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2018/06/08(金) 15:07

〝羽ばたけないかごの鳥〟国交省 団地再生検討会 エアコンなし 議論白熱 30度超に

投稿者:  牧田司

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第4回「住宅団地の再生のあり方に関する検討会(第2期)」

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浅見氏

 国土交通省は6月8日、第4回「住宅団地の再生のあり方に関する検討会(第2期)」(座長:浅見泰司・東大大学院教授)を開催。住宅団地の再生のために必要な方策について検討を行う上での課題を整理するため、横浜市の取組みや野村不動産のマンション建て替えの実績・課題などに関するプレゼンテーションについて意見交換を行った。

 小林秀樹委員(千葉大大学院教授)は、法制度の課題と提言について資料を提出。ポンプ室跡地に高齢者住宅を事業者が建設した例を紹介。エレベーターを増設しなくても団地に住み続けられるとした。専有部分を有する新棟の建設であり、現行法では全員同意が求められる。このため、特別多数決による敷地分割制度があると団地再生事業の推進が容易になると話した。

 横浜市の建築局長・坂和伸賢氏は、左近山団地、たまプラーザ駅北口、団地再生コンソーシアムなどについて語った。

 同省では今後、近年の制度見直し内容を踏まえ、再生手法の活用や戸建て住宅団地の再生・魅力向上の観点も含めて幅広く検討していく。

◇       ◆     ◇

 検討会の会場は霞が関の中央合同庁舎2号館。会が始まるや否や、同省担当者は「冷房を予定していたのですが、6月いっぱいはエアコンが使えない決まりになっておりまして、申しわけございません」と切り出した。とたん、暑さが襲ってきた。汗が噴き出した。

 冒頭で挨拶した同省・真鍋純大臣官房審議官も「そのような事情で会場は暑くなっている。お詫びいたします」と追い打ちをかけ、これまでの検討会の経緯などを述べた後、最後に「皆さんの論議も熱くなることを期待している」と語って、公務のためか会場を抜け出した。

 会場に〝鳥〟残された委員、関係者、傍聴者は80人超。会合は2時間。会が終わってから同省担当者に「気温は何度? 」と聞いても「28度よりは暑いかもしれない。体感温度はひとそれぞれ」とつれない返事しか返ってこなかった。間違いなく30度を突破していたと参加者は感じたのではないか。

 この日は欠席した辛口の櫻井敬子委員(学習院大教授)なら、「法そのものが窮屈で、こんな狭くて暑い会場で妙案が出るはずがない」と一喝したはずだ。

 世の中はクールビズ一色。しかし、国のシンクタンクである国交省の会議室がこんな劣悪な労働・温度環境で、どうして同省が推進している生産性向上が図れるのか。

 記者の事務所はクラシックのBGMが流れ、フェイクでない本物の緑がふんだんに置かれ、わが机の上には鎮静剤の役割を果たしてくれるドクダミが芳香を放っている。

◇       ◆     ◇

 しかし、最悪の環境ではあったが、会合そのものは真鍋氏の期待した通り議論白熱、沸騰した(と感じたのは記者だけか)。体感温度を2~3度は上げたはずだ。

 ここで、団地建替えがなぜ進まないか、いちいち書く時間がない。最小限にとどめる。

 野村不動産住宅事業本部マンション建替推進部副部長兼開発課長・目黒朝樹氏らが同社の21件上る建て替え事例や、居住者の負担を軽くするため敷地を二分割し、保留地を確保して建て替えを進めていることを紹介したうえで、一団地の解消が進まないこと、区分所有法や地区計画など法の壁があること、事業採算性があわないこと、権利関係が複雑で事業が長期化するリスクなど課題も多く、部分売却制度はもっと簡便化を図るべきなど話した。

 この問題に対して、委員の大西誠氏(不動産鑑定士、竹中工務店特命理事)は、「心情的には野村さんの味方に付きたいが、正直にいって、それは公平性が担保されているのかという疑問も湧く。わがままではないかといわれかねない」と率直な意見を述べた。

 そして何より、記者の心を揺さぶったのは、この大西氏と戎正晴委員(弁護士)の法とは何か、生きることとはどういうことかの根源的な核心にズバリと迫った当意即妙の言葉だった。

 大西氏は、「マンションに住むと(区分所有)法から逃れられなくなる」と話した。一方、戎氏も、パタパタと扇子が踊っていた会場を皮肉ったのか、「(マンション居住者は)羽ばたけないかごの鳥」と、記者が住むわが多摩ニュータウンそのものの苦境を言い当て、さらにまた「無能力者の扱いをどうするか。法は意思表示をしない人について何の手当もしていない」「都心部はともかく、地方は建て替えの〝タ〟の字も出ないのが現状」などと語った。

 だが、しかし、大西氏も戎氏も、どうすべきかについて言及しなかった。これこそが問題だと記者は思ったのでストレートに両氏に質問した。

 大西氏には「法から抜け出すにはどうすればいいか」と、戎氏には「〝タ〟の字も出ないわたしはどうしたらいいのか」と。

 大西氏いわく。「国交省は法務省とタッグを組んで法の改正(解消とは話さなかった)を図るべき」と。戎氏は「それを論議するのだ」と笑った。

 委員の方たちは、あれやこれやの法律から解き放たれ、自由に天空を舞うオオルリのような存在にマンション居住者や記者をしてくれるのか。次回以降に期待だ。

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