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2018/03/04(日) 12:57

ヴィンテージマンションとは何か 三井不リアルティ「リアルプラン営業部」新設

投稿者:  牧田司

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「広尾ガーデンヒルズ」

 三井不動産リアルティが4月1日付で組織改正すると発表した。流通業務本部、首都圏流通営業第一本部、首都圏流通営業第二本部、地域流通営業本部を再編し、リテール売買仲介事業を担う流通業務本部、首都圏流通営業第一本部、首都圏流通営業第二本部、地域流通営業本部を統合し「リテール事業本部」とする。

 これに伴い、首都圏流通営業第一本部と首都圏流通営業第二本部の各営業部を「流通営業一部」「流通営業二部」「流通営業三部」「流通営業四部」「流通営業五部」「流通営業六部」「流通営業七部」「流通営業八部」「流通営業九部」に改称する。同時に、富裕層を中心に都心の不動産売買仲介に特化する組織として「リアルプラン営業部」を新設する。

 また、事業用、投資用不動産市場におけるソリューションサービスの強化するため、各営業本部を統合し「ソリューション事業本部」とする。

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 不動産流通のことはよく分からないのだが、意思決定が迅速に伝達され、なおかつきめ細かなサービスが提供されるための組織改編だろう。

 記者が注目したのは「リアルプラン営業部」の新設だ。同社は他社に先駆け、1985年にリアルプランセンターを立ち上げた。その後、バブル崩壊を経験しながらも店舗数を増やしてきた。現在では都心の5店舗だが、一時は9店舗くらいあったはずだ。

 富裕層向けビジネスは間違いなく拡大する。国内だけでなく海外富裕層の投資需要も見込める。もちろんリテール事業部との連携は必要だが、通常のアプローチではケタ違いの富裕層に対応できないと思う。時々刻々と変わる生きものとしての不動産の実相はプロしか伝えられないのではないか。

◇       ◆     ◇

 さて、そこで「リアルプラン営業部」が取り扱ういわゆる「ヴィンテージマンション」について考えてみた。

 まず、定義。そもそも「ヴィンテージ」は、ワインの年代物・名品に付される代名詞か冠詞のようなものだ。記者は日本酒や焼酎、泡盛、紹興酒、モンゴル酒の古酒は飲んだことがあるが、ワインやウィスキーはほとんど飲んだことがない。

 日本酒の古酒は高級ワインのようにすっきりしているし、泡盛の古酒を飲んだら他の酒など飲めないくらい美味しい。しかし、経験したことがないものを中古マンションにたとえることなどできない。記者は億ション中の億ションと理解している。御三家をあげれば、三井不動産レジデンシャル「麻布霞町パークマンション」、三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス千鳥ヶ淵」(三井「千鳥ヶ淵」もいいが)が東西の横綱で、住友不動産、三井不動産、三菱地所、第一生命保険の「広尾ガーデンヒルズ」が名誉会長のような存在だ。「パークマンション檜町公園」はシートがかかった外観しか見ていないので評価のしようがない。

 三井リアルがどう定義付けしているかわからないが、東京カンテイは2016年のリポートで、「少なくとも築10年以上(2015年12月時点)を経過していること。専ら住宅地(≒住居用途地域)に所在していること。物件の平均専有面積が100㎡前後であること(少なくとも90㎡以上であること)。物件から発生する中古流通事例の90%以上が坪300万円以上であること」とし、その数は237物件としている。

 これには同意できるものも同意できないものもある。築年数は関係ないと思う。確かに時を経ても資産性が保たれているという意味では「築10年」は一応の説得力があるが、分譲開始の時点で将来にわたりその価値が維持されるであろうと思われる物件はある。

 「専ら住宅地に所在」もどうか。確かにバブル発生前は〝億ション〟といえばほとんど100%近く住居系エリアに所在した。商業系や準工地域で億ションが分譲されるようになったのはバブルの最盛期のころからだ。今では、タワーマンションを含め商業系エリアのほうが多いくらいだ。

 富裕層の選好基準も変化している。「専ら住宅地」に限定するのは適当ではない。三井レジの「赤坂」「青山」(これをヴィンテージと呼べばだが)は商業立地のタワーだ。

 「物件の平均専有面積が100㎡前後」はまずまず同意できる。これを絶対条件とするには疑問もあるが、コンパクトマンションをヴィンテージと呼ぶには抵抗がある。

 「坪300万円」も根拠が希薄だ。「広尾ガーデンヒルズ」だって坪3,000万円を突破したこともあるし、リーマン・ショック後は坪300万円まで下落したこともある。坪単価は重要な基準ではない。郊外エリア№1の物件も該当するようにすべきだと思う。

 同社の定義で欠落しているのは、基本性能・設備仕様、住環境・居住性能だ。これらの価値は自ずと坪単価に反映されるが、定義として外すわけにはいかない。絶対条件だ。売主や施工会社のブランドも加えるべきだ。そうすればランク外になる物件は続出する。

 ここまで書いてくると、「ヴィンテージマンション」なるものはあるようでないともいえる。前提条件が異なれば、結果は全く違ったものになるということの証左だ。

 本物の億ションは、東京カンテイが示している237物件のうち半分は減り、一方で加えるべき物件も増えるのではないか。

 そこで、不動産流通各社に提案だ。自社の基準を設け(設けているはずだ)、それこそランキングとして公表したらどうか。なによりも物件の特性、価値を知っているのは流通会社だからだ。それぞれ評価が異なったら面白い。ヴィンテージマンションを事業主に順位付けするのもいい。三井レジが3~4割を占めるのか。

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