埼玉県住まいづくり協議会は10月13日、「平成29年度 住生活月間シンポジウム」を開催。第一部として東洋大学教授・野澤千絵氏が「老いる家 崩れる街~住宅過剰社会から脱却に向けて~」と題し、第二部として慶應義塾大学教授・伊香賀俊治氏が「幼児から高齢者まで健康に過ごせる暖かな木の住まいの調査速報」をテーマにそれぞれ講演した。約250名の関係者・市民が参加した。
埼玉県住まいづくり協議会は、「埼玉を創る!埼玉で頑張る!」をスローガンに、県内の民間住宅産業関連企業と行政・公共団体とが一体となり、優良な住宅供給を行うことで、県民の生活基盤の安定とその住環境の向上を図ることを目的に平成8年10月に設立された。毎年、この種のシンポジウムを行っている。
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参加者に感想を聞いた。「マイクの音が聞きづらく、耳が痛かった。内容も難しい」「3411条例は個人的にもテーマ」「空き家問題に関心がある。ビジネスモデルができるといい」「自治体の都市計画担当なので参考になった。私どもも調整区域の規制強化に切り替えられない問題を抱えている」「うちの近くにも空き家があり、壊されているが、その後どうなるのか気になる」「私は50歳。82歳の父親の実家を相続することになったらどうするか心配」などの声が聞かれた。
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こんなことは書きたくないが、主催者も講演者も考えてほしいから書く。いったい誰向けのシンポジウムなのかということだ。参加者は協議会メンバーが中心だろうが、一般にも開放している。ならば、一般の人でも理解できるような内容にすべきだ。
最初に話された野澤氏のテーマは一般の人でも興味があるはずだ。しかし、その内容はかなり専門的で、「市街化調整区域」「都市計画法第34条11号」「線引き」「空き家トリアージュ」などの文言が入ったパワーポイント・画像が約1時間の間に30点くらい示された。1点につき約2分だ。これらを野澤氏独特の副詞の語尾を上げる話し方で機関銃のようにまくしたてられると理解不能、消化不良になる。都市計画法を一般の人にわかってもらうためには1時間あっても足らないはずだ。
記者は埼玉県の調整区域開発について取材したことがあるが、首都圏では間違いなくもっとも規制が緩やかな県だと思う。なぜそうなのか、深く追究し市民に知らせることも学者の役割ではないか。
野澤氏のフィールドワークを基にした川越市や羽生市などの都市計画、規制緩和に関する問題提起はすごく鋭く参考になったが、リップサービスが過ぎた。遅れた県の都市計画を徹底して掘り下げ、協議会や県や市に遠慮せず話してほしかった。
メディアにも一言。以前は弁当付きの協議会会長との会見に10人を超える記者が集まっていた。この日は片手に余る、参加するのが恥ずかしくなるほどの少数。これは何だ。埼玉県を応援するためにもちゃんと出席して、言うべきことをいうべきだ。
伊香賀氏の講演は、あるいは一般の人向けに話されたのかもしれないが分かりやすかった(記者は取材の関係で途中退席)。参考までに他のイベントで講演されたときの記事を添付する。