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2018/12/14(金) 15:01

どうなる分譲マンション・戸建て市場 独断と偏見の私論

投稿者:  牧田司

 

マンション・一戸建て 着工戸数推移.jpg

 ことしもあとわずか。皆さんは今年1年間はどのような年だったでしょうか。わたしは〝古稀〟を目前にしたこの1年間を恙なく過ごし、どれだけ人の役に立ったか立たなかったかは分からないが、そう呼べるなら〝愛〟を込めて記事を書いたつもりだ。以下は、1年というよりもう少し長いスパンでマンションと分譲戸建て(建売住宅と呼びたいのが嫌う人もいるので分譲戸建てと呼ぶ)市場について考えてみた。独断と偏見に満ちた私論として読んでいただいて結構です。

◇         ◆     ◇

 別表は、ここ20年間の全国のマンションと分譲戸建ての住宅着工戸数の推移をみたものだ。周知のとおり、マンションは平成20年(2008年)のリーマンショックの影響で中堅マンションデベロッパーが軒並み退場を余儀なくされ、中堅が地盤・ターゲットとする第一次取得層向けの物件供給が激減。21年の供給量はそれまでの2分の1から3分の1まで落ち込んだ。最近はやや回復しつつあるとはいえ、戸数的には低空飛行を続けている。

 その一方で、分譲戸建ての着工戸数はリーマンショック後の21年は若干減少したもののすぐ取り戻し、ここ数年間は12~13万戸台を維持している。

 この結果、着工戸数は分譲戸建てが分譲マンションを上回るという逆転現象がここ数年続いている。マンションと分譲戸建ての比率も従前は6:4だったのが、いまは逆だ。

 問題はこの先どうなるかだ。まずマンション。少子化・高齢化、人口減少社会へ突入し、ストック活用の流れも加速していることなどを考えると、年間10万戸を維持できるかどうかも疑わしく、漸減傾向をたどるのは間違いない。大手の寡占化は一層進む。

 首都圏では三井、三菱、住友、野村の4強がしのぎを削り、あるいはまた手を握り市場をリードしている。この流れをせき止め、劇的に変えるのはどこかと考えもするのだが、残念ながらその兆しはない。

 オリックスの軍門に下った大京も失地を回復するのは至難の業だろう、売上10兆円企業を目指す大和ハウスと連携すれば4強の一角を崩すことができるのではないかと思うが…。

 他の電鉄系、商社系なども寄らば大樹の陰とばかり大手連合にぶら下がろうと懸命になっているとしか思えない。

 となると、あとはもうこれらの4強が手を出さない中小規模や外周部の〝隙間〟〝空白区〟を埋めるしかなく、あるいはまた突出した商品企画でもって鼻を明かす元気なデベロッパーの活躍に期待する以外ない。

 このように分譲マンション市場は先が読める。分からないのは分譲戸建て市場だ。理解不能の異様な展開を見せている。

 表でもわかるように、リーマンショックの大混乱に乗じて平成21年度に着工戸数でマンションを逆転すると、一度は再逆転を許したが、その後は再びリードを奪い、その差を広げつつある。

 その立役者は飯田グループホールディングスだ。2013年に一建設、飯田産業、東栄住宅、タクトホーム、アーネストワン、アイディホームの6社が経営統合したころは、企業風土が異なるので成功に記者は懐疑的だったが、その後は建売りの雄として玉座に座り続けている。2018年3月期の売上高は1兆3,353億円、戸建分譲事業(土地売含む)は44,275棟。戸数は全国市場の実に30%を占めるガリバー企業だ。営業所がないのは富山、鳥取、島根、高知、大分、宮崎の6県のみ。全国制覇は時間の問題だ。

 同社の強みは何といっても販売価格の安さだ。1棟単価は飯田産業と東栄住宅が3,000万円を超えるが他は3,000万円以下で、一建設は26.1百万円、アーネストワンは23.3百万円。三井不動産レジデンシャルの1棟単価60.2百万と比較するとほぼ3分の1だ。

 価格競争になったら、飯田に勝てる企業は皆無だ。同社ホームページのヘッドコピーは〝誰もがあたり前に家を買える、そんな社会にしたい〟-〝家〟とは何かはさておき、これに異論を唱える人はいない。飯田の独走はこれからも続くのか。

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◇       ◆     ◇

 この20数年間、記者の頭を悩ませているのが、マンションや戸建ての若年需要者の消費動向・物件選考の基準が分からない、はっきり言えば理解不能ということだ。

 住宅ローンの支払いを終えた団塊世代がより利便性の高い駅近・都心のマンションを志向するのは分かりやすい。自分もそうだ。しかし、ミレニアル世代やバブル後世代、ゆとり世代は何を考えているのかさっぱり分からない。

 そうした層を対象にした住宅選好に関するアンケート調査が行われており、

 「戸建て志向が強い」「現実的な思考をする」「価格を優先する」などと言われても釈然としない。これらは今も昔も変わらない。戸建てを持ちたいが、買えないからマンションにしたり中古にしたり、価格を優先したりして寸詰まりの基本・居住性能が劣るのを承知で購入する。ましてや世帯年収の低い若年層にとって選択の余地はない。

 そもそも、アンケートなるものの信ぴょう性が疑わしい。集計した数を足して割って平均値を出したところで、きわめて個別性が高い不動産に関する考え方など分かるはずがない。ダイコンやニンジンを買うのとはわけが違う。

◇       ◆     ◇

 とはいえ、デジタルネイティブ=ミレニアル世代の意識、消費志向を探るのはそれなりに意義のあることだとは思う。平成2年のバブル崩壊を境に世の中が暗転したのは紛れもない事実で、経済社会の激変は消費者の消費動向にも大きな影響を与えたからだ。

 労働者派遣法が施行されたのは昭和61年で、その後「非正規雇用」が激増した。「専業主婦世帯」と「共働き世帯」が逆転したのも平成4~5年だ。厚労省が「ニート」なる言葉を使ったのは平成16年だ。昔はそんな言葉すらなかった「フリーター」は現在150万人もいるという。「格差社会」「ワーキングプア」なる言葉も一般化した。

 このほか、あらゆるデータも社会が変わったことを証明している。例えば出版物。売上高はこの20年間で35%、約8,700億円も減少した。自動車の国内需要もこの20年間ほぼ一貫して減り続けている。百貨店・スーパーも同様だ。

 グローバリズムの進展とネオリベラリズムの台頭は、この先も若年層にとっては生き辛い世の中になるのは容易に想像できる。

 そうした層が分譲住宅市場では主役になりつつある。どのような住宅を選ぶのか注意深く見守りたい。当面は消費増税が吉となるか凶となるか注目したい。デフレ脱却がまた先送りになるのだけは回避してほしい。

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