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2018/04/16(月) 09:59

分譲一筋に30年 〝ルネ〟の総合地所 執行役員・梅津英司氏が語る

投稿者:  牧田司

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梅津氏

 卓越した商品企画で話題を提供してきた〝ルネ〟ブランドの総合地所が、長谷工グループ入りして丸3年目を迎える。昨年は創業40周年の年だった。これまで供給した住宅は約65,000戸。この40年の歴史のうちバブル崩壊後の30年間を分譲一筋に歩んできた同社執行役員事業部長・梅津英司氏(52)にこれまでの仕事と今後について話を聞いた。

◇       ◆     ◇

 同社がどのようなデベロッパーであるかを少し紹介する。

 創業は昭和52年5月。安宅産業の住宅部門の営業を継承して設立された。同59年9月に現社名に変更。平成11年10月に永昌不動産を、同21年6月にトータルハウジングをそれぞれ合併。同27年5月、長谷工グループ入りした。

 これまで分譲マンションは〝ルネ〟シリーズで約43,000戸、戸建ては約2,400戸、合わせて約65,000戸の住宅を供給している。データはないが、これほどの住宅を供給しているデベロッパーは20社あるかないかだ。

 同社が業界に存在感を示したのは昭和61年竣工の「ルネ門前仲町」(467戸)「ルネ蕨」(192戸)「ルネ蒲田」(216戸)「ルネ新宿御苑プラザ」(303戸)の4物件だ。

 記者はこの4物件を全て取材している。分譲開始はマンション不況から抜け出す昭和60年ころで、同社は商品企画で業界をリードした。

 鮮明に覚えているのは、「蒲田」の物件で、施工トップの長谷工コーポレーション(当時、長谷川工務店)と設計に東急設計コンサルタントを起用して、卓越した商品企画に仕上げたことだ。1階住戸を専用駐車場付きとしたのは業界初ではなかったか。「新宿御苑」は基本性能・設備仕様をアップさせたコンパクトマンションの草分け的な物件で、申し込みが殺到した。

 前身が商社だけあって〝いいとこ取り〟に長けていると感嘆したものだ。

 梅津氏は平成2年の9月入社だ。「わたしが入社したころは、土地を見ないで買い付けしていた物件もありました」と当時の状況を梅津氏は振り返る。

 ところが、まさに頂上に上ったとたんに梯子を外されるようにバブルは崩壊する。平成2年9月の首都圏マンション月間契約率は2年8か月ぶりに70%を割った。

 「わたしが担当した最初の物件は綾瀬駅からバス便の、所在地は八潮市の『ルネ綾瀬』。全48戸のうち約8割に申し込みが入ったのですが、キャンセルが続出し、結局売れたのは4戸のみでした。坪単価は250万円? いえそこまでいきませんでした。ワイドスパンのいい物件だったんですが…。それから戸別チラシ配布や銀行、業者回りなどに明け暮れました」

 「チラシの配布は戸別ですから、公団住宅は大変でした。エレベーターがなく、階段を上り下りしなければなりませんでしたから。頭は使わなくて済んだのですが、さすがに疲れましたね。いまは懐かしいですが…」

 そこから塗炭の苦しみが始まるが、同社が破綻しなかったのは、メインバンクの住友銀行とのパイプが太かったからに違いない。

 そして平成12年、「ルネアクシアム」(721戸)が業界を唖然とさせた。「半分も売れない」と読んでいた業界関係者をあざ笑うかのように、何と全戸を一挙に販売し、6,510組の来場者を集め平均4.8倍の競争倍率で即日完売した。一挙供給の即日完売戸数の多さでは昨年の「ザ・タワー横浜北仲」第1期の730戸がバブル崩壊後では最多だが、それまで17年間この記録は破られなかった。

 「あれはすごかったですね。東武鉄道野田線新船橋駅から徒歩10分、当時は周辺に何もなかったですからね。普段静かな町が、土日は大渋滞になりました」

 人気の要因は、坪単価110万円台という価格の安さもあったが、需要を喚起するため、タレントで画家の城戸真亜子氏や映画監督の崔洋一氏など数人の専門家のアイデアを盛り込んだ企画が見事にヒットした。

 その後、〝モックン〟こと本木雅弘氏を起用して人気になった三菱地所レジデンス「Wコンフォート」などの〝タレントマンション〟が続々供給されるようになった。歴史をつくったマンションだった。

 現在の商品企画の参考にもなりそうなので、もう少し具体的に物件の特性について触れておく。特徴は、①全住戸の35%が100㎡以上、90㎡以上は6割以上②スラブ厚は29センチ③崔監督は〝女人禁制・18歳未満立ち入り禁止〟の〝男のラウンジ〟を提案④外周部は幅5mの歩道と2列の桜並木を整備⑤託児施設を設置⑥100%自走式駐車場⑦販売代理はプラン別に長谷工アーベストと三井不動産リアルティ(当時、三井不動産販売-など。

