皆さんは「於玉ヶ池(おたまがいけ)」をご存じか。小生は、十八番(とはいえ歌えるのは数曲)である三波春夫「大利根無情」の台詞に〝思い出すなぁ お玉が池の千葉道場か…〟とあるのでその名前だけは小さいころから知っていた。
1カ月前だ。都営新宿線岩本町駅から歩いて数分、マンションの取材に向かう途中だった。どこかにタバコが吸える場所はないかとうろついていたら、十人は下らない人が小さな公園にたむろしてタバコを吸っていた。仲間に加わろうとしたら、公園の名前は「お玉が池児童遊園」とあり、あちこちに〝禁煙〟〝隣近所が迷惑している〟のステッカーが貼ってあるではないか。
「お玉」と「千葉道場」に出会えてうれしくなると同時に〝禁煙〟を無視していいのかと咎めるもう一人の自分がいたが、〝みんな吸ってますよ〟との声に励まされて2本吸った。〝お玉、見逃してくれ〟
改正健康増進法とコロナ対策で喫煙者は世の中からはじき出されているが、ここは無法地帯だった。小生が喫煙者でなければ見逃していた異様な光景だった。
気になったので、あとで区役所に問い合わせた。区の説明によると、この児童遊園は2,000円の過料を科す条例の適用対象外になっているので〝黙認〟せざるを得ないということだった。
ウィキペディアによると、「於玉ヶ池」は「江戸期にあった池の近隣の茶屋にいた看板娘の名前『お玉』からとされる。『江戸名所図会』によると、あるとき『人がらも品形(しなかたち)もおなじさまなる男二人』が彼女に心を通わせ、悩んだお玉は池に身を投じ、亡骸(なきがら)は池の畔(ほとり)に葬られたとある。人々が彼女の死を哀れに思い、…この池を於玉ヶ池と呼ぶようになり、またお玉稲荷を建立して彼女の霊を慰めた」「北辰一刀流の道場『玄武館』があった場所として有名で、千葉周作は『お玉ヶ池の先生』と呼ばれた」とある。
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ここに目黒区の「公園等利用実態調査報告書」がある。平成26年に調査したもので、施設数は125、総面積は約340,184㎡、平日の総利用者は5,370人、100㎡当たり利用者数は1.58人となっている。このうち2割近い21か所の公園・児童遊園の利用者は一人もいないと報告されている。
もちろん公園・緑地は利用価値だけでなく、存在すること自体に価値があるが、分かりやすくするために乱暴ではあるが利用価値を金額に置き換えてみた。目黒区内の地価公示の平均額は1㎡当たり127万円(坪418万円)だ。施設総面積を地価公示価格並みの金額に換算すると340,184×127=43,203,368万円となる。毎日5,370人が利用すると仮定すると、年間の利用者一人当たり利用金額は43,203,368÷(5,370×365)=約22万円となる。
目黒区は地価水準が高いからこのような数値になったが、額の大きさに驚かされる。
もう一つ、公園自体の利用者が激減しているデータを示そう。国土交通省の平成26年度「都市公園利用実態調査報告書」によると、規模が1か所平均0.3haと比較的小さい街区公園の平日の最大時在園者は昭和51年の63人から、平成26年は26人へと約6割も減少した。その他の近隣公園、運動公園、総合公園、広域公園、国営公園も23~54%減少。増加しているのは地区公園のみで、こちらは36%増加している。
当然のことながら、最大在園時の一人当たり占有面積は逆に増加しており、街区公園は42㎡から108㎡へと約2.6倍に増加している。
この理由を報告書では触れていないが、最大の理由は加速度的に進行している少子高齢化だろうと推測されるが、果たしてそれだけか。記者は、指定管理者制度の導入など維持管理費の削減と管理責任を回避する利用制限の強化もその一因だとみている。
