新日鉄興和不動産は4月24日、銀座1丁目に開設した単身世帯のライフスタイル、価値観など考察し、情報を発信する研究所「+ONE LIFE LAB銀座ギャラリー」のプレス発表会・内覧会を行ったが、冒頭、同社常務取締役住宅事業本部長・吉澤恵一氏が「当社のマンションブランド〝リビオ〟はいま一つ」と話したのが気にかかる。この話から先に書く。
吉澤氏が「いま一つ」と話した真意はよくわからないが、いまマンション市場を支配している大手から取り残されている、もどかしさがそのような言葉になったのではないか。
これを聞き、記者も同じように感じた。それは同社に対する期待が大きいからだ。
もう40年近くも昔か。当時、日鉄ライフが新日鉄の社宅跡地などで積極的にマンションを分譲し始めた。レベルの高い商品企画をみて、〝大手デベロッパーを超えるのは既存のデベロッパーではなくて、異業種から参入したこのような会社だ〟と確信した。
その後、社名は新日鉄都市開発になり、さらに紆余曲折があり2012年に興和不動産と合併していまの社名になった。建て替えの「テラス渋谷美竹」「ザ・レジデンス神宮前」「横濱紅葉坂レジデンス」などで業界の話題になったころだ。興和不はマンションも手がけていたが、どちらかと言えばビル事業を得意としており、両社の合併はシナジー効果が大きく、大手の一角を占めるのではないかと記者は予想した。そして2013年、他社に先駆けてコンパクトマンション市場に参入した。
その後はというと、同社が〝ぶら下がりの〟物件はあるが、幹事となった話題物件はほとんど記憶にない。これが残念だ。あの商品企画力はどこに行ったのかと言わざるを得ない。驚嘆した「赤坂インターシティAIR」との落差があまりにも大きすぎる。情報収集力、目利き力で大手に差をつけられているとしか思えない。一つ指摘すれば、同社は販売部隊を持っていない。現場を知らないといい商品企画は生まれない。
しかし、今回の「銀座ギャラリー」の開設は巻き返しの強いメッセージだと受け止めたい。吉澤氏は今後のマンションの展開について、「2017年度は400~500戸。2018年度は1,300戸、2019年度は2,300戸に増やす」と話した。
先に書いたように、いまマンション業界は、大手5~6社が抜け出しており、次位に同社や電鉄会社など数社が上位グループ入りをうかがっている図式だ。〝新日鉄〟の看板があるのだから同社が浮上することは十分可能だ、戸数のことを言っているのではない。商品企画で他社を圧倒してほしい。いよいよジャンプする時代だ。
感動の組子-ヘンデル-社長挨拶-内覧フルコース堪能 新日鉄興和「赤坂インターシティAIR」見学(2017/9/27)
新日鉄興和不 「東京日本橋」「大手町」「浅草橋」共同マンションパビリオン(2013/2/8)