記者のビーンボールを受けてみよ
いきなりビーンボールを投げる。「神スイング」稲村亜美さんの球速100キロにはるかに及ばず、キャッチャーミットにまともに届かないボールだが、これを読んだらのけぞるはずだ。
その批判の矢面、先頭打者には、住宅新報の元編集長H氏に立っていただき、H氏の〝名物〟コラム「夢かうつつか 今宵も一献」を俎上にあげる。H氏こそが同紙の現状を如実に物語っており、コラムにも病巣が巣くっているような気がしてならないからだ。
記者はどちらかといえば〝一匹狼〟で、他の業界紙記者とほとんど交流しない。敵になっても味方になることはまずないし、フリーハンドで記事を書きたいからだ。徒党を組むのも好きではない。
そんな訳で、H氏ともあまり話をしたことがない。取材フィールドも異なっていたようだ。
それでも、最初に登場していただくのには理由がある。一つは、記者より確か3日早く生まれた同い年の〝先輩〟記者として親近感があり、記事の書き手と読み手としてキャッチボールができるような相手に思えるからだ。
もう一つ。これはあまり書きたくないのだが、書かざるを得ない。数年前だった。同社の当時の編集長が「うちには小姑が二人もいる」と、大勢の業界関係者がいる会合で冗談を飛ばした。その編集長は昨年会社を辞められ、後任の編集長もすぐ退社された。1年間に2人の編集長が辞めるのは異常事態だ。その後の展開は冒頭に書いた通りだ。
その二人の〝小姑〟のうちの一人がH氏であることは業界関係者であればすぐわかる。
いま〝小姑〟がどのような意味なのか問わないし、問題でもない。編集長を定年で辞め、いまも健筆を揮っていらっしゃる。ご同慶の至りだ。
しかし、文字数にして225字(写真含む)の小コラムはいかがなものかと思う。タイトルからしてすでに寝言のような、まともな批判を遮断する予防線のような、安さが売りの醸造メーカーのCMのような露悪趣味そのものだ。
これが〝全国の読者とともに71年〟の同紙の4本くらいしかない署名記事のうち1本というのは情けなさすぎる。それが「多くの方の声援に支えられている」というのだから、何をかいわんやだ。〝うつけ者の与太話〟と言っては失礼か。
どうして過去の実績・栄誉を帳消しにして余りあるこのようなどうでもいい飲み屋の紹介記事を書くのか。飲み屋の紹介など、吹き溜まりのゴミのように無料紙やネットに巻き散らかされているではないか。
夜な夜な、ぬゑか夜鷹のように場末の飲み屋街を徘徊し、とっくに賞味期限が切れた〝元編集長〟の印籠を振りかざし、熱燗一杯300円の安酒も身も心もすっかり芯まで冷めているのに、まさに羹に懲りて膾を吹くようにちびちびと飲み、酒の肴といえば、とっくに薹が立った蕗の薹か固くて歯が立たないスルメか、あるいは骨と皮だけの目刺しのような、誰にも相手にされない酌婦を口説くのならまだしも、そんな元気もなく、白内障の予兆のような白濁した胡乱な目で睨め付けるしかない、まるで記者と瓜二つの貴殿のそんな哀れな姿を想像するだけで腸が捩れるほど悲しくなるではないか。
連載は100回を超えたというから2年以上だ。まさかライフワークにするつもりではないだろうが…。〝ご隠居〟〝小姑〟の攪乱、錯乱として見逃すわけにはゆかぬ。晩節を汚してほしくない。
記者を見習いなさいよ。最近は量り売りよろしく計量カップでしか飲ませてもらえないお陰で糖尿の数値が劇的に向上し、トマトのアメーラを毎日のように食べている効果で血液サラサラの状態を維持している。
記事だって質はともかく、量は年間600~700本書いている。単行本なら数冊になる量だ。RBA野球の試合も年間100試合以上こなす。酒は百薬の長を実践しているのが記者だ。
貴殿はその真逆、つまり百害あって一利なしの酒におぼれる芥か病葉のような人生を送っているのではないか。このままだと業界妾だの御用評論家だのと不名誉な肩書を付けられるのがおちだ。これが心配でならない。
そんな時間とカネ(飲み代はほとんど会社持ちと聞いたが)があったら、1週間で1物件でもいいから現場に赴きマンション記事を書いてほしい。年間で約50本、3年で150本にもなる。まっとうすればいっぱしの住宅評論家としてデビューできるかもしれない。それでこそ男H氏だ。そうなったら、がっぷり四つに組み、万感の思いを込めて100年古酒を飲み交わそうではないか、3日早生まれの先輩!
欠けるのは「愛」 記者生活40年 業界紙に期待するもの ニュースを追うな①(2018/4/2)