大山市長(左)と中央住宅・品川社長
先に「八潮らいし街並み景観・分譲住宅認定制度」を紹介した。開発行為(500㎡以上)だけでなく、それ以下の開発事業にも認定制度(金児氏は「縛り」と話した)を設け、良好な街づくりを誘導しようというのはよく理解できるし応援したい。
ただ、「八潮らいし」とはどのようなことなのか、部外者にはよく分からないので八潮市のとくに「街並み」「緑」に注目して調べることにした。
記者は、これまで八潮市を訪れたのはマンション取材など数回しかない。緑の量と質で圧倒的に勝るわが多摩市と比較するのは気の毒かもしれないが、埼玉県戸田市、三郷市などと同じように、街路樹・緑が貧弱で街並みは殺伐としていると言わざるを得ない。
この日(2月14日)は、八潮市駅から市役所までタクシーで移動したのだが、途中のイチョウ並木はとても美しいと思った。しかし、落葉樹のイチョウが美しいのは葉っぱを円錐形に広げる時期もいいが、やはり黄色く染まる秋の一瞬だ。葉を落とすと、枝はビュッフェの絵画のように不気味で不安をあおる風景に一変させる。多摩市にもイチョウ並木はたくさんあるが、自慢できるのは常緑樹のクスノキやシラカシだ。街路樹約1万本のうち常緑樹は2割を超える。真冬でも緑が途絶えることはない。
八潮市の街路樹の本数、樹種を調べようと思ったが、一つもヒットしなかった。つまり、市内にどのような街路樹がどこに植わっているか手掛かりはまったくない。これでは、緑の効用、街並み景観の大事さを市民に伝えられないのではないか。多摩市は1万本の樹種を全て公開している。
緑被率もしかり。これも多摩市の47.4%と比較するのは適当ではないかもしれないが、八潮市の20.2%には驚いた。東京都港区の21.8%より少ない。市内には調整区域が市域面積の約27%(約495 ha)もあり、中川、綾瀬川の水景などもあるのに、都区部並みというのは信じられない少なさだ(戸田市の市街化区域の緑被率は. 11.6%)。市民一人当たりの公園面積も2.12㎡で、埼玉県平均の7.2㎡を大幅に下回っている。
こうした数値は、市民の評価にも現れている。市民アンケートによると、「自然環境や緑化など緑の現状に対しての評価」では、「満足・やや満足」は14%にしか過ぎず、「不満・やや不満」の44%より圧倒的に少ない。
なぜ、これほど街路樹が貧しく緑が少なく、市民からの評価も高くないか。これは同市の土地利用によるものだろう。市名の「八潮」は低地を連想させるように農地や水面は多いが、「山」が付く地名は一つもなく、土地利用では住宅地25%に次いで工業用地は17%を占める。
市街化区域の用途地域でも、良好な低層住宅の環境の保護を目的とする第一種・第二種低層住居専用地域は、県内の和光市、蕨市、戸田市、秩父市とともに1カ所もない。その逆に工業・準工業・工業専用は市域面積の約27%の488haもあり、商業・近隣商業は約3%の56haしかないのも特徴だ。
このように、緑、街並、土地利用などについて概観したが、これらが「八潮らしい」ということではないはずだ。市は土地区画整理事業に熱心だし、昔は泳げたという綾瀬川や中川の水景もある。一挙にイメージを好転させるのは難しいかもしれないが、大山市長が強調したように50年、100年先を志向した街づくりを行ってほしい。
一つだけ、認定制度の必須要件とされる「道路に面した部分の外壁の一部に自然素材(木、漆喰など)又は木目調の外壁材を採用すること」について言わせていただく。
外壁の一部とはどの程度か分からないが、木や漆喰などの自然素材を採用するのは調整区域なら可能かもしれないが、市街化区域では防火・耐火基準をクリアしないといけないので容易ではない。お金もかかる。この条件を課すのは現実的ではない。
この条件は厳しすぎるから、要件に「又は木目調の外壁材」と「又は」を加えたのだろうが、本物の木とフェイクの木は似て非なるものだ。見た目にはそれほど変わらないかもしれないが、地球環境などに大きな役割を果たす木に対して無礼、失礼ではないか。
それよりも、敷地の緑被率を高め、中高木も1本と言わず2本、3本植えるよう誘導してはいかがか。埼玉県は「彩の国みどりの基金」を平成20年に創設し、住みやすく環境にやさしいゆとりの田園都市埼玉を目指し、「みどりと川の再生」に取り組んでいる。市も市民もデベロッパーも一緒になって取り組めばイメージはずっとよくなる。「翔んで埼玉」の第二弾はないのか。