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2019/07/27(土) 17:01

平田元会長の独断専行が粉飾決算招く 住宅事業伸ばせ すてきナイス再生に期待

投稿者:  牧田司

 粉飾決算容疑ですてきナイスグループの元代表取締役会長兼最高経営責任者・平田恒一郎(71)ら3名が7月25日に逮捕されたのに衝撃を受けたが、その前日(24日)にすてきナイスグループから発表された本件嫌疑に関する「第三者調査報告書」には、平田容疑者らが有価証券報告書の虚偽記載を指示したことを示す内容が赤裸々に報告されている。

 報告書は174ページにもわたる浩瀚なものだが、冒頭の部分で平田氏の独断専行が嫌疑を招いた要因であり、限りなく〝黒〟であることを匂わせている。引用するのもためらわれるが、二度とこのようなことが行われないよう他山の石にするためにも有益であると判断したので紹介する。

 報告書の第2章「創業家一族の影響力」では次のように述べられている。

 「平田恒一郎氏は、ナイスグループ各社の部長以上の人事権を掌握していた。また、新会社の設立や主要なマンションの販売等多くの事業を自ら指揮ないし監督し、職務の内外において厳しい姿勢で経営にあたっていた。例えば、新築マンションの完成後、未販売物件(完成在庫)が残った場合、完売になるまで会議等において毎回、住宅部門の役員に起立の上謝罪させたり、『清く、正しく、まじめなナイス』という行動規範を示し、自ら定めた『ワイシャツは白』、『役員は喫煙禁止』、『ゴルフ禁止』等の決まりに違反した役員の降格を命じるなどしていた」

 「平成27年3月期においては、何事も平田恒一郎氏の了解を得ずに進めることができない状況にあった。また、すてきナイスを含むナイスグループ各社においては、平田周次氏及び平田恒一郎氏という創業家の意向に反しないようにするという企業風土が醸成されることとなり、特に平田恒一郎氏に対して意見を述べることすら躊躇するような状況となっていた」(28~29ページ)

◇       ◆     ◇

 「ワイシャツは白」の是非はさておき、喫煙も飲酒もゴルフも個人の趣向の問題で、役員だからと言って禁止するのはどうかと思うが、「清く、正しく、まじめなナイス」は小生も何度も聞かされている。これほど立派な行動規範、生き方はない。いつもそうありたいと思っている。

 それだけに、平田氏の言動は信じられない。平田氏は赤字を出すことを極度に恐れていたとも報告書にあるが、有価証券報告書の虚偽記載を指示することの重大さをどう認識していたのか。免震マンションやパワーホーム、CLTの活用などまじめな事業を展開している会社のやることではない。創業社長の息子・穴吹英隆氏が社長を解任され、会社も破綻した穴吹工務店の事例を思い出した。穴吹氏も若いころは腰の低い方だった。

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 粉飾決算の舞台となった平田氏が実質的なオーナーであるザナックを「益出し」として利用したのは否定できないようだ。

 報告書は、ナイスとナイスエストが所有していた土地や店舗、マンション(75室)をザナックに売却し、平成27年3月期に売上高を約30億円、売却利益を約4億円計上した案件では、「すてきナイスでは、連結の範囲に関する会計基準及び実務上の判断基準を遵守して判断していたとは言えず」(40ページ)、「ザナックの本店事務所の面積はわずか7.4㎡であって、そこに設置されている主な備品は、机、キャビネット、会議用テーブルが各1つと椅子6脚のみである」(77ページ)で、入退室は、ナイスからの出向により管理され、預金通帳、実印、印鑑などもナイスが保管し、経理業務もナイスが行なっていたと報告。

 結論として、「実現主義の原則」要件を満たしておらず、会計上認められないと断定している。

 また、「ザナックという会社は、すべての意思決定をナイスが行なっており、主体的に経営を行うような会社ではなく、実質的にナイスグループが自由にコントロールすることができる、いわゆるペーパーカンパニーである。このため、上記の取引はいずれも、ザナックがその合理的な経営計画の一環として主体的に行ったものではなく、ナイスグループが、決算対策のためや、対外的に売却済みであることや他社のマンション計画であることを装うため等、専らナイスグループの目的のために、都合よく財貨の移転が行われたように、法形式を整えたにすぎない」(103ページ)

