京阪電鉄不動産(事業比率55%)、総合地所(同44%)、長谷工コーポレーション(同1%)の3社共同マンション「イマジンテラス(ファインシティ横浜江ヶ崎ルネ)」を見学した。南武線尻手駅から徒歩14分とやや距離はあるが、坪単価は173万円。圧倒的な価格の安さが人気で、第1期131戸に102戸の申し込みが入った。
物件は、JR南武線尻手駅から徒歩14分(矢向駅から徒歩15分)、横浜市鶴見区江ヶ崎町に位置する7階建て全338戸。専有面積は68.70~85.50㎡、3LDK、70㎡台が3,500万円台中心で坪単価は173万円。竣工予定は平成30年2月上旬。施工は長谷工コーポレーション。販売代理は長谷工アーベスト。
現地は、尻手駅からはやや距離があるが、敷地面積約1.3haの敷地に建物をロの字型に配し、その中央の3,000㎡超に中庭を設置。9つの企業とコラボして共用施設の充実を図り、入居者のコミュニティ支援を前面に打ち出したのが特徴。
川崎駅へ1駅で、圧倒的な価格の安さから9月13日に抽選分譲した第1期131戸には102戸の申し込みが入った。プライベートガーデン(専用庭)を設けた1階住戸は7階住戸と価格がほとんど同じだったにも関わらず、抽選になる人気で完売となった。4月からの来場者は約400件。申込者のうち約15%が東京都大田区の居住者で、歩留まりが高いのが特徴。
京阪電鉄不動産首都圏事業部東京営業部所長・高橋和寿氏は、「3LDKで3,500万円台中心という価格を何とか維持し、入居者がマンション全体を自然にシェアしながら自発的にコミュニティを形成していく仕掛けを施した。第1期が好調なスタートを切れたことで、〝郊外の販売不振〟の打開策に一つの答えを出せた」と語った。
◇ ◆ ◇
「第一次取得層の取得限界は3,500万円というのがわたしの信念」-同社・高橋氏が前回取材した「ファインシティ東松戸モール&レジデンス」でこう語ったが、今回の「イマジンテラス」でもこの信念が貫かれている。
この思いに記者も共感できる。ファミリー向けの3LDKで3,500万円台というマンションは、よほどの遠隔地マンションでないと供給できなくなってきた。ローン金利がただ同然になのは救いだが、一般所得層の実質賃金はバブル崩壊後低迷したままだ。その一方で、一挙にマンション価格が上昇してしまった。消費者の消費マインドも一向に上向く気配がない。
このような状況下で、どこが需要を創造するかずっと注目してきたのだが、同社が敢然と「3LDKで3,500万円台」に挑戦。結果を出している。いま郊外マンションの第1期分譲で成約できるのはせいぜい数十戸だ。いかにこの物件が〝人気〟になっているかよくわかる。
プロジェクションマッピングを活用した模型やモデルルームはよくできている。アウトドア用品ブランド「LOGOS」商品を盛り込んだ1階の専用庭付きモデルルームタイプが人気になったのも頷けるし、押入れクローゼットの提案もいい。
◇ ◆ ◇
8月26日付の同社「ファインシティ東松戸モール&レジデンス」の記事と同様、高橋氏は「面積を70㎡台に抑え、基本性能は守りながらオプション工事にできる設備仕様はオプションにしている」と話した。
広告上の豪華さを競う一方、マンションの原価構成が一般消費者にはわかりづらいことが郊外の販売不振の原因にあるのではないか。「価格の上がる設備仕様のハードを競うより、コミュニティ支援によるソフトを充実させる」。記者は同社の正直な企業姿勢を支持するし、
きちんと説明責任を果たしていると思う。関西の狭い商圏でJRや他の私鉄と戦っている京阪電鉄(不動産)の強かな戦略がここにも見えてくる。〝三方よし〟など今のマンション市場ではありえない。