当欄で既報したように、大京のBMI値注⑴が30以上の社員を対象とした「BMI改善支援宿泊研修」を取材した。グループ社員の健康維持・増進の取り組み「大京健康プログラム(Daikyo Health Program)2018」の一環として1泊2日の日程で行われたもので、15名が参加した。
参加者は「感嘆」「簡単」「感短」をコンセプトに、専門のトレーナーから減量を成功させるための基礎知識を学び、ダイエットウォーキングや簡単ヘルシー料理の調理実習などを行った。
同社グループは、社員の健康は一人ひとりの生活の基盤であるだけでなく、永続的に企業が発展していくうえで大切な「財産」であるという考えから、社員・家族の健康増進や制度の拡充を目指す「健康経営の取り組み」を推進している。
「大京健康プログラム(Daikyo Health Program)2018」では、社員の健康をはかる指標として肥満度の判定に国際的に使わる体格指数BMI=〔(体重㎏)÷身長m2〕の数値が適正化(18.5~25の範囲)になることを目指している。
このほか、1食当たり500kcal前後、塩分2g前後、化学調味料などを使用しない「置き弁」の導入、全社員と家族を対象とした「健康川柳」、ウォーキングイベント、クッキングスクール、健康講座(一部予定)などを実施している。
こうした取り組みが評価され、今年、経済産業省と東京証券取引所が主催する「健康経営銘柄2017」に選出された。
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暴飲暴食を避け、よく眠る(睡眠)・よく動く(運動)・バランスよく食べる(食事)-研修プログラムはわかりやすく、ごく当たり前の内容だった。
専門家が考案したメニューで参加者も作った、BMI値の数値が高くない人にも勧めたい簡単料理「千切りキャベツのお好み焼き」を紹介したい。
①キャベツ1/8玉を千切りにしてボウルに入れる。②卵を1個入れてかき混ぜ、塩、コショウで少し味付けする。③フライパンにサラダ油を入れて具を少し焦げ目ができるまで焼く。焼きあがったら裏返してふたをして蒸し焼きにする。④出来上がったら青のり、ソースなどをかけて召し上がれ!-記者も食べたがものすごくおいしい。酒のつまみにもなるし弁当のおかずにもなる。1人前の費用は100円もかからないのではないか。
散歩(運動)についても専門家のアドバイスを紹介する。漫然と歩くのではなく、周囲の風景などを観察したりして歩くことが五感を高めるために大事だということだ。これは記者も実践している。外に出たらまず交通に注意して歩くこと。そして街並みを観察し、建物のデザイン、街路樹をチェックする。たまにはユニバーサルデザインの視点で道路・店舗を見る。これは皆さんにもお勧めだ。見えないものが見えてくる。
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取材の目的は、前段の簡単料理やウォーキングの注意点を紹介することでも、メタボ(肥満、高血糖、高血圧、脂質異常症)の人たちが研修で悪戦苦闘する姿を伝えることでもなかった。
同社が「健康経営銘柄2017」に選定された24社のうちの1社であるのはうれしいことだし、その取り組みの一端を報道陣に公開するのは大英断ではあるが、会社の建前と研修参加者の本音にはギャップがあるのではないかと仮説を立て、それを探るのが取材の本旨だった。
残念ながらその目的は達せられなかった。写真を撮ることは一部を除き許可されていたが、撮られる側にしてみれば面白くないのはわかりきったことだ。個人情報も絡むナーバスな問題に切り込むなどという傲慢な手前勝手な姿勢は通用するはずがなかった。
それでも今後の取材には十分参考になった。肥満=メタボリックシンドロームという固定観念を捨てることが必要だし、改善を目的とした食事療法、運動療法などは効果があるのは理解できるが、それよりも労働環境を含めた生活リズムの改善が先決だと思う。
労働時間短縮や休日の増加なども大切であるが、ストレスを誘発する労働の質や働き甲斐、さらには家事労働などに踏み込み、自発的主体的に取り組めるような労働・家庭環境を整える必要があるのではないか。
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企業と労働者の間には「労働と健康」に関する認識に相当のギャップが明確に現れたデータを紹介する。
厚労省は昨年、過労死等防止対策推進法が施行されたのを受けて「過労死等防止対策白書」を初めて公表した。全体として労働時間(パート含む)は年々短くなっているが、仕事の量や質にストレスを抱える労働者が多く、精神障害に係る労災申請が増加していることなどが報告された。
記者が驚いたのは、同省が労働時間、労働条件などについて企業1万社と労働者2万人にそれぞれアンケートを行ったのだが、回答は企業が1,743件(回答率17.4%)で、労働者は19,583件(同97.9%)だったことだ。
この乖離は何を意味するのか。「自己責任」などと言って、他人の不幸を我がことと省みない企業体質がここにある。
大京健康プログラムの重要性がますます高まってくる。
注⑴ BMI(ボディー・マス・インデックス)について
計算方法は世界共通だが、肥満の判定基準は国によって異なっている。日本肥満学会では、統計的にもっとも病気にかかりにくいBMI指数22を標準体重とし、25以上の場合を肥満、18.5未満を低体重としている。
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〝ハイ、空を見て、腰を回しましょう〟BMI値25未満目指す 大京グループ宿泊研修(2017/12/6)