「日比谷パークフロント」(左のケヤキは高さ15m)
東急不動産は5月26日、植物が持つ力を最大限に活用し、日本の新しい働き方をデザインする「Green Work Style Project」の第一弾「日比谷パークフロント」が5月31日(水)に竣工するのに伴い、プレス説明会・内覧会を行った。同社は本拠の渋谷や竹芝の再開発など6つのビッグプロジェクトが進行中だが、その勢い見せつけるビルが完成した。
物件は、同社とケネディクス、日本政策投資銀行の3社共同事業として開発を進めてきたもので、東京メトロ千代田線他「霞ケ関」駅から徒歩3分、千代田区内幸町2丁目に位置する地下4階地上21階建て延べ床面積約67,000㎡。設計・施工は鹿島建設。制振構法を採用。同社がプロジェクトマネージャーとして開発およびリーシングを行い、竣工後はマスターリース兼プロパティマネージャーとして管理運営を実施する。
1フロア約630坪で、天井高は最上階が4mで標準階は3m。サッシは幅3200ミリの特注品を採用。標準階の賃料は4万円/坪。現在約6割がテナント決定済み。
「Green Work Style Project」は、働くことで生じる課題を、植物の力によって活動的・精神的に"デザイン"(解決)し、オフィスワーカーの作業効率や生産性の向上、コミュニケーションの活性化などを目指すもの。
デザインアソシエーションNPOとの共同プロジェクトで、コンセプト構築には同NPOの理事も務める脳科学者の茂木健一郎氏、プラントハンター・そら植物園主宰・西畠清順氏、意と匠研究所代表・下川一哉氏が参画している。
外構、オフィスロビーなどには日比谷花壇、設計施工の鹿島建設、デザイン監修の日建設計、ランドスケープを担当したランドスケープデザイン、さらには同社グループの石勝エクステリアなどが協業している。
説明会に臨んだ同社取締役専務執行役員都市事業ユニット長・岡田正志氏は「Green Work Style Projectのコンセプトに基づき公園の中で働いているようなオフィス空間とホテルのようなグレード感を演出した。今後の渋谷や竹芝のプロジェクトもこのような地域と環境との共生を目指す」などと語った。
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同社には申し訳ないが、発表会の冒頭にあいさつした同社取締役専務執行役員都市事業ユニット長・岡田正志氏以下の概要説明、3名によるトークセッションはほとんど耳に入らなかった。聞いていなかった。
発表会の前にビルの外周部や2階のエントランスロビーの植栽・デザインにほれ込んで、また、会見場の20階から眺めた日比谷公園の圧倒的な緑とビルの支配人で同社野球部監督・潮田喜一郎氏とばったり会って舞い上がってしまったからだ。説明を受けるまでもなく、極めてレベルの高いビルであることを理解した。
ビルの規模や立地、緑の総量では、このビルを上回るものはたくさんあるはずだが、借景の日比谷公園の緑をビル内に取り込んだコンセプト、その緑の質の高さや同社グループの最高級ホテル「ザ・キャピトルホテル東急」とそん色ない(これは異論があるかもしれないが)デザインにほれ込んだ。
例えば樹種。同社によると100種以上の中高本を敷地内と2階ロビー、屋上などに植えている。シンボルツリーのケヤキは高崎の山から運んできたもので高さ16m。バクチノキ、ナンジャモンジャなど見たこともない樹木もたくさんある。この質にも驚いた。
内覧会では、仕事もできる入居者専用のスカイガーデン(150坪)とスカイラウンジ(50坪)、2階グリーンラウンジ、セキュリティゲートとエレベータの連動による先行階登録システム「ELE NAVI(エレ・ナビ)」、黒が基調の1階エントランスから2階ロビー、ナナメ壁かどか印象に残った。女子トイレの夜の女性に変身する女優ミラーは意味不明。
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同社は、かつて街づくりや環境共生の取り組みでは他社を圧倒していた。「かつて」と書くのは、バブル崩壊後はやや精彩を欠いていたからだ。
しかし、「新青山東急ビル」(2015年竣工)、「東急プラザ銀座」(2016年竣工)「世田谷中町プロジェクト」(2017年一部竣工)などで、そのDNAは健在であることを示した。
今回のビルは「Green Work Style Project」の第一弾だが、今後目白押しの渋谷や再開発、竹芝のビッグプロジェクトが楽しみだ。同社の勢いを見せつけるビルが竣工した。