三菱地所ホームは10月19日、トイレ・洗面室を含めて室内をくまなく365日24時間換気冷暖房ができる「新マンションエアロテック」の販売を開始し、同時に、定額制のスケルトンリフォーム「Re Dia (リディア)」の発売も開始したと発表した。
「新マンションエアロテック」は、三菱地所レジデンス、メックecoライフと共同で開発したもの。従来の全館空調システム「マンションエアロテック」ではダクトを敷設する室内の天井高さが確保できないという課題があったが、二重床下空間(ふところ厚約18センチ)をダクトに代わる空気の経路として確保することができるように開発した。
①温度が快適②空気がきれい③空間がすっきり④間取りが自由自在⑤維持・管理がラクで長期保証-などが特徴。スケルトンリフォームを前提とした販売価格は250万円(税別)。
導入にあたっては、2016年7月から基礎実験、2017年2月からの実証実験を経て、従来の「マンションエアロテック」 と同等の室内温度環境が実現できることを確認している。
スケルトンリフォーム「Re Dia (リディア)」は、2016年秋に発売した水回り中心の「Re Dia (リディア)」をバージョンアップしたもの。従来型は、三菱地所レジデンスが開発した「EYE’S PLUS(アイズプラス)」商品の設備交換などがセットになった定額制で、価格は498万円(税別)だった。「新マンションエアロテック」を開発したのに合わせフルスケルトンリフォームの定額制を実現した。
専有面積に応じた定額制で、70㎡の3LDKを2LDKにスケルトンリフォームした場合の価格は「マンションエアロテック」の250万円を含め1,100万円(税別)。
発表会に臨んだ加藤博文社長は「今期上期は、リフォームが30%伸びるなど全体の受注でも30%増といい結果を残せた。通期目標も達成したい。今回3つのリリースを出したが、モデルハウスでは国産材採用率を80%にし、マンションエアロテックの発売は、私もマンションの商品企画を担当した経験があるからわかるが、田の字型プランを一新できる可能性を秘めている。新築、リフォームを含めて拡大する。来年にはマンションの常設モデルルームを設置したい」と拡大に意欲を見せた。
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「エアロテック」と最初に出会ったのは今から10数年前、野村不動産「千都の杜」の販売開始時にモデルハウスの1棟として建設されたのを見学した時だった。当時、マンションでは外断熱工法が話題となっており、同じような機能を持つエアロテックは〝大ヒット〟すると確信した。
ところが、同社がエアロテックを発売開始した1995年から現在まで、新築に搭載した戸数は6,000棟だ(マンションは8棟)。年間にして約300棟。優れた商品性を考えると、これはどう考えても少なすぎる。
しかし、今回の「新マンションエアロテック」と定額制の「Re Dia (リディア)」、新モデルハウスの「グリーンガーデン」提案などを取材して、同社のやる気をひしひしと感じた。加藤社長のムチが入った。
マンションエアロテックが250万円、フルリフォームが850万円、トータルで1,100万円。同業他社のリフォームは70㎡で1,000万円くらいのはずだ。価格が若干高くなるが、全館空調の価値を訴えきれれば圧倒的な優位に立てるはずだ。
〝やる気〟は会見の冒頭でも感じられた。「今年10月、新たに広報戦略グループを立ち上げた。心を込めてわかりやすく説明していく」経営企画部 広報戦略グループのグループリーダーに就任した横須賀直人氏がこう語った。〝心を込める〟-記事も同じだ。
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「これからは住宅の価値観に〝空気の価値〟が付加される時代になる」中島秀敏常務が「エアロテック」の説明でこう話した。
なるほどと思った。この1カ月の間に記者は〝空気〟〝音〟に関して考えさせられる取材を立て続けに行った。
一つは入間市のジョンソンタウンの取材の時だった。入居者が「都心はいつでも何らかの音がする。ここに来ると音が消えるんです」と話した。
もう一つは、日本ツーバイフォー建築協会の「ツーバイフォー6階建て実験棟プロジェクト報告会」だった。「環境振動」について研究している大学教授が「常時微動記録には数十メートル離れた位置にある道路交通による振動も記録された」「構造的に問題となるレベルとは考えられないが、環境振動レベルでは注意が必要」と語った。
さらに先週。エアロテックを搭載した三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス二子玉川碧の杜」を取材したとき、モデルルーム来場者が「音がしないね」「静かだね」と感嘆の声を上げたと聞いた。
まだある。エコ・ファースト企業などが主催したイベント「エコ・ファースト サステナブルカフェ2017」で、参加者が「エアコンいらずの世の中」を実現すべきとカードに記した。
記者はもともと〝音〟には鈍感で、〝空気が読めない〟性格なので気にならないのだが、言われてみれば今の世の中〝雑音〟が多すぎる。交通騒音もそうだが、駅前の再開発、建築物の解体・建設から振り込め詐欺電話、家電の音、隣家の風鈴の音、連れ合いのいびき・歯ぎしりの音まで我慢できないようだ。夕方になると「よい子のお子さん…」が限界集落ですら放送されるし、風力発電の低周波に人間ばかりかイノシシも脅かされ、夜中には止めてある携帯が〝緊急地震速報〟で叩き起こし、はるかかなたなのに北朝鮮のミサイル発射のJアラートまで聞かされる。いい加減にしてほしいと思う。
これは余談。昭和47年に発売された筒井康隆「にぎやかな未来」(角川文庫)には、生活の全てが政府のコマーシャルに利用され、ラジオの電源を切ると罰せられる法律が制定されたというショートストーリーが盛り込まれている。CMの聞きすぎで頭が痛くなった主人公がコマーシャルの入っていないレコードはないのかとレコード屋で聞くくだりを引用する。
「『…ところで、コマーシャルのぜんぜん入っていないレコードはないのか』
『ございます。10万円です』
そんな大金は、とても払えない。
『で、それにはどんな曲が入っているんだ』
『曲も入っておりません。何も音の出ないレコードです』
主人はにやりと笑い、うなずきながらいった。
『現代でもっとも高価なものは、静寂です』」
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この前、三菱地所レジデンスの新宿御苑の記事で、「公園・眺望価値」は坪500万円以上と書いた。ならば「音・空気の価値」はいったいいくらか。エアロテックの250万円を70㎡で割ると坪単価は12万円にもならない。そんなものなのか…。
三菱地所ホーム 家の中に自然の中低木 最新モデルハウス「ONE ORDER」横浜に開設(2017/10/20)