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2020/07/10(金) 14:25

厳しくなる調整区域の宅地開発/ポラス・春日部の記事 メディアはなぜ触れない

投稿者:  牧田司

 先日(7月3日)、ポラスグループ中央住宅の市民農園利用権付き、全戸敷地面積200㎡超の分譲住宅「ハナミズキ春日部・藤塚」(全22戸)の記事を書いた。見出しに「調整区域」を付けたように、肝は都市計画法第29条に基づく開発許可を得て分譲したことだ。

 同社担当者は「これが市内での最後になるかもしれない」と話した。この「最後」というのは、都市計画法の何条に該当するかは不明だが、第三十四条11号のことを指すのではないかと思われる。

 同法第三十四条では「市街化調整区域に係る開発行為(主として第二種特定工作物の建設の用に供する目的で行う開発行為を除く。)については、当該申請に係る開発行為及びその申請の手続が同条に定める要件に該当するほか、当該申請に係る開発行為が次の各号のいずれかに該当すると認める場合でなければ、都道府県知事は、開発許可をしてはならない」としている。

 そして、同条11号では「市街化区域に隣接し、又は近接し、かつ、自然的社会的諸条件から市街化区域と一体的な日常生活圏を構成していると認められる地域であつておおむね五十以上の建築物(市街化区域内に存するものを含む。)が連たんしている地域のうち、政令で定める基準に従い、都道府県(指定都市等又は事務処理市町村の区域内にあつては、当該指定都市等又は事務処理市町村。以下この号及び次号において同じ。)の条例で指定する土地の区域内において行う開発行為で、予定建築物等の用途が、開発区域及びその周辺の地域における環境の保全上支障があると認められる用途として都道府県の条例で定めるものに該当しないもの」と規定している。

 この制度は、平成12年に改正された都市計画法で廃止された「既存宅地制度」に代わりに創設された3411条例と呼ばれる制度だ。回りくどい言い方だが、調整区域であっても環境保全に支障がない建築物は地域を指定して一定の基準を満たせば開発を認めようというものだ。

 「既存宅地制度」とは、調整区域であっても、市街化区域に隣接・近接し、市街化区域と一体的な日常生活圏を構成していると認められる地域でおおむね50以上の建築物が連たんしている地域内にある土地については住宅などの建築を認めようという制度だ。

 この制度を利用して調整区域内で大量の住宅が建設され、スクロープ化が問題になったため廃止された経緯がある。しかし、一方では、疲弊する調整区域内の社会・経済を活性化させる制度が必要という要請もあり、11号が追加された。

 ところが、この3411条例は、地域の人口減少の歯止めに一定の効果を発揮したものの、開発に伴う公共施設整備・維持コストの増大、自然災害対応エリアの増大、空き家の増加などを受け、見直し・廃止する自治体が増加傾向にある。国土交通省は、続発する自然災害に対応するため開発許可の見直しを行い、「災害レッドゾーン」については都市計画全域で開発を原則禁止し、調整区域の開発許可を厳格化する。

 春日部市も平成31年4月1日付で区域指定を廃止し、3411条例に基づく開発行為はできなくなった。

 全棟が200㎡以上の敷地になっているのは、市の調整開発許可基準による最低敷地面積(基本は300㎡だが、良好な住宅環境を形成すればそれ以下でも可能)基準によるものだ。300㎡の市民農園も、農地法でいう「農地」の利用手続きを経て得たからこそ実現したものだ。

 この調整区域の規制を逆手にとって〝邸宅〟を実現した同社の商品企画力については記事でも書いたとおりだ。同社がエリアの市場を熟知しているからこそできた〝芸当〟のはずだ。

 今後、after&withコロナで郊外居住や田舎暮らしが脚光を浴びそうで、ハウスメーカー・デベロッパーも調整区域開発に乗り出す可能性もありそうだ。

◇       ◆     ◇

 「ハナミズキ春日部・藤塚」に関する業界紙の記事についても一言いいたい。メディアにとって現場取材が「命」のあるはずで、命が掛かっているのに書かないのに腹が立ったので苦言を呈したい。

 見学会には30~40名くらい参加した模様だが、小生が読んだ業界紙4紙は〝市民農園付き〟に相当のスペースを割いてはいるが、調整区域についての言及は一つもなかった。

 なぜ書かなかったのか不思議でならない。確かに〝市民農園付き〟というフレーズは読者受けするのかもしれないが、畑仕事は楽ではない。野菜などを収穫できるようにするためには土づくりから雑草取り、害虫対策など大変な作業・労働が必要だ。

 きついことを言うようだが、調整区域に触れなかった記者のみなさんはメディア・リテラシーが欠如している。どうしてあの敷地面積と建物のグレード、しかも300㎡の市民農園利用権付きにできたのか、少しでも想像力を働かせば容易にその謎は解けたはずだ。

 「講釈師見て来たような嘘を言う」という言葉があるが、今回の件はその逆だ。きちんと見ているはずなのにそれを伝えない。わざわざ新型コロナ感染のリスクを冒してまで都県跨ぎして現地取材などするべきではなかったというのは言い過ぎか。一般紙の記者のみなさん(ひどいものもあるが)現場取材に飛び回っているではないか。 

調整区域の市民農園付き200㎡邸宅ポラス「ハナミズキ春日部・藤塚」企画秀逸(2020/7/3)

 


 

 

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