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2017/04/28(金) 14:15

ポラス 宮城県名取市の仮設住宅で慰問の南越谷阿波踊り その2(語り部)

投稿者:  牧田司

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大正時代に造られた高さ6.3メートルの日和山(津波は松の中ほどまで押し寄せた)

「きちんと訓練していれば、全員助かった」櫻井氏

「閖上に津波は来ないという神話があった」格井氏

 「きちんと訓練していれば、全員助かった」-ゆりあげ港朝市協同組合代表理事で震災の語り部でもある櫻井広行氏(62)は、約60名のポラスグループの南越谷阿波踊り慰問団を前にして開口一番こう語った。その理由や津波の教訓を一人ひとりに諄々と話した。

 「みんな防災意識が欠けている。よくわかっているのは2~3%の人。95%の人はゴミ扱い。避難訓練もおざなり。行政は予定をこなせばそれで仕事が終わる。住民もモノが出ないと参加しない」

 「閖上が津波に襲われたのは地震から1時間たってから。この間、肝心の防災無線は鳴らなかった。震災と同時にヒューズが飛んだからだが、それがわかったのはずっと後になってから。逃げるまで1時間もあったのに子どもをわれわれは助けられなかった」

 「いざというとき、子どもは絶対に安全なところにいる環境を作ってください。子どもが安全と思うことだけで非常にらくになる」

 「人間の知恵では自然には勝てない。よけるか逃げるか、どちらか。津波の時速は50~60キロ。10cmで足元が掬われる。濁流に飲み込まれると瓦礫と共にミキサー状態になる。まともな遺体など一つもなかった。逃げるときは車も金も捨ててください」

 「もう被災地にモノはいらない。補助金ももらったし学校も建ててもらった。みんな税金。あいつら借金だけ残したと言われるのが恥ずかしい。子どもや孫の脛かじっているようなもの。お返しはできない。とにかく来てください」

 約1時間、櫻井氏の口からは辛辣な言葉が次から次へほとばしった。慰問団は水を打ったように静まり返った。

 櫻井氏は年間、会場となったゆりあげ港朝市食堂で約100回、県外で約30回講話を行っているそうだ。翌日の朝市では、黒山の人を前にバナナのたたき売り口上そっくりのだみ声で商品を手際よくさばいていた。

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櫻井氏

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櫻井氏の講話を聴く参加者(メイプル館で)

◇       ◆     ◇

 津波で両親と家を失くした、もう一人の語り部、閖上地区の復興新聞代表・編集長の格井直光氏(58)は「閖上には津波が来ない、避けて通るという神話があった」と何の根拠もない〝妄信〟が住民の間に広まっていたことを悔やむ。

 「昭和8年の三陸沖地震で津波に襲われたとき、先人は石碑を立てた。昔の人は意識が高かった。それを教訓にできなかった。行政も情けない」

 「嵩上げについては賛否があった。行政は5mと決めたが、あと1m高くすべきという声が多かったが、行政は聞かなかった」

 「私たちの役割はきちんと被災を後世に伝えること。風化の懸念はあるが、ことあるごとに伝えていきたい」

 櫻井氏ほどではなかったが、格井氏もまた被災者の望む通りに進まない行政の復興計画を暗に批判した。

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格井氏

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日和山の慰霊塔に供花する参加者

◇       ◆     ◇

 別掲の通り記者は4年前、中国人画家・常嘉煌(ジョウ カコウ)氏が100号の油絵「祈願の櫻」を名取市立閖上中学校に寄贈した際、取材で訪れており、当時の佐々木一十郎市長や仮設住宅に住んでいた三浦信江さん(75)にインタビューも行っている。

 閖上地区の復興計画について「賛否両論があるが」と佐々木市長に尋ねたが、「マスコミは信用できない」などと、市の計画に反対する住民の声を紹介する地元紙を批判した。

 昨年7月行われた市長選で佐々木氏は、20,677票を得た新人の山田司郎氏に約6,000票差で敗れた。河北新報は山田氏の勝利を「『復興がここまで遅れたのは市民の声と懸け離れた市政運営の結果だ』と強調。対話重視の姿勢を鮮明にして有権者の心をつかんだ」と報じた。

 記者は被災地の復興土地区画整理事業を懐疑的に見ている。名取市がどう進むか気になる。

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住民運動で建立された慰霊塔(高さは津波の最大を記録した8.4m)

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嵩上げされた区画整理地に建設中の公営住宅(奥)と隣り合わせの墓地

ポラス 宮城県名取市の仮設住宅で慰問の南越谷阿波踊り その4(フォトページ)(2017/4/29)

ポラス 宮城県名取市の仮設住宅で慰問の南越谷阿波踊り その3(旗振り役)

ポラス 宮城県名取市の仮設住宅で慰問の南越谷阿波踊り その1(死の街)(2017/4/27)

「みんなと別れたくない」 名取市美田園の仮設住宅に住む三浦さん(2013/3/21)

「閖上に希望と勇気を」 中国人画家・常嘉煌氏が100号絵画「祈願の櫻」寄贈(2013/3/21)

これでいいのか 被災地復興土地区画整理事業(2014/2/13)

 

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