 「ナイスグループにおいては、直接又は間接に大半の株式を有している子会社でありながら非連結子会社としていた会社に加えて、実質的にナイスが支配して意のままに扱い得るグループ外支配会社が存在しており、とりわけグループ外支配会社には、ナイスグループにおいて取り扱いにくい事業や取引を行わせてきており、そのような非連結子会社及びグループ外支配会社の不適切な利用の一環として、今回のザナック関連案件が実施されたものとみことができる」(175ページ)と指弾している。

 小生は、売れ残りマンションを建設会社や関連会社、取引先に買わせたデベロッパーの話をたくさん聞いているが、このような架空取引は上場会社のやることではないのは確かだ。

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 第三者委員会は、同社の従業員と役員合わせ441名にアンケートを実施し、333名から回答を得ている。

 具体的には、ザナック案件については言及する回答者が一定数あったほかは、①架空売り上げ計上に関与、あるいは役職員が関与したり、指示したりするのを見聞したことがあるのは全体の6%②他の会社との不適切な取引に関与したり、見聞したことがない人は97%③回答者の92%が自ら又は周囲の従業員が、利益追求と比較して、法令や倫理を重視する姿勢を有していると答えた④ナイスグループは法令や倫理を重視する企業文化・企業風土を有している会社だと思っている人は92%⑤上司の指示に法令や倫理の観点から問題があると思われる場合に、それを上司に言える、または上司以外の同僚に相談できる企業文化・企業風土があるか否かの質問に対しては、あまりないと答えた人は33%、ほとんどないと答えた人は5%-などが報告されている。

 この結果に記者は安堵した。当然のことではあるが、92%の従業員も役員も「ナイスグループは法令や倫理を重視する企業文化・企業風土を有している会社」だと思っていることは、この会社は健全であることを示しているし、今回の事案を経験したからだろうが、法令順守に関する社内研修・教育体制の充実を求める声が37%あるのにも納得した。

 すてきナイスグループは、この報告書も参考にしながら再生の道を歩むことになる。杉田理之社長は存じ上げないが、取締役の木暮博雄氏(前社長)はRBA野球大会に出場され、監督としても采配を揮っていた方だ。

 今の野球部もベテランと若手が機能するいいチームだ。ナイスのいいところである〝アットホーム〟な風土を引き継いでいる。選手の皆さんには、野球部が主導して会社を元気にする気構えでこの難局を乗り切ってほしい。

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 小生の取材フィールドである分譲住宅事業についてひとこと。同社の何よりの強みは地域を熟知している人材だと思う。同社はワンストップで様々なお客さんのニーズに対応するため、分譲と仲介・賃貸の垣根を取り払い、人的交流を進めている。これはやがて花を開くはずだ。

 その人材からして同社の分譲事業はもっと伸ばせる余地があると思う。同社グループの2019年3月期の住宅事業の売上高は637億円で、内訳は戸建てが298億円、マンションが92億円、管理が246億円だ。一方で、営業利益は3億円で、売上高営業利益率は0.5%にしか過ぎない。ほとんど儲かっていないことになる。同規模の他社は4~5%は確保しているのと比べ極端に低い。

 マンションも戸建ても同社が基盤とする横浜・川崎を中心とする神奈川県の競争は厳しいが、利益を生む事業に転換するのはそう難しいことではないと思う。

 何よりも、「お客様の素適な住まいづくりを心を込めて応援する企業を目指す」経営理念はどこにも負けないからだ。この理念の具現化こそ免震マンションだ。免震マンションの供給実績7,471戸に上り、首都圏ではナンバーワンだ。

 ただ、免震だけでは勝てない。最近のニーズを考えると立地条件に恵まれた用地の仕入れは必須要件で、商品企画の充実を図らないと生き残れない。基本性能・設備仕様レベルを向上させ、競争力を高めるべきだろう。商品企画では、コスモスイニシア、大和地所レジデンス、モリモトなどは参考になるはずだ。

 地域の有力企業などと連携して街づくりなどに注力すれば年間500戸、250億円くらいには伸ばせるのではないか。

 戸建てはよく分からないのだが、年間700~800戸というのは限界ではないか。背伸びしないでいただきたい。圧倒的な価格競争力がある飯田グループと競うのは容易なことではないし、大手デベロッパーなどとの競合も避けられない。長期優良住宅「パワーホーム」は大きな武器なのだろうが、何かが欠けているようにも思える。現場を取材して、その何かを探りたい。

 CLTはこれから伸びる。先駆企業として事業拡大が望める。「木造ゼネコン®」のトップランナーになれるはずだ。

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