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2019/03/02(土) 15:04

整合性欠く「風致地区」と「準住居」指定 三菱地所レジ 初の老人ホーム「永福」

投稿者:  牧田司

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「チャームプレミア永福」

 昨日は〝後入れ先出し〟のコスモスイニシア「旗の台」の記事を書いた。今度は〝先入れ後出し〟の三菱地所レジデンスの介護付き有料老人ホーム「チャームプレミア永福」を紹介する。完成見学会が行われたのは2月27日なので、鮮度は落ちるかもしれないが、濃い口の味付けにした。

 物件は、京王井の頭線西永福駅から徒歩9分、杉並区永福4丁目に位置する準住居・風致地区の敷地面積約1,164㎡、延床面積約2,578㎡、地下1階地上5階建て全48室。土地・建物とも賃借(契約期間30年)。居室面積は19.95~40.23㎡。権利形態は利用権方式、利用料の支払いは選択制。前払い金ゼロの場合の料金は約60万~125万円。事業主体はチャーム・ケア・コーポレーション。設計・監理は日建ハウジングシステム。施工は谷津建設。3月に開業する。

 施設は三菱地所レジデンスのヘルスケアアセット開発第一号で、チャーム・ケア・コーポが運営する高齢者向け施設の最上級ブランド「チャームプレミアム」シリーズの首都圏で5カ所目。地所レジは一定期間所有したのちリートなどへ売却する予定。ヘルスケアアセットは今回のほか5物件の計画を推進中。

 現地はトウカエデの街路樹が美しい方南通りに面しており、建物デザインにも従前の個人宅(2邸)にあった景石や灯篭を用い、保育園との交流を企画するなど地域との親和を図っており、内装に美大生などの絵画・アートを展示する。

 見学会に臨んだチャーム・ケア・コーポ代表取締役社長・下村隆彦氏は、「現在、51ホーム約3,600室を3ブランドで展開しているが、アッパーミドル・富裕層向けの『チャームプレミアム』は首都圏で5カ所目。従来は関西中心だったが、今後は富裕層が圧倒的に多い東京圏で積極展開する。来期に開業予定している10ホームのうち首都圏は8ホームで、5ホームは『チャームプレミアム』」などと語った。

 三菱地所レジデンス常務執行役員・花形雅人氏は、「損益が荒れる分譲よりマーケットが安定している賃貸や学生寮、シニア向けなど成長が見込める領域を拡大し第二の柱に育てていく。当面は売り上げの巡航目標を80億円に設定している」と話した。

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花形氏(左)と下村氏

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エントランス・ラウンジ

◇       ◆     ◇

 やや視点を変えて、「風致地区」と「準住居地域」との整合性について。見学会で三菱地所レジデンスの投資アセット開発グループリーダー・勝俣耕希氏は、分譲や賃貸マンションではなく今回の施設にした開発の経緯についておおよそ次のように語った。

 当地は建ぺい率40%の風致地区に指定されていること、駅から10分の距離、隣接地は1低層で保育園、競合物件がない、高年収の富裕層が周辺に多い-などを総合的に判断、「チャームプレミアム」にふさわしい建物にするために日建ハウジングシステムを採用した。

 説明は極めて明瞭だった。しかし、小生は1階の食堂兼機能訓練室の天井デザインは優れているのに、どうして低いのか気になってしょうがなかった。確認したら2400ミリだった。

 同業の記者は「みんな目線が低い車椅子だからこれでいいんだ」と冗談を飛ばしたが、小生は逆だと考えた。目線が低いからいつも上を見る、何か事情があると。

 なぜ、天井高が低いのか。すぐ答えが出た。和田堀風致地区は昭和8年に指定された。建築規制には建蔽率は40%以下、道路側からの壁面後退(2m)、隣地側からの壁面後退(1.5m)、高さ15m以下などがある。天井高が低かったのはこの規制のためだ。

 一方で、ここの用途地域は「道路の沿道等において、自動車関連施設などと、住居が調和した環境を保護するための」準住居地域(建ぺい率60%、容積率300%)に指定されている。

 準住居の用途規制は、業界関係者ならお分かりのように、ラブホテルなど風俗系は許可されない商業や準工ほどではないにしろ〝ほとんど何でも可〟の地域だ。

 どうして何でも可の用途地域に風致地区の網をかけるのか、記者には理解できない。整合性がまったくないではないか。

 一つ付け加えると、今回の施設は緑化率30%を確保しているため建ぺい率緩和を受けており、準住居の60%と風致地区の40%の間の4分の1だけ、つまり45%まで認められている。ただ、風致地区には容積率についての定めはなく、上記の規制をクリアしなければならないので、使用容積率は221%しかない。

 小生は、記者になって初めて担当したのが線引きだった。白地図に何のためらいもなく色付けしていく職員を見て、用途指定はでたらめだと思った。

 風致地区と用途指定は別々の部署で行う。現場では戸惑いもあると聞く。線引きは抜本的に見直すべきだ。高さ規制も同じ。

 ついでに風致地区内にある高千穂大学を調べたら、(緩和措置はあるはずだが)建ぺい率は50%で容積率は100%、全ての建物が4階以下だった。すごい大学もあるもんだ。

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中庭

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食堂

◇       ◆     ◇

 同社の初のシェアハウス「ザ・パークハウス レックス 永福町」でもそうだったが、共用部には東京藝大の学生さんなどによる絵画・アートがたくさん飾られていた。将来大化けしそうな画家の卵もたくさんいると感じた。

 下村社長(76)は絵画収集の趣味があるようで、絵画・アートは各施設でそれぞれ入れ替え・巡回する予定とか。

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記者の一押し作品

◇       ◆     ◇

 この種の施設を見るのは初めてという女性記者がいて、料金の高さに驚いていたので、「あなたの生活レベルで考えちゃダメ。富裕層向けの介護・サービス料金として月額100万円は相場」とアドバイスした。

 これほど規制の厳しいエリアでは、この種の事業でないと利益を確保するのは困難ではないか。

 チャーム・ケアは、渋谷区神山町で同じような富裕層向け介護付有料老人ホーム「(仮称)チャームプレミア松濤」(日神不動産が開発)を2019年8月にオープンする。

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檜風呂

壁面にアートがいっぱい 三菱地所レジ 初のシェアハウス「永福町」完成(2019/3/1)

 

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