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2019/07/11(木) 17:41

元ヒューザー社長・小嶋進氏 「耐震偽装」「国家権力による偽装」熱く語る

投稿者:  牧田司

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小嶋氏

(下線は小嶋氏が加筆訂正したものです。小嶋氏の想いを伝えるため、ほとんど手を加えておりません)

 元ヒューザー社長・小嶋進氏が7月8日、「REB-1000」(清水修司理事長)主催のセミナー&情報交換会の特別講演として「今だから話せる耐震強度偽装問題の真相とその後」について約2時間10分にわたり熱弁をふるった。国家権力の「偽装」に対する非力さ、自らの馬鹿さ加減について、時に声を詰まらせ、震わせる小嶋氏の話に、通常よりはるかに多い約300名の参加者は聞き入った。生々しい部下とのやり取りを記録した録音テープも公開された。

 小嶋氏は、「わたしの馬鹿さ加減がこのような事態を招いた」と切り出し、「東京拘置所に収監されていた329日間は誰とも話せなかった。なんの悪いことをしたのか分からず、世の中は不条理で成り立っていることをつくづく感じさせられた」と語り、耐震偽装マンション購入者に対し「申し開きできない。まことに申し訳ない」と謝罪。

 「グランドステージ藤沢」の施工を担当したために破産に追い込まれた元木村建設社長・木村盛好氏にも謝罪し、「国交省公表後2営業日後にはメイン銀行の預金凍結により強制不渡り破産となった、がその後、破産管財人が和解金17億円をメイン銀行から回収した事実により木村建設はすぐにでも倒産する会社ではなかった」と国や銀行などを批判。

 「木村建設不渡りの5日後には藤沢マンションの元請設計の森田一級建築士が稲村ケ崎で溺死体となって発見された。その遺書と同じ書体で11月14日に藤沢市役所担当者と『どこが間違っているのか指摘してほしい』との打合せ記録の報告書がある。小嶋詐欺罪証拠の一つ『10月27日イーホームズ指摘によって危険性を知ったうえで翌28日の藤沢引渡しを中断しなかった』との検察主張に対して、イーホームズは藤沢などの竣工検査済物件に対しての指摘がなかったことを証言する元請け設計士が亡くなった。

 そして北海道㈱晃研深川氏が耐震構造改修図面8棟のうち4棟を作成提出後にレンタカーで海釣りに行き、堤防に駐車しようとバックしてそのまま海中に転落して溺死してしまった」

 「329日間投獄後の2006年4月に保釈されたときには、ヒューザーもジャスティも個人も破産、瑕疵担保責任の連帯保証人である木村建設も消滅、元請けの森田一級建築士も耐震構造改修図作成の深川一級建築士もすべて消えていた」

 「こうして小嶋は丸裸となり耐震強度補強による瑕疵担保責任が果たせなくなった。結果、詐欺(2項詐欺)罪が確定した。これらは偶然の出来事なのだろうか」などと語った。

 一方で、イーホームズ・藤田東吾社長に対して「これまで66年生きてきて最悪な日本人」と怒りをあらわにした。「新聞記事などにより都議に献金400万円をしながら2700万円の虚偽増資によって資本金を5000万円とし、2002年3000万の売上を2004年には11億円に伸ばしたが、月間1300件から1700件の申請案件に対して構造担当の検査資格者はわずか2名のみで無審査だった。イー社存続のためにヒューザーを『耐震偽装は心の犯罪。一番儲かるのはデベロッパーであり、身の危険を顧みずヒューザーに乗り込んだ。民間確認検査機関だからできたことであり、悪を糺して公表した第一発見者であることを評価してほしい』と国会の場で目の前で語っていたので『何言ってるんだよ、この野郎』とどなってしまった」

 小嶋氏は破産管財人が作成した資料を投射しながら「収支計算書」における収入がヒューザーは50億3600万、ジャスティホームは3億9700万、小嶋個人(申告資産)7500万円の合計が55億に対して、「配当表」における総額約55億9000万円とは計算が合わない(収入金額を配当額が越えることはあり得ない)ことや、管財人が業務報酬としてヒューザーから3億4570万を受領しながらほぼその同額3億5000万円をジャスティホームの破産債券としてダブル記載したことを報告した。

 一方ジャスティ破産配当ではヒューザーへの破産配当1億950万を除いた配当金2億9780万円からグランドステージ藤沢の配当金1億8830万円を差引いた1億950万円を管財人「配当」としたことによって、破産管財人の収入総額は6億円相当(2社業務報酬4億4750万円+配当1億950万円+小嶋個人推定額)となることを明らかにした。

 管財人に破産関係書類の開示を求めたが「期限が過ぎたので破棄した」として協力してもらえなかったことを付け加えた。

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「REB-1000 セミナー&情報交換会」代々木・SYDホールで)

