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2019/10/12(土) 13:53

総合的な街づくりに高い評価 積水化学 初のスマート「あさかリードタウン」

投稿者:  牧田司

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お披露目式フォトセッション(左から東京セキスイハイム社長・岡田雅一氏、積水化学工業代表取締役・加藤敬太氏、富岡氏、髙下氏、神吉氏)

 積水化学工業は10月11日、同社初の複合大規模タウン「あさかリードタウンお披露目式」を開催。同社代表取締役社長・髙下貞二氏や朝霞市長・富岡勝則氏などが出席してセレモニーを行ったほか、全戸にレジリエンス機能を搭載した戸建てモデルハウス、サステナブルなまちづくりを紹介する「SEKISUI Safe&Sound Gallery」などを報道陣に公開した。

 「あさかリードタウン」は、東武東上線朝霞駅バス5分徒歩3分、朝霞市根岸台三丁目に位置する開発面積約72,544㎡。同社の工場跡地で、全131区画からなる「スマートハイムシティ朝霞」のほかマンション212戸、商業施設「CAINZ」、保育施設2カ所、有料老人ホーム・賃貸住宅「あさかヴィレッジ」、クラブハウスなどが整備される。

 今年1月に設立したセキスイタウンマネジメントが手掛ける第一弾でもあり、「Safe&Sound:安心・安全で、環境にやさしく、サステナブルなまち」をコンセプトに掲げ、同社グループの製品・サービスを102品目採用するなどグループの総合力を結集。街全体の安心・安全を確保するため電線・水道管の地中化、大雨時の浸水を防ぐクロスウェーブ、雨水貯留管を地下に集約するなどインフラ整備に力を入れている。

 地域と社会課題解決、SDGsに貢献する様々な取り組み・製品提供も行う。街の25%を緑化する取り組みが評価されABINC認証を取得している。

 「SEKISUI Safe&Sound Gallery」のユニットは、同社グループ会社が施工した福島県郡山市の応急仮設住宅を譲り受け、再利用している。

 戸建て街区「スマートハイムシティ朝霞」は、これまで供給した停止条件付宅地分譲40区画が全て完売、分譲戸建て90戸のうち27戸が成約済み。土地面積は約130㎡以上で、建物面積は約110㎡以上。分譲戸建ての建物は軽量鉄骨造(全体の3分の2)と、木質系ユニット住宅(同3分の1)2階建て。価格は宅地が坪約40万円、分譲は5,000~5,500万円が中心。床は挽板、和室には樹脂畳を採用している。リビング天井高は2400ミリ。

 全戸に全戸太陽光発電システム、蓄電池を搭載するほか、「飲料水貯留システム」を採用。断水時に3日間(24ℓ)の飲料水を確保する。

 お披露目式で髙下社長は、「1953年(昭和28年)に関東初のプラスチック工場として稼働してから62年の2015年に幕を閉じ、安心で安全、防災減災、健康で快適な持続可能な街づくりを当社グループの総力を結集して進めてきた。ESG経営の根幹にあるSDGsにも貢献できるよう化学の力との融合も図った。当社初のスマートタウンの第一歩をスタートさせた」と挨拶。

 富岡市長は、「これまで60年以上にわたって市の発展に貢献してきた工場跡地が先進的技術を投入した新しい街に生まれ変わるのは、当市の『自然・環境に恵まれたまち』『子育てがしやすいまち』『安心・安全なまち』『つながりがある元気なまち』という4つの基本コンセプトに合致するもの」と祝意を述べた。

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髙下氏(左)と富岡氏

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両氏の挨拶・祝辞が終わったころ激しい雨が降ってきた(参加者には合羽や傘が配布された)

◇       ◆     ◇

 どのような街になるか楽しみにしていたのだが、高下社長も強調したように、街づくりのインフラ整備には相当な力が注がれていることを確かめることができた。「飲料水貯留システム」は初めて見た。原理的には井戸水を釣瓶でくみ上げるのと一緒で単純なものだが、水道水をどのように貯めて取水するのかその仕組みはよく分からなかった。

 街の安心・安全・防災の取り組みでも、近くに流れる黒目川が氾濫しても住宅地が浸水しないよう川に近い地盤を約2mかさ上げし、約12mにわたって緩やかなひな壇造成も行っている。

 好調な売れ行きにも驚いた。宅地の分譲開始が今年2月、分譲戸建ては4月。分譲戸建ての価格はエリアの相場より1,000万円から1,500万円も高い。にもかかわらず67区画を成約した。この販売スピードは「想定の1.5倍」(同社住宅カンパニープレジデント・神吉利幸氏)だという。総合的な街づくりが評価されたのだろう。

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雨水貯留管

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飲料水貯水システムイメージ図(自転車の空気入れのようなもので取水する)

◇       ◆     ◇

 見学会で感じたことをいくつか指摘したい。

 他の記者の方が質疑応答で「ものすごく安い」と称えた。もちろんフルスペックだからという意味が込められての発言だとは思うが、小生は逆だと思う。同社の担当者にも確認したのだが、朝霞駅からバス便の分譲戸建ての相場は4,000万円前後で、アッパーでも4,500万円だ。5,000~5,500万円という価格設定は正気の沙汰ではない。設備仕様レベルを上げて売れるのなら問題はないが、いまの市場はそうではない。ユーザーの購買力は上がっていない。常に価格下げ圧力がかかる。だから、どこのハウスメーカーもデベロッパーも設備仕様レベルを下げ、価格を下げようとする。

 〝ものすごく高い〟のによく売れているのは、ハイスペックが支持されたということだろう。果たしてこれがどこでも通用するかどうか。この前取材した三井不動産レジデンシャル&三菱地所レジデンス「稲毛海岸 美浜の杜シティ」は4,500万円台中心だ。記事を添付したので比較して読んで頂きたい。

 もう一つ。報道陣からは朝霞市初の「電線の地中下化」を称賛する声が上がった。小生もそう思うが、電線の地中化は同じハウスメーカーでも採用例は多くはないがあるし、デベロッパーも三井不動産レジデンシャルはマンションや戸建てで採用しているし、コスモスイニシアの電線地中化事例は2014年時点で10件に達しており、その後も加えると相当数に上るはずだ。

 さらにもう一つ。街並み、デザインについて。ゆっくり街中を見学するゆとりはなかったのだが、木造ファンの小生からすれば、鉄やコンクリのユニット住宅は外観が単調で〝美しさ〟に乏しいと感じるが、今回もそうだった。

 同社は今後、この種の街づくりプロジェクトを年間100億円規模まで拡大する意向だか、陸屋根が基本の鉄骨住宅とこう配屋根の木質系住宅

「グランツーユーV(ファイブ)」とのバランスを取りながら美しい外観・街並みを創造していくのかが課題の一つではないかと思う。天井高の低いのも気になった。

◇      ◆     ◇

 なぜ前段のようなことを書くかといえば、今も昔も多くの住宅・不動産業界のメディアは記者の取材配置を行政、大手デベロッパー、中小、ハウスメーカー、不動産仲介、仲介など分野ごとに振り分けており、数年で担当を変えるともある。大マスコミと一緒だ。

 そうすると、どういうことが起きるか。デベロッパー担当記者はハウスメーカーを全く取材しないし、逆にハウスメーカー担当はデベロッパーを取材しない。今回のような街づくり、分譲戸建てのようにデベロッパーもハウスメーカーも事業展開している分野では双方を取材しなければ市場を把握できないのに、記者は上司の指示か同僚に気を使ってか、それをしない。

 この日の見学会にはこの種のデベロッパーの見学会と比べ2倍くらいの記者が参加していた。デベロッパー中心に取材している小生にとっては羨ましい限りだ。だが、しかし、極論かもしれないが、つまり半分の記者は半分の市場しか見ていないことになる。

 小生はずっと分譲事業を取材してきたので、デベロッパーであろうとハウスメーカーであろうと大手、中小の別なく取材してきた。だから、この東武東上線のマンション、戸建ての市場は頭の中に入っている。朝霞駅からバス便の分譲戸建てが5,000~5,500万円というのは破格の値段だ。「ものすごく安い」という結論には絶対にならない(最近の東上線のマンションは価格上昇が顕著で、その分だけ分譲戸建ての割安感は生まれているが)。電線地中化もデベロッパーではそれほど珍しいことではない。

 これだけ時代の流れが激しくなり、市場が縮小し競争が激化してくると、デベロッパーもハウスメーカーもそれぞれの成長分野へシフトする動きは加速する。〝街づくり〟〝スマート〟もその一つだ。

 メディアは旧態依然の取材体制を改め、業種・業態を超えたクロスオーバー的な取材体制の再構築と、記者もまた〝広く浅く〟と〝狭く深く〟の両方を兼ね備えるべきだと思う。

 そうでないと〝木を見て森を見ず〟〝森を見て木を見ず〟になる。マクロとミクロ、鳥の目と虫の目-この視点が-欠落すると業界紙の役割は果たせないと思う。

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「スマートハイムシティ朝霞」エントランス

三井不レジ&三菱地所レジ 初の戸建て〝共演〟 全253区画の「稲毛海岸」分譲(2019/10/8)

 

 

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