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2018/10/27(土) 20:27

中身は最高だが…応募半減 木住協 第21回「木のあるくらし」作文コンクール表彰式

投稿者:  牧田司

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第21回「木のあるくらし作文コンクール」表彰式(すまい・るホールで)

 日本木造住宅産業協会(木住協)は10月27日、第21回「木のあるくらし作文コンクール」表彰式を開催した。

 同コンクールは「木造住宅は地球環境にやさしい住宅」であるという同協会の広報・啓発活動の一環として、毎年10月18日の「木造住宅の日」にちなんだイベント。昨年までのテーマ「木の家・こんな家に住みたい」としていたのを応募しやすくするため「木のあるくらし」に変更し、国土交通省大臣賞、文部科学大臣賞、農林水産大臣賞、環境大臣賞の4つの大臣賞に加え新たに「外務大臣賞」を設けた。

 応募の結果、国内1,087校(前年比62.7%)と海外のベトナム、ニューシーランド、オーストラリア、インドネシア4カ国からの106作品を合わせ10,882点(同47.9%)の作品が寄せられた。審査の結果、各大臣賞と住宅金融支援機構理事長賞、日本木造住宅産業協会理事長賞、朝日小学生新聞賞と木住協地方各ブロック賞など35作品が表彰された。

 同協会・市川晃会長(住友林業社長)は、「今回からより取り組みやすいテーマに変更し、外務大臣賞も設けたことで新たな第一歩を踏むことができました。寄せられた作品は、日ごろ目にされたり触れたりされていることを豊かな文章力で表現されており、感動をいただいた。この感動をみなさんと共有し、自然と共生する大事さを次世代につなげていきます」と挨拶した。

 審査委員長のイラストレーター・はせがわゆうじ氏も、「作文が上手な人は朗読力も上手ということがよくわかりました。驚きの連続でした。他の人は持っていない何かを皆さんは持っている」と絶賛し、「白い紙を広げて、何でもいいから表現してみてください。そうすると自分の気持ちが整理され、見えないものが見えてきます」とエールを送った。

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市川会長

◇       ◆     ◇

 作品は、市川会長やはせがわ氏が「感動的」と話したように、みんな素晴らしいものばかりだった。その中で2つ選べと言われたら、記者も国土交通大臣賞を受賞した群馬県・伊久間彩愛さんの「シマトネリコが守る家」(高学年の部)と、徳島県・中本侑志くんの「ぼくの木のいえ きいくん」(低学年の部)を選ぶ。

 佐久間さんがいきなり「僕の家はいい物件だ」と話しだしたときはびっくりしたが、燕のことだと分かり、鳥の目線から同じ鳥の世界や人間界を観察する洞察力に感嘆の声を上げたくなった。

 佐久間さん、最高に素晴らしい。なにが素晴らしいかと言えば、ツバメのオスの気持ちでものごとを考えられるということです。参考ですが、わたしの好きな小説家・小池真理子さんは「わたしは両性具有。男女それぞれの視点で小説を書ける」話しました。「両性具有」とはミミズとかウニなどオスとメスの機能を持ち合わせている動物です。

 大きくなったらぜひ小池さんの小説を読んでみてください。男や女、社会の出来事をよく観察されていることが分かるはずです。これからの世の中は、男(オス)と女(メス)のそれぞれの立場からものごとを考えるモノサシ(思考力)が必要になるはずです。佐久間さん、今度は虫の目線で書いて。

中本くんは2年生くらいか。曾祖父の時代から育ててきた木を材料にして建てた家を紹介する内容だが、「ぼくの家はヒノキ(桧)、スギ(杉)、マツ(松)、クリ(栗)、ツゲ(栂)、ケヤキ(欅)、カヤ(榧)、ネズ(杜松)で出来ている」と話した。

中本くん、すごいね。おじさんは7つ目までは分かるけど、「ネズ(杜松)」は初めて聞いた名前です。みんな中本くんの住んでいる徳島県で採れた木なんでしょうね。

中本くん、国土交通省の人が「木は人にやさしい、環境にやさしい、地球にやさしい」と言いましたよね。おじさんもそう思う。みんなそう思っている。けど、日本の家は、昔は80%くらいが木で出来ていたのが今は60%くらいに減っています。その代わり鉄やコンクリートの家がどんどん増えています。

なぜだと思いますか。お父さんやお爺さんに聞いてみてください。おじさんもよくわかりません。木住協の中で一番偉い住友林業の市川社長さんにも聞いてみてください。「市川さんの会社は何種類の木を使っていますか。徳島の木は使っていますか」と。

 農林水産大臣賞(低学年の部)を受章した群馬県・小暮浩輔さんと、文部科学大臣賞(高学年の部)を受章した鹿児島県・阿部恵さんはそれぞれ4分間、作文を手にしたままで暗唱した。木住協関係者は「何回も参加しているが、暗唱するのを見たのは初めて」と感嘆の声を上げた。

◇       ◆     ◇

 前段で書いたが、応募作品が激減したのにも驚かされた。昨年は6年連続の2万点超の22,778点だから、今回は半減以下だ。各ブロック賞を含め表彰・受賞した35作品を都県別にみると東京、神奈川、埼玉、大阪、名古屋などの大都市はゼロで、各4作品の群馬、静岡、千葉など21県しかないのも気になった。〝山林王〟諸戸林業を擁し、平成30年度農林水産祭で速水林業の速水亨・速水紫乃両氏が夫婦連名で天皇杯を受賞したわが三重県は作文コンクールに縁のないのはどうしたことか。

 その理由を木住協関係者は、「われわれも驚いている。手を抜いたわけではない。その逆で、取り組みやすいテーマにした。先生の長時間労働が問題となり、働き方改革が進められていることと関係があるのかどうか」「わたしにも子どもがいるが、子どもも先生も負担を減らそうという動きはある」「他の作文コンクールも応募が激減しているという情報もある」などと話した。市川会長も「原因を分析する」と語った。

 なにも知らない記者は言葉を慎まなければならないが、母語(日本語)を読む・書く・朗読することは教育・人格形成の基本ではないのか。「負担を減らす」のは分からないではないが、この基本までも減らしたら思考力はどうなるのか。教育現場で何が起きているのか、何が終わったのか。

 

応募2万点超 木住協 第20回「木の家・こんな家に住みたい」作文コンクール表彰式(2017/10/29)

 

 

 

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