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2019/03/05(火) 15:05

Low-Eがあるのに床暖房はオプション 大京「鶴瀬」の商品企画は正解か

投稿者:  牧田司

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「ライオンズ鶴瀬グランフォート」完成予想図

 大京が分譲中の「ライオンズ鶴瀬グランフォート」を見学した。駅から徒歩7分の全81戸で、昨年12月から販売を行っており、これまで約半分が分譲済みと好調。商品企画はどうあるべきか、記者は何を伝えるべきかを改めて考えさせられたマンションでもある。

 物件は、東武東上線鶴瀬駅から徒歩7分、富士見市鶴馬1丁目に位置する12階建て全81戸。竣工予定は2020年3月13日。先着順(12戸)の専有面積は63.98~75.78㎡、価格は3,270万~4,190万円(最多価格帯3,500万円台)、坪単価170万円台。設計は安宅設計。施工は穴吹工務店。

 現地は、道路の拡幅工事を中心とする区画整理事業が進行中のエリアの一角。徒歩2分に公園、徒歩16分に「ららぽーと富士見」がある。

 建物は菜園スペース付きの南南西向き。主な基本性能・設備仕様はリビング天井高2400ミリ、二重床・二重天井、ダブルアウトポール、Low-Eガラス、換気機能付きドア、グリーンカーテン、御影石キッチン天板など。「いきもの共生事業所認証」を取得している。

 昨年12月から販売を開始しており、これまでに約半数が販売済み。

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クローク

◇       ◆     ◇

 この物件の存在すら知らなかった。見学取材するきっかけを与えてくれたのは先週号の「週刊住宅」だった。このマンションが3段見出しの記事として扱われており、坪単価は「170万円程度」(同社によると170万円台)で、商品企画プロジェクト「ライオンズリビングラボ」の新たな収納提案「LASSIC SPACE」(ラシックスペース)と洗面空間「SKITT&SMART」(スキット&スマート)を導入したのが好評と報じられていた。

 記者は、いま当たり前になっているキッチン、洗面室、トイレなどの収納提案の先駆けは同社だと思っている。これに新たな提案が加わったのなら見なければならないし、坪単価170万円でどの程度の設備仕様レベルが保てるのかもチェックしなければならないと考え、取材を申し込んだ。

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モデルルーム

◇      ◆     ◇

 約75㎡のモデルルーム主寝室に提案されていた「LASSIC SPACE」は〝ここまでやるか〟と思えるほどよくできていた。収納棚が自由自在に動かすことができ、小物を置けるスペース、消臭クロス、色の再現性の高いライト、姿見などがあり、デッドスペースなどほとんどない。主婦は小躍りするはずだ。

 Low-Eガラスの採用にも〝さすが大京〟と驚嘆した。坪単価170万円台の郊外物件でLow-Eを採用したマンションはあったか。まずないはずだ。同社は極力標準装備するようにしているという。そのほか、同社の〝おはこ〟パッシブデザインも盛り込まれている。

 だが、しかし、よかったのはここまで。あとは首をかしげざるを得ないものばかりだった。

 いちばん驚いたのは、リビングに床暖房が入っていなかったことだ。販売事務所の光熱費を削減するために床暖房を切っているのかとも考えたが、図面には記載がなく、同社に確認したところ「オプション」だった。

 いまのマンションで床暖房がオプションというのはほとんどないのではないか。(この日は寒かったので気が付いた。そうでなければ当たり前の床暖房などチェックしない)価格を抑える=購入者の負担を軽くするための企画であるのは分からないではないが、なんでそこまでと考え込まざるを得ない。同社は「(建設後)変えられないところを最優先した。当社は地方を含めほぼ全ての物件にLow-Eを採用している」と説明している。

 これで坪単価の安さに納得したのだが、正直、〝ライオンズ〟(記者は60年来のライオンズファン)〝グランフォート〟(これは難攻不落の城塞とでも訳するのか)のブランドが泣くと思った。かつて〝量の大京から質の大京へ〟とも書いた。あれは間違いだったのか。どこもやらないことをして、どこもやることをしない-これは正解か。皆さんも考えていただきたい。

 もうこれ以上書かない。同社に限ったことではない。マンションの質の低下は目を覆いたくなるほどひどい。同社の「リビングラボ」について書いた記事をいくつか紹介する。ぜひ読んで頂きたい。あれから10年以上が経過する。同社の商品企画担当部署には当時のメンバーはほとんどいないのではないか。

 「週刊住宅」の「鶴瀬」を書いた記者の方に。貴殿・貴女が坪単価を書かなかったらスルーしていたかも。感謝申し上げるが、いったい駅の対面で販売されているマンションの坪単価はいくらかご存じか。エリアの相場を把握していないといい記事は書けないですよ。

 こうなったらついでだ。「書かないで」と言われているが書く(本人も読まないはずだ)。ここで書くことは全てのデベロッパーの商品企画にも参考になるはずだ。

 記者は昨年の首都圏ベスト3マンションのひとつにポラス「浦和美園」を選んだ。単価はべらぼうに安いのにスペックはフル装備していた。もちろん床暖房も(Low-Eはさすがにないが)。

 しかし、引き戸がソフトクローズ機能付きでなかったのに対して(記者も見落とした)、同社の関係者は「なぜだ」と不満を漏らした。この声はマンション担当者にも伝わっているはずだ。部署間の風通しがいいから商品企画がよくなる。

 その「浦和美園」が160戸も売れているのにびっくりした。販売開始8カ月でだ。

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