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当時の記事

 「どうしてそんなことができたかと言えば、当社の社員は旧安宅を始めいろいろな会社からの個性派集団、寄せ集め集団で、しかも仕入れから企画-販売まで一気通貫でやってきましたので、みんなプロ意識が強く、アイデアマン揃いでした。

 永昌不動産が分譲したバス便の全戸100㎡の『津田沼』もそうですし、『ルネ御殿山』も代表作です。大浴場付きは10棟くらい供給しました。1999年竣工の全488戸の『アクアフォレスタルネ稲毛』、2003年竣工の全758戸の『東京サーハウス』、2009年竣工の全191戸の『リージェントハウス大森西』なども印象に残る物件です。『稲毛』はビオトープなどを採用して環境共生に取り組んだ物件ですし、『サーハウス』は大浴場付きで共用部に高級家具のカッシーナを約8セット設置しました。『大森西』には400万円かけて本物の火を使った暖炉を採用するなどこだわりました。カネがかかってもいいものを造ろう、入居者が満足していただけること、それが何よりの広告だという文化がありました」

 梅津氏の口からは次々と記憶に残るマンションの名前が飛び出した。

 記者も「津田沼」や「東京サーハウス」はよく覚えている。「津田沼」は常識では考えられないプランがヒットした。「サーハウス」は今では当たり前だが、当時は最先端の「健康」をテーマにしたマンションだった。

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即日完売を報じた「週刊住宅」721戸はこの月の埼玉県の全供給物件の戸数と同じとある

◇       ◆     ◇

 戸建てについても触れておきたい。同社は約30年間にわたって全1,261戸の「白岡ニュータウン」を開発・分譲してきたが、そのノウハウを2016年分譲の「ルネテラス船橋」(34棟)に注ぎ込んでヒットした。

 詳細は当時の記事を参照していただきたいが、梅津氏は戸建てについても次のように語った。

 「戸建ても強化します。狙いは都心の高額ですが、(用地が)買えているのは郊外で、思いと実際は若干異なるのですが、『白岡』や『船橋』のような街をきちっとつくったものを供給していきたい」

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 今後の事業展開について、梅津氏は「これまで情報を共有する、継承するという風土がやや欠けていた」と反省し、次のように締めくくった。

 「いま当社グループはかなり意識が変わってきました。エンジンがかかったともいえます。商品企画に関する研究会を頻繁に行っています。今後も他社にないもの、総合地所らしいものを提供していきます。ライバル? 仲間もたくさんいますので、名前は伏せていただきたいのですが〇〇には負けませんよ」と。

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 梅津氏は「RBA野球は出たり出なかったり。あれはどこと戦ったときか(三井のリハウス戦)。小雨が降る日で、うちの投手が四死球ばかり出すので球が飛んでこなかった。仕方がないのでグラウンドの四葉のクローバーを摘んでいた」と話したので、RBA野球についても触れざるを得ない。

 RBA野球大会は今年で30周年を迎えるが、同社チームはこれまで23回出場しており、通算成績は29勝45敗、勝率は.392。参加当初は好投手・長島を擁し、強豪チームにも互角の成績を残していたが、年を重ねるごとに選手の高齢化が進み勝てなくなった。2011年、三菱地所ホーム相手に15-0の5回コールド勝ちを収めるが、これは実に5年ぶりの勝利だった。梅津氏は5番ファーストとして出場、3打数2安打3打点の活躍をしている。

 ところがその翌年の2012年、RBA野球大会の中で〝燦然〟と輝く〝不名誉〟な大記録を2つも打ち立てた。

 一つは対住友林業の試合。0-21の大敗を喫したのだが、何と制限時間1時間半の大半を守らされ、住林の打者は3~4回打席に立っているのに、同社は6人しか回ってこなかった。つまり7~9番打者は1度も打席に立つことなく敗れた。これは前代未聞の大会記録だ。

 もう一つは、三井リハウス東京戦で大会記録の0-36で敗れたのだが、1イニング28打者連続出塁、28打者連続得点(プロ野球記録は14者連続)というこれまた空前絶後の大会記録を樹立した。三井の打者の打席数は49なのに対し同社は13。三井は9番打者も5回打席に立ったが、同社の5番打者以下は1打席しか巡ってこなかった。雨中の中、ずぶぬれになって守らされた。

 これに懲りたのか、同社は2015年から出場しなくなった。梅津氏は「長谷工のチームに出てもいいとみんなに言っている」というが、さて…復活はあるか。

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