ポラスグループのポラスガーデンヒルズは8月10日、2014年の「第1回ポラス 学生・建築デザインコンペティション」に応募があった全458作品のなかから実物件化を目的として建築を進めてきたモデルハウス「DomaHut(どまはっと)」が完成したのに伴い、報道陣向けに見学会を行った。実物件化は一昨年の「三郷中央」に次ぎ2件目。
採用したのは、当時、九州大学大学院の松川真友子氏の「もう一つの連なる棟」。建物は松戸市牧の原に位置する敷地面積101.58㎡、木造軸組工法3階建て、延べ床面積125.25㎡。5,000万円台の前半で分譲する予定。当時の応募要件は、木造による1棟~最大10棟の「自立型の共生を表現した住宅」だった。
縦長の建物を3分割し、中央のブロックの屋根を90度回転させ、屋根の間から光と風を取り込み、半屋外と半屋内の土間空間を演出し、梁・柱・天井などに構造体を効果的に露出させているのが特徴。
事業化に関わった同社ガーデンヒルズ事業部設計部部長・安藤欣司氏は「家の真ん中に土間空間を設け、外とつなげるアイデアが面白かった。適地を選定するのとプランニングに2年間くらい要した。コストをもっと下げるのが課題」などと話した。
現在、北川原温建築設計事務所に勤務する一級建築士の松川氏は「実家が長崎で、隣近所の付き合いが大事だったのを思い出し、庭が持てない密集住宅地の問題を解決しようと考えた。プロの力によって事業に関われたことに感謝している」と語った。
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松川氏がどのような「密集住宅地」を想定したのかわからないが、記者は昭和50~60年代、いわゆるミニ開発をよく取材した。ひどいものは、長屋として確認申請し、実際は切り離して一戸建てとして分譲されたものもあった。猫の額ほどの庭もなかった。明らかに違法建築だった。
安藤氏が「コストは2階建てと比較すると1.7倍、3階建てだと3割増し。窓も嵌め殺しにせざるを得なかった」と語ったように、コスト高は否めないが、ミニ開発の問題点を解決しようという意欲がストレートに伝わるモデルハウスだと思う。
とくに1階のビルトインガレージ-土間-ダイニングの提案がいい。土間の広さは5坪くらいか。光と風を呼び込み、外と緩やかにつながるテーマがよく表現できている。3階までのボイド空間の天井高は約9メートルもある。
課題・難点もある。松川氏が当初描いた「密集住宅地のミニ住宅の閉じられた空間を外に開放する」狙いを徹底させるなら、土間空間は「勝手口」のような機能を持たせてよかったのではないかと思う。
もう一つ。3階部分の2つの居室のうち1室は窓が1カ所しかなく、風が抜けない。窓の外は屋根が迫っている。9メートルのボイド空間は捨てがたいが、外壁の屋根形状はそのままにし、内部は陸屋根にして屋上テラスとして利用できるようにすればよかったのではないか。
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