか。「組合」という語彙はわが国にはなかったのではないか。「結」とか「講」に戻せとは言わないが、すんなり受け入れられる気が利いた言葉はないのか。

マンション管理協が「管理業の実態調査」 将来展望に明かり灯る(2014/11/27)

強まるバルコニーでの禁煙 「共同の利益」に反しないのか(2014/9/27)

 

rbay_ayumi.gif

 

ログイン

アカウントでログイン

ユーザ名 *
パスワード *
自動ログイン