新日鉄興和不動産は9月26日、事業協力者及び参加組合員として建設を進めていた複合大規模施設「赤坂インターシティAIR」(赤坂一丁目地区第一種市街地再開発事業、施行者:赤坂一丁目地区市街地再開発組合)が竣工したのに伴いプレス説明会・内覧会を行った。
施設は、東京メトロ銀座線・南北線溜池山王駅直結(14番出口)、港区赤坂一丁目に位置する敷地面積16,088㎡、制振構造の地下3階地上38階建て延べ床面積178,328㎡。用途はオフィスのほか共同住宅、会議施設、店舗、託児施設など。設計・監理は日本設計。施工は大林組。グランドオープンは9月29日(金)。
緑化率50%以上に当たる5,000㎡超の緑地を整備。建物を六本木通り沿いに寄せることで、敷地中央に大規模な緑地空間を生み出し、環状二号線に続く約850mの緑道を整備する「赤坂・虎ノ門緑道構想」に基づき、西側の拠点として約200mの街路樹空間を整備。虎ノ門に続く緑豊かな歩行者ネットワークを形成する。
オフィスはほぼ満室で稼働。入居検討テナントの43%はアメリカを中心とする外資系で、業種ではIT・通信が41%を占め、金融・保険、化学・製薬などが続く。
5階から12階に併設される住宅「赤坂AIRレジデンス」52戸は主に地権者用住居に充てられ、第三者に分譲することは禁止されている。
説明会で同社代表取締役社長は「赤坂・虎ノ門エリアの新たなランドマークとして、世界から選ばれる国際都市東京の顔にする」と語った。2018年春には当ビルに本社を移転することも明かした。
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取材のため施設に着いたのが午後12時30分過ぎ。プレス説明会・内覧会の開始時間1時にまだ少し時間があったので、地下1階の店舗をのぞくことにした。すぐ目に飛び込んできたのは、「鶏の西川 創業1949年」の看板が掛かった店だった。見事な組子が施されていたからだ。てっきりこけおどしのケミカル製品だと思ったが本物だった。創業1949年といえば記者と〝同級生〟だし、「宮川」は四万十川よりきれいなわが故郷三重に流れる川だ。
これだけで感動したのだが、これは序章に過ぎなかった。説明会場の天井高4.8mのコンファレンスホール「the AIR」に入ったとき、大好きなヘンデル「水上の音楽」などをアレンジした「Handel Collection」がBGMに流れていた。この演出に舞い上がった。これが第2楽章か。
そして第3楽章は、同社社長・永井幹人氏の挨拶だ。「事業規模は一挙に倍増した」と永井社長は5年前の新日鉄都市開発と興和不動産の経営統合から語り始め、その後の事業展開や今後の方針などを宮川のようによどみなく語った。
この地が、霞が関-六本木-新橋のトライアングルの結節点であり、再開発計画が目白押しの国際性、多様性に富んだ港区の「大街区」(75ha)の北側玄関口に位置し、また同社ビル事業発祥の地「赤坂一丁目」であることから「思い入れの強い土地」であることを強調。非常時には200時間の電力供給が可能であるBCPをはじめ、国内トップクラスのエネルギー・環境への取り組み、1フロア800坪のオフィス、隣接する虎ノ門病院と連携した人間ドックとクリニックの併設、5,000㎡の緑空間の創出などについて説明し、「厳しい外資系の目にかなうものにした結果、極めて高い評価を得てほぼ満室稼働でスタートすることができた。今後も関係者と連携して赤坂を国際都市東京の顔にしていく」と力を込めた。
ここまでの取材でもう満腹だったのだが、第4楽章は何と2時から4時までの内覧フルコース。4階のプレゼンルームからスタートし、3階の「ロウリーズ・ザ・プライムリブ&フランクバー」、2階・1階の緑地、10か所以上のレストラン・カフェ・ビアパブなどを回った。一つひとつ紹介すると日が暮れるので省略する。
取材を終え事務所に帰ったのが5時。この日は午前10時から三井不動産の「ホテル ザ セレスティン銀座」の取材があり、7時間も動き放しだった。この間、三井のホテルで「GINZA CASITA」の山田志樹社長から直々にアイスコーヒーを頂き、「赤坂インターシティ」では160年の歴史があるローマの「ボンドルフィボンカフェ」で250円のエスプレッソを飲ませてもらい、「THE ARTISAN TABLE・DEAN&DELUCA」ではほんのひと切れのシイタケのコンフィを試食させていただき、「COURTESY」でアイスティのもてなしを受けた以外なにも口にしなかった。万歩計は1万歩を超えていた。(RBA野球の取材のときは食事抜きで2万歩歩くが)一挙に疲れと空腹感が襲ってきた。
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最近では皇居に隣接する三菱地所「大手町パークビル」、日比谷公園が目の前の東急不動産「日比谷パークフロント」にも驚いたが、「赤坂インターシティAIR」はいろいろな切り口で〝料理〟(記事化)できる、それこそ十人十色に映るわくわくする複合施設だ。記憶にとどめるためにも強い印象を受けたことを改めて書く。
第一は圧倒的な緑の量と質だ。量的には「新梅田シティ」の約8,000㎡の「里山」にかなわないが、約3,500㎡の「大手町の森」(オーテモリ)、約3,000㎡の「大手町パークビル」と「大手門タワー・JX ビル」のコミュニティ広場より広い。
その質がまたすごい。約200mの街路樹空間を創り出し、水景も配置。樹木は極力自然に近い形で植樹している。これを虎ノ門方面に続く850mの緑のネットワークとして構築するという。
第二は、オフィスもさることながら店舗の内装・デザインが桁外れの本物志向(味はしらない)であることだ。「鶏の西川」の軒先に組子が用いられていることは先に書いたが、同じ地階にある「もつ鍋やまや」もまた内装材はすべて本物のスギ材だったし、内覧で回った10以上のレストランのカウンターなどはほとんどすべて大理石。壁などにも無垢材が多用されていた。
「ロウリーズ・ザ・プライムリブ&フランクバー」は天井高が5m。ホテルの宴会場かレストランに似ているが、少人数掛けのテーブルのほか20人くらいが座れる大テーブルがどんと据えられていたのには度肝を抜かされた。アートや個室の設え、照明計画もまた印象的だ。日本人が利用するにはかなり勇気がいりそうで、お金もそうだが気が小さい記者などは足がすくむ。
第三は、BCPやエネルギー・環境の取り組みだ。非常時200時間の電源確保など聞いたことがない。環境性能評価「CASBEE」、東京都エネルギー性能評価制度、DBJ GREEN Building認証などはすべて最高ランクを取得し、約35%の省エネ効果、CO2約35%削減を実現している。
永井社長が「赤坂を国際都市東京の顔にしていく」と語ったが、このビルが今後の街づくりのベンチマークになるのではないか。20・21階には同社が入居するが、眼下に首相官邸、国会議事堂、米国大使館が眺望できる。社長室はそれらを眺められる位置には設置しないとも聞いたが、社員の生産性はどれだけアップするのか、これにも期待したい。
住宅は将来にわたって分譲されることはなさそうだが、記者は借りに分譲されれば坪単価は1,500~2,000万円とはじいた。
かつて記者は、デベロッパーを超えるのはデベロッパーではなく、異業種だろうと思ったことがある。日鉄ライフが新日鉄の社宅跡地で優れたマンションを分譲したときだった。恐るべし新日鉄興和不動産。
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