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2018/06/23(土) 12:19

前提条件は?だが「道」のテーマが最高にいい ポラス第5回「学生・建築コンペ」

投稿者:  牧田司

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「第5回POLUS-ポラス‐学生・建築デザインコンペティション」(ポラテックビルで)

 ポラスグループのポラスは6月21日、「第5回POLUS-ポラス‐学生・建築デザインコンペティション」の公開審査会を行い、最優秀賞に山元隆志氏(明治大学大学院理工学研究科)・浜本雄也氏(同)・ 早坂覚啓氏(同)の「道的エネルギーの現像ー揺らぎうる境界風景ー」が選ばれた。

 同コンペテは、大学院や大学、高等専門学校、専修学校、高等学校などの学生を対象に、建築の道を志す学生の自由で新鮮な発想(アイデア)を表現・公表する機会を設けるのが主旨。今回のテーマは「道からはじまる、これからの家」。応募総数は485件(登録845件)だった。

 審査委員長の青木淳氏(青木淳建築計画事務所)は、「『道』はわたしの最大のテーマ。建物の中に道という公共的な空間をどのように創造するか、いまだによくわからない。だからこそ挑戦する意味がある。内容が濃い作品が多くうれしかった」と講評した。

 審査委員の今井公太郎氏(東京大学生産技術研究所教授)今井氏は「コンペに選ばれるのは100回に1回くらい。選ばれなかった人もどんどんトライしてほしい」とエールを送った。

 その他、優秀賞は丸山航氏(東京理科大学大学院工学研究科)・勝山滉太氏(同)の「コドモしか入れないフォリーのある街」、入選は大杉亮介氏(千葉大学大学院融合理工学府)の「『雨の日コミュニティ』~人々をつなぐ”雨のみち”~」、小川直人氏(工学院大学大学院工学研究科)・島田陽介氏(同大学建築学部)・木元那奈氏(同)の「握手する生活。」、河鰭公晃氏(東京理科大学大学院理工学研究科)の「窓辺群像」が選ばれた。賞金は最優秀賞50万円(1点)、優秀賞20万円(1点)、入選10万円(3点)。

 審査委員は、青木氏と今井氏のほか原田真宏氏(芝浦工業大学教授)、永山祐子氏(永山祐子建築設計)、安藤欣司氏(ポラスグループ)。

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最優秀賞

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左から浜本氏、山元氏、早坂氏

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青木氏(左)と今井氏

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左から永山氏、原田氏、安藤氏

◇       ◆     ◇

 記者が駆け付けたときはプレゼン、質疑応答などが終わっており、表彰式と審査委員の講評しか取材できなかったが、「道からはじまる…」というテーマには感動すら覚えた。

 「道」といえばすぐ宮脇檀を思い出す。積水ハウスや東急不動産などの団地やマンション多く手掛けており、コモン、クルドサック、ボンエルフなどを多用した建築家だ。「高幡鹿島台ガーデン」「フォレステージ高幡鹿島台」のように住居表示に事業主の「鹿島建設」の名が採用されているものもある。街づくりはいつも「道から造った」とも聞いている。首都圏の代表作「コモア四方津」は必見だ。昨日記事にしたアキュラホーム「若葉台」の戸建てには、宮脇檀建築研究所に勤務していた二瓶正史氏のアイデアと思われるコモンが採用されていた。

 さらに、「道」といえば記者が好きな魯迅の言葉「地上にはもともと道はない。歩く人が多くなれば、それが道となるのだ」を思い出す。深くて重い言葉だ。

 なので、会場に展示されていた学生さんの5つの受賞模型作品をよく観察したのだが、期待するような「道」はほとんど一つも提案されていなかった。

 その理由はすぐ分かった。作品の条件は、南北に6メートル道路があり、36m×36m=1,296㎡の敷地に6軒の木造住宅を建設することしか示されていない。敷地内に道など設けずに、敷地を南北に三等分し、東西に二分すれば、1戸当たり216㎡の〝邸宅〟が完成する。「道」などなくていいということか。

 もう一つ、不思議なのは、これまでのコンペでも感じたのだが、作品は法令上の制限などはまったく考慮されていないのではないかということだ。第一種低層住居専用地域(建ぺい率40%)だったら違法となりそうなものや、三角形の色紙をちりばめたような使い勝手の悪い建築物とはよべないもの、隣接する敷地をまったく無視した作品もあった。小説や絵画と異なり、建築に関するコンペは法令上の制限をクリアするのが大前提ではないのか。常識の埒外なのか。

 記者個人的には、受賞作品より二上和也氏・師田侑一郎氏(東京大学大学院)の「2本の道-図地反転を繰り返す家と庭」に一票投じたくなった。隈研吾氏は見る方向で表情を変えるデザインを多用する。ひょっとしたらお二人は隈氏の研究員生か。

 それと、宮野健士郎氏(東京工業大学大学院)の「けものみち」に興味がそそられた。「人道」から解き放たれ、「けものみち」がまかり通るようになったらいったい人間の生活や暮らしはどうなるのだろう。法を無視していいのなら、これが最優秀賞でもよかった。

 審査会に参加していたある大学院生は「バリエーションが少なかったという指摘もあったが、自分が想定していたものより案はそれぞれよくつめられていた。既成概念にとらわれないところがいい」と、また別の大学3年生は「自分たちとのレベルの差を痛感した」とそれぞれ感想を語った。

◇      ◆     ◇

 永山氏の作品をネットで調べた。「中之島新線駅企画デザインコンペ優秀賞」受賞とあった。記者が見て感動したあの美しい駅のことか。マンションは手掛けないのか。原田氏の作品は、この前これまた木が美しいCLTのモデルハウスを見学した。

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ポラス 学生コンペ 実物件化モデルハウスを公開 ミニ開発の難点を解消(2017/8/12)

 

 

 

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