三井不動産は6月5日、東京2020 オリンピック・パラリンピックエンブレムを制作した美術家・美術家 野老(ところ)朝雄氏を迎えたデザイントークイベント「個と群と律~紋と文様の話~」を開催。野老氏がエンブレムに込めた思い、制作過程などについて語ったほか、野老氏も参加して日本橋をテーマに「街を表現する暖簾」と「企業を表現する暖簾」を制作・展示するイベントの講師陣によるトークセッションを行った。日本橋に所在する企業関係者約70名とクリエイター約30名が参加した。
「個と群と律」をテーマに語った野老氏は、エンブレムは三角定規とコンパスがあれば子どもでも制作できる「組市松紋」手法を用い、大・中・小の四角形3個を基本に45個のピースを回転させたりして円形にデザインしたもので、オリンピックとパラリンピックを同じ個数にしたのは「平等」を、多くのパターンを用いたのは「多様性」を表現し、組織委員会の要求に応えたことなどを話した。紋の生地にも使われる藍染めについても熱い思いを語った。数学者の計算によるとエンブレムのパターンは237億通り以上もあるそうだ。
「街を表現する暖簾」と「企業を表現する暖簾」のトークセッションでは、波戸場承龍氏が「麒麟」をモチーフにした暖簾を参考に、判じ絵や見立て紋などの紋の文化について語った。
また、中村新氏は「弥生時代を起原に江戸時代に完成した紋はいかにも日本らしい文化。無形の財産」と語り、戸田宏一郎氏は「〝広告は企業の窓〟暖簾はつくったことがないが、難しそうだが奥行きも感じる。内と外をつなぐ新しい装置に挑戦したい」と述べた。
矢後直規氏は「ラフォーレ原宿ではカラフルな広告を手掛けたが、いま、ものすごい量の日本橋に関する本を読んでいる。とてもやりがいを感じる」と意欲を見せた。
参加するデザイナーを一般公募することから講師陣は「既成概念をぶっ壊すような大胆な提案をしてほしい」(戸田氏)「別の視点、とっぴな発想に期待」(中村氏)「紋は白と黒と線が基本。その単色の世界を表現してくれると嬉しい」(波戸場耀次氏)「日本橋のイメージを塗り替え、次代の日本橋が見られるようなものがいい」(矢後氏)などとエールを送り、司会役を務めた朴正義氏は「昨年のイベントではクリエイターが企業と繋がることができた。野心をもってアイデアをぶつけてくれたら嬉しい」と呼び掛けた。
「企業を表現する暖簾」には約30社の企業が名乗りを上げている。
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記者は昨年の日本橋「未来ののれん展」を取材している。ものすごく面白かった。前回の参加企業は数社だったが、次回は30社にも達するという。どのような暖簾が出来上がるか、いまから楽しみだ。
野老氏は三角定規とコンパスがあればエンブレムは作図できると話したが、記者はとっさに正七角形を思い浮かべた。円周(360度)を7で割っても整数にならないではないか。となると、各辺の長さが同じで各頂点が正円に接する正七角形は出来ないと思う。
なのに車のホイールには七本の軸(線)があるのはなぜか。七福神、七色の虹、セブンイレブン、女性セブン、七人の侍、ラッキーセブン、七味唐辛子、七つの大罪、七宝、七曜日、七転び八起き、七つの子…小生は割り切れない。野老さんはこれをどう説明するか聞きたかったが…。