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2016/01/09(土) 00:00

三井住友建設、日立ハイテクの違法性にも言及 旭化成 杭打ちデータ流用で報告書

投稿者:  牧田司

 旭化成は1月8日、同社の子会社旭化成建材が施工した横浜傾斜マンションの杭打ちデータ流用問題に関する3名の弁護士からなる外部調査委員会の「中間報告書」を公表した。

 報告書は、昨年12月25日に国交省に提出された「基礎ぐい工事問題に関する対策委員会」(委員長:深尾精一・首都大学東京名誉教授)の「中間とりまとめ報告書」が指摘した問題と同様、ずさんなデータ管理、不明確な役割分担などが原因としたうえで、元請の三井住友建設、一次下請けの日立ハイテクノロジーズ、二次下請けの旭化成建材それぞれの建設業法や建築士法に関する違法性にも踏み込んでいる。

 また、事件発覚を受けて三井住友建設が行なった「試験の結果に基づいて支持層未達等杭が存在すると判断することには慎重であるべき」とし、近く行なわれる再検査結果を待たなければならないとしている。

◇    ◆   ◇

 これまでの同社の記者会見では三井住友建設や日立ハイテク、旭化成建材の建設業法、建築士法に関する違法性について暗示はされていたが、明言・明示はされていなかった。今回、報告書が初めて各社の違法性に触れた。

 今回の工事について報告書は「元請業者であるSMC(三井住友建設)は監理技術者を、下請業者である旭化成建材等は主任技術者を、それぞれ設置する必要があり、また、本件マンションのような共同住宅に関する建設工事は『公共性のある重要な工事』に該当するため、監理技術者及び主任技術者は、本件杭工事について専任の者でなければならない」とし、「SMCは、本件杭工事に関し、建築士法に基づいて工事監理者を、建設業法に基づいて監理技術者を、それぞれ置く必要があったが、それが誰であったのかは、旭化成建材に残された資料からは判明しなかった」と、建築士法や建設業法に触れる可能性を示唆した。

 この点について、三井住友建設は「永本副社長は、『試験的に打つ杭に立ち会い、残りは施工報告書で確認すればよい』とする国交省の標準仕様書に沿った対応だとして、『管理に落ち度はなかった』と強調した」(日経WEB版)と、監理に瑕疵はなかったとしている。

 さらに、「日立ハイテクは、事実上、旭化成建材と一体となって、SMCに対する営業活動を行う役割が大きかったが、その担当責任者は…本件杭工事現場に常駐していなかった可能性が高い」「日立ハイテクは、本件杭工事に関し、建設業法に基づいて主任技術者を置く必要があったが、それが誰であったのかは、旭化成建材に残された資料からは判明しなかった」と、建設業法に抵触するのではとしている。

 旭化成建材に対しては、「本件杭工事に関し、建設業法に基づいて主任技術者を置く必要があったところ、主任技術者は…法令が定める『専任』義務を果たしていなかった」と法令に触れる可能性を指摘している。

 事件発覚を受けてSMCが行なった「スウェーデン式サウンディング試験」については、「一般的に用いられる地盤調査方法の一つとして一定の信頼性があるとされているが、複数の専門家に対するヒアリング結果によれば、地表からおおむね10メートルを超える深度の支持層を測定するには必ずしも妥当な調査方法ではないとの見解も見受けられる」とし、横浜市が「建築基準法第12条第5項に基づく報告を行うよう求めているので、今後、これを踏まえた検証がなされるものと理解している」「SWS試験の結果に基づいて支持層未達等杭が存在すると判断することには慎重であるべき」とした。

 報告書は、「杭の施工さえ適切に行っていればデータはそれほど重要ではないという現場の感覚は、一般社会の感覚と大きく乖離しているといわざるを得ない」と、業界の体質についても言及した。

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