マンション管理業協会の「マンションいい話コンテスト2017(管理会社編)」の表彰式の記事を先に紹介したが、管理協海外研修グループ6名(ほか2名は欠席)が行った「日本のマンション管理の将来像について」と題するプレゼンテーションと、野村不動産パートナーズ会長・関敏昭氏の「顧客満足度向上の取り組み」についての講演がまた素晴らしかった。
まず前者から。20~30歳代と思しき6名の若いグループが登壇したとき、記者は朝からなにも食べておらず、お腹がすいており、大した話にはならないだろうと高を括っていた。
伊藤忠アーバンコミュニティ・中島英一郎氏がトップバッターとして台湾とわが国のマンション管理の共通点と違いについて話し出したころも〝はやく終わってくれないか〟と考えていた。
日本と台湾の共通点は価格重視で管理会社のステータスが低いことだそうだ。「管理会社のステータスが低い」のに納得して聞いていたのだが、その違いに触れる段階になって、話に引き込まれるようになった。
わが国は予防保全の考え方で修繕積立金制度がある(台湾は事後保全で積立金制度はなし。以下同じ)、役員はなり手不足(積極的)、現場スタッフの高齢化(若年層)、管理の考え方は効率重視(有人対応)、居住の考え方は終の棲家(住み替え前提)とまるで違うではないか。とくに台湾では現場スタッフのホスピタリティが高いというのには驚いた。
続いて、研修メンバーはわが国のマンションと管理の現状について、管理会社不在のデザインであること、管理会社不在の施工であること、無理のある管理仕様であることなどと容赦ない批判を加えた。「つまらない管理はお客様にとって物足りない」と。
ここまで聞いて記者の背筋が伸びた。痛いところを突かれた。心当たりがあるからだ。「マンションは管理を買え」などと管理の何たるかを知らないのに平気で書いてきた若いころを思い出した。
研修グループはさらに追い打ちをかけた。赤色の大きな文字でしかも斜めに「見た目で行こうぜ!」をプロジェクター画面に映し出した。
何の意味か分からず面食らったのだが、グループは顧客軽視のマーケットを変えるため、デザイン設計の段階から管理会社が参画し、魅せる管理を提案すべきと訴えた。なるほど。「見た目で行こうぜ!」というのは言いえて妙だ。管理の〝見える化〟に置き換えればいいのだろう。
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記者は約40年間、ずっとマンションの取材を行ってきた。年間にして100件は見学している。最近は管理協の記者懇親会などのイベントも欠かさず出席している。しかし、管理会社の若い社員からこの種の話を聞くのは初めてだった。
いまのマンションが「管理会社不在のデザイン」と一蹴されたときは頭をどやされたような気がした。と同時にマンション管理業の将来は明るいと感じた。若い方々が会社で重要な立場に立っているころにはデベロッパーとの関係も一変しているだろうと。
このグループのプレゼンの後に登壇した関氏も「私も台湾研修に同行した。(グループは)みんな若いし元気。頼もしい。そのあとで(話すのは)やりづらい」と会場を笑わせたが、関氏もまた管理業の明るい未来を指し示す講義を行った-内容については稿を改める。
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6名のプレゼンテーターは以下の通り(登壇順)。( )は欠席者
伊藤忠アーバンコミュニティ・中島英一郎氏
ケイエスコミュニティ・永野達夫氏
ライフポート西洋・吉村治人氏
レーベンコミュニティ・雨木将吾氏
野村不動産パートナーズ・小林伸氏
アイワマネージメント・高倉亮氏
(三井不動産レジデンシャルサービス関西・奥田隆司氏)
(東急コミュニティー・鈴木志氏)