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2020/06/30(火) 18:37

公開空地が6,500㎡の空調完備の屋内空間に一変 「新宿住友ビル・三角広場」改修完成

投稿者:  牧田司

①外観(南側).jpg
外観(左が小田急不動産の、右が三井不動産のビル)

住友不動産は630日、「三角ビル」の愛称で知られてきた「新宿住友ビル・三角広場」の大規模改修工事が完成したのに伴うメディア向け内覧会を行った。記者は〝新築ビル〟と見紛えたほどで、従前の「三角ビル」を知っている人は腰を抜かすほど驚くはずだ。関係者は「前例のない超高層ビルの大規模改修工事」と胸を張った。数十人の報道陣が駆け付けた。三角広場は71日に一般にオープンされる。

既存ビルは、新宿駅から徒歩数分の新宿区西新宿2丁目の敷地面積約14,446㎡、地下2階地上52階建て延床面積約165,898㎡。19743月に竣工。設計監理は日建設計。施工は鹿島建設、竹中工務店、住友建設。

改修後は、容積対象面積はほとんど変わっていないが延床面積は約180,195㎡(うちアトリウム約6,500㎡)へと約14,000㎡増床。基本構想・総合監修は住友不動産。設計・監理は日建設計。施工は大成建設。20179月に着工、2020630日に竣工。改修に当たっては国家戦略特区の枠組みを活用している。

従前は赤いレンガ壁に囲まれた広い空間や新宿浄水場で使用された水道管のオブジェ、駐車場、喫煙所などだった青空空間は高さ25m、広さ約3,250㎡の晴雨寒暖に対応した空調完備の屋内空間に一変した。

屋内空間の正面には新宿アルタと同じ4K564インチの大型ビジョンを設置、最大収容人数約2,000人の大規模イベントを可能にした。床は床暖房(一部除く)、壁は吸音処理を施した壁にレンガ壁を採用。災害時には2,850人の帰宅困難者の一時滞在施設としても利用される。公開空地であるため、朝は5時から夜は12時まで利用可能。

大改修と併せて制震補強、発電機能設備の増強、BCP性能の向上を図っている。

このほか、地下1階から地上2階に新たに導入した「ショップ&レストラン」は新規と高層階からの移転を合わせて全26店舗がオープンする。地下2階には従前の約3倍、1,000人収容可能な「新宿住友ホール」をリニューアルした。エントランスにはクスノキの巨木も残した。

内覧会で同社ビル事業本部新宿事業所長・宮川享之氏は、「屋根付きの屋内空間は西新宿の課題だった賑わいを取り戻す第一歩。活性化ももたらすはず」と挨拶。

同社ビル事業本部商品企画課チーフエンジニア・山田武仁氏は、「既存ビルであることを感じさせない近未来のビルを実現できたキーワードは2つ。一つは20年かけて理想形を完成させようという理念を曲げなかったこと。もう一つはリスペクト。フラット広場を原資として広さを倍増させた骨太の基本設計があったから。竣工はこれから50年、100年先の始まりの一歩」などと話した。

設計・監理を担当した日建設計の設計部門グループマネージャー・芦田智之氏は、「既存の規制・枠組みを踏襲していればまず不可能な工事。そもそも青空空地を屋内空地に変える概念などなかった。『無理だ』と住友さんにいったが、許してくれなかった。激論を交わしながら実現にこぎつけた」と語った。

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三角広場 メイン

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三角広場 西

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左から宮川氏、山田氏、芦田氏

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エントランス

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パブリックビューイング(予想図)

       ◆     ◇

記者は、2011年の3.11のとき、三角ビルに隣接する小田急不動産「小田急第一生命ビル」の15階で勤務していた。瞬時に直下型でないと判断し、絶対(倒壊しない)大丈夫と思った。泣き出した女性社員もいたが、実際、揺れは想定内だった。当日は、徒歩で甲州街道を歩いて帰った。あとから三角ビルも三井新宿ビルも気持ちが悪くなるほど揺れたと聞いた。

周辺の既存ビルは大震災を前後して耐震化が進められていた。東京建物「新宿センタービル」は2009年(平成21年)に耐震化工事を完了している。そして2015年、三井不動産は「新宿三井ビル」の超大型制震装置を完成させた。それより遅れること2年、住友不動産は「新宿三角ビル」の大規模改修を行うと発表した。

同社も制振装置を設置して〝お茶を濁す〟程度の改修で済ませるのだろうとてっきり思っていた。

そして今日(30日)。三角広場を多少改修したくらいでこのコロナ禍で内覧会などやってどうするのか、しかも雨模様だ。まあほとんど取材はないし気晴らしになるだろうと出かけたが、冒頭に書いたように別の新築ビルかと仰天した。

熱弁をふるったのは、マンション見学会などで何回かお会いをしたことがある山田氏だったのにも驚いた。もっとしっかりメモを取るべきだった。感動的な名演説だった。どこかのメディアが細大漏らさずスピーチを再現しないか。

もう一つ、容積対象面積をそれほど変えず、どうして約14,000㎡も増床できたかについて。既存不適格建物を複数の工事に分けて段階的に改正後の建築基準法に適合させていく「全体計画認定制度」を採用したからというが、芦田氏は「かなり専門的なことで難しく、法律を読んだだけでは(素人の記者などは)理解できないのではないか。手順が難しい」と話した。これは謎のままだ。

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ストリートピアノ(誰でも自由に弾ける)

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屋内空間に使用されている壁(山田氏の説明によると「『住友』発祥の地、別子銅山で銅の精錬時にでる鉱鐸(スラグ)、これを焼成してできる『からみ煉瓦』の風合いを再現したレンガ壁に仕立てた」壁だそうだ)

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改修前

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改修前公開空地

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