 ◇       ◆     ◇

 実は、事件が発覚する直前、小嶋氏をRBAタイムズで取り上げることが決まっていた。取材の数日前だったか、小嶋氏から「牧田さん、歯が痛くて喋れない。キャンセルしてくれないか」との連絡が入った。

 そのまま大事件となり、小嶋氏が逮捕されて取材する機会を失った。取材が実現し、新聞を発行していたら弊紙も記者も袋叩きにあっていたかもしれない。

 当時、小嶋氏はもっとも好きなデベロッパーの社長だった。記者が理想とする〝普通のサラリーマンが無理なく買える100㎡(30坪)マンション〟をたくさん供給していたからだ。商品企画を褒める記事を書いてエールを送った。

 また、小さいころの夢は小嶋氏が総理大臣で、記者が農林大臣だったことなど、お互いが田舎育ちの世間知らずで、その馬鹿さ加減を自慢しあったこともあった。100㎡マンションは序の口に過ぎず、150、160㎡に挑戦するとも聞いていたので、それを楽しみにしていた。

 少しは小嶋氏の性格を知っていたので、事件が発覚したときも「小嶋氏は絶対知らなかったはずだ」という確信はあった。

 ただ、小嶋氏が国家賠償請求訴訟を起こそうという気になったのは分からないではないが、法律の無謬性に反旗を翻すのは無謀というものだ。大変失礼だが、小嶋氏も甘い。しかし、如何なる大地震災害に対しても被災した個人住宅に国庫支出しなかった国が、この耐震偽装事件では緊急対策費用として直ちに80億円の補正予算を可決した。そして微々たるものとはいえ7棟の建替マンションに対して取壊費用や共用部の一部建築資金を助成し、或いは住民の仮住まい家賃や引っ越し費用の補助金として20億程度を拠出した。他にも銀行ローンの金利減免措置を講じたことなどは、国が確認制度の欠陥や検査機関の非の一部を認めたことに他ならなない。

 ヒューザー・小嶋氏に提訴された中田横浜市長がコペルニクス的馬鹿者と発言したが、建替えや耐震改修工事は姑息な助成や補助ではなく、小嶋氏が全戸無償で瑕疵担保責任を果たそうと139億円の国家賠償請求を提訴したことは動かしようのない事実。地動説を唱えた聖人を引合に出した横浜市長の意図は不明だが、耐震偽装事件の本質(制度の欠陥)と事件の対応(個人犯罪に矮小化)が地動説から500年後の現代において法治国家の体を成していないことの証左というべきである。

 マスコミの責任について。検察の「姉歯+建築会社+ヒューザーによる組織犯罪」というシナリオ通りにマスコミが動いたのは紛れもない事実だ。

 記者は事件が発覚してから取材を試みようとしたが、ある人から「(取材を)やめたほうがいい」という忠告を受けて書くのをやめた。取材を断念するのは忸怩たるものもあったが、所詮一業界紙の記者が徒手空拳で取材したところで大マスコミにはかなわないという諦念もあった。

 この日(8日)、元気な姿で登壇し、いつもの〝小嶋節〟をぶち上げたのに安堵したのだが、生々しい録音テープなどの事実を突きつけられて、国家権力に対する無力感、敗北感を記者も味わわせられた。当初は証拠資料にされなかった録音テープを聞けば、「組織犯罪」でないことは誰でもわかる。

◇       ◆     ◇

 小嶋氏は、自らの著作「擬装 『耐震偽装事件』ともうひとつの『国家権力による偽装』」(発行:金曜日)でもこの日の講演でも、杜撰な建築確認審査制度を厳しく批判している。その通りだと思う。記者も2度ほど取材しあきれ返ったことがある。

 一つは昭和50年代の後半だった。当時、敷地面積が100㎡以下のいわゆる「ミニ開発」が盛んにおこなわれ、自治体は対応に苦慮していた。確認申請業務を担当していたある区役所の担当者は、記者に対して「ミニ開発戸建てのほとんどは何らかの形で建築基準法に違反している」と言い切った。書類さえ整っていれば、そのまま建築確認は許可されるということを知った。

 もう一つは、市街化調整区域内で開発が許可される建基法第34条第1号(1号店舗)が埼玉県で大量に建設され、分譲されている実態を取材したときだ。昭和60年代の前半だった。1号店舗とは主に調整区域内に居住する居住者向けに衣類、食料品、家庭用雑貨、文具、書籍、新聞・雑誌、花・種苗などを販売する小売店のことで、他の都道府県では年間数えるほどしか建設されていなかったのに、同県では100戸単位で開発が許可されていた。これも書類が整っていれば許可されるという不思議な世界があった。

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