長谷工コーポレーションが、創業70余年の建売住宅の老舗・細田工務店を株式の公開買い付け(TOB)により完全子会社化することが確実となった。TOBは12月22日から2月4日まで行うもので、一株130円。細田工務店がジャスダック市場に上場している全株を取得することを目的としており、すでに主要株主(約664万株、所有割合35.45%)とのTOBに応じる契約を締結済み。買い付け予定数の下限は約1,249万株(所有割合66.67%)で、上限は設定していない。
TOBを市場も好感したのか、株価もすぐに反応した。TOBが発表された翌日20日は前日の終値117円から45円高の162円の高値を付けた。出来高もそれまでの数万からせいぜい28万株だったのが680万株と激増した。25日現在は130円台前半で推移している。
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記者は、同社が木下工務店と肩を並べ首都圏の建売住宅市場をリードしていた頃から応援してきた〝老舗〟であるので、世の習いとはいえ一抹の寂しさを感じる。
最近は取材する機会が少なくなったが、十数年前のあれは高井戸だったか素晴らしい戸建てを見学したのを思い出すし、もちろん同社が施工した他社の戸建てもたくさん見てきている。
しかし、肝心の業績はバブル崩壊後ほぼ一貫して低空飛行が続いている。一方の木下工務店はどうかというと、バブル崩壊後の紆余曲折を経て、旧木下工務店社長の故・木下長志氏とは何の血縁関係もない木下直哉氏が木下グループの社長兼グループCEOを務め、フィギュアスケートなどの番組スポンサーとして頻繁に露出している。
かみさんが好きなために否応なく見せつけられるフィギュアスケートの、年寄りには目に毒の若くて美しいまるでフラミンゴかツルのような、息もつけないほどの目まぐるしい動きの背景に「木下工務店」がこれ見よがしに映し出されるたびに、あまりにも対照的に過ぎる細田工務店の苦境に思いは至り、滑っては転ぶどうひいき目に見ても〝老兵〟としか思えぬかみさんが好きな髙橋大輔さんと同社がダブり、万感胸に迫るものがある。
馬鹿なことをまた書いてしまったが、どうして低空飛行を余儀なくされたか。同社の事業は、常に価格下げ圧力・利益圧縮のバイアスがかかる建設事業(他社施工)と利益の最大化が求められる分譲事業(自社施工)の2つしかない。二輪車に近いビジネスモデルだ。
用地取得段階で他社と競り合い、勝っても負けても自社分譲と他社施工現場が同じ土俵で戦うことになる。売上高比率では分譲:建設は2:1くらいだろうが、施工戸数比率も供給エリアもほぼ同じだからだ。
これは担当者にとってはつらいはずだし、経営者だって同じだろう。取材する記者だってかわいそうと同情している。
リフォームは伸びてはいるが、注文住宅は年間100棟もなく、リフォーム、注文を合わせても売上高は建設や分譲に遠く及ばず、いわば三輪車として安定した走行(経営)を困難としていた。
さて、長谷工グループとしての同社はどうなるのか。間違いなく効果を発揮するのは、「マンション分譲用地取得及び開発後に残余している一部戸建向き用地を、これまでは他業者に転売していたところ、本取引実施後は、対象者に分譲事業用地として提供し、対象者の分譲事業のノウハウを活かし、単なる土地の転売ではなく分譲事業を展開することで、価値を付加した商品として顧客に提供ができる」(長谷工コーポ)ことだろう。
これによって、大規模案件でのマンションと戸建て・商業施設などとの複合開発が容易になる。また、マンションのリノベーション工事の内製化も可能になる。
だが、しかし、長谷工グループには戸建て分譲で豊富な実績を持つ総合地所がある。シナジー効果を発揮できるかどうかは不明としておく。これまでと同じように分譲と建設の二兎を追うのは難しいのではないか。
まだまだスケートのシーズンが続くかと思うと嫌になってくる。他にスポンサーはいないのか。長谷工はどうか。〝頑張れホソダ! 飛べホソダ!〟
約1000区画の「成田はなのき台」 細田工 分譲開始8年で約9割完売(2014/4/21)