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2020/03/04(水) 17:02

〝劣等生〟と評価されたら…マンション管理状況の「格付け」は両刃の剣

投稿者:  牧田司

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石﨑氏

 マンション管理業協会が検討している分譲マンションの管理状況の「格付け」について、同協会副理事長を務める大和ライフネクスト代表取締役社長・石﨑順子氏は、3月4日行われた「マンション管理事業と不動産有効活用」と題するメディア向け発表会・見学会で「〝マンションは管理を買え〟と言われるのに、そうなっていない。(中古の段階で)管理状況の優劣は価格に適正に反映されていない。『格付け』は、世の中に理解していただくことになり、管理会社のレベル向上にもつながる。協会の総意として取り組む」と語った。

 詳細は同協会のホームページで「マンション管理適正評価研究会」(座長:齊藤広子・横浜市立大学教授)の「報告書 中間とりまとめ(案)」として公開されているのでそちらを参照していただきたい。

 「格付け」の評価項目は約170項目に上り、日常管理体制のほか「修繕、大規模修繕などのハードの管理や滞納徴収などのソフトの管理を実施する上で致命的に重要となる管理組合収支関係が最も高い配点がなされており、管理組合体制と合わせて60%を占める割合となっている」(同報告書)。

 格付けランクとしては「S:特に秀でた管理状態」「A:適切な管理状態である」「B:管理状態の一部に問題あり」「C:管理状態に問題あり」「D:管理不全の恐れがある」の5段階で、平たく言えば生徒の通信簿(小生の時代は5~1までの5段階)のようなものだ。

 同協会は3月中にも国土交通省に報告するとしている。

◇       ◆     ◇

 一通り全評価項目をチェックした。もっとも至極。異論を挟む余地はない。小生も〝マンションは管理を買え〟と数十年前から書いてはきたが、実際は新築マンションの基本性能・設備仕様、商品企画などの記事ばかりで、購入後の管理について触れたことはほとんど皆無だ。謝るほかない。

 だが、しかし、マンションの管理状況の「格付け」より、やはり分譲マンションの基本性能・設備仕様、商品企画などが最重要事項で、この優劣が既存市場でも左右されると思うので、同協会が検討している評価項目の問題点を指摘したい。

 第一に、基本情報の中には物件概要も記載されることになっているが、これは物件広告の段階で表示が義務付けられている項目とほとんど同じだ。

 これはこれで重要だが、物件の住環境を左右する極めて重要な用途地域はなんであるか、基本性能、例えば免震であるとか制震であるとか、CASBB(東京都は「マンション環境性能表示」制度)やBELS、ZEHの取得状況、リビング天井高(階高)、廊下幅、ユニバーサルデザイン、その他設備仕様レベルも任意でいいから盛り込めるようにすべきで、きちんと評点に加えるべきだと思う。

 これらの字句で検索すれば、売主、建設会社、さらには管理会社との関連も消費者はほとんど瞬時に把握できるようになる。どこのデベロッパーが基本性能も管理も優れたマンションを分譲しているか、どこの管理会社がレベルの低いマンションを管理しているか分かるではないか。

 まあ、そんなことをしたら喜ぶのはごく一部のデベロッパーであり、そのデベロッパーの系列不動産流通会社であり、第一次取得層をターゲットとする独立系の中小デベロッパーや管理会社は苦境に立たされることになりそうだ。

 研究会は「耐震診断未実施について0点とし、マイナス評価にしていない」というのは、仲介会社も買う側もそれらを価格に〝織り込み済み〟、つまり承知の上で売買するからとしているように、何も劣等生を暴き出すような「格付け」をしなくても市場に任せばいいという考えも無視できなくなってくる。

 「管理不全の恐れがある」などとされたら、コロナウイルスのように世の中からはじき出される。だれが責任を取るのか。行政は救いの手を伸べるのか。結局は〝優勝劣敗〟〝先立つものは金〟という身も蓋もない現実社会をさらけ出すことになりはしないのか。こういうのを〝両刃の剣〟というのではないのか。

 報告書では、「公開に対する抵抗感を軽減する仕組み、下位に評価されると考えられる管理組合でも公開が進む仕組みの構築が必要と考える」としているが、ここが問題だ。非公開の管理組合はマイナス点になるようだ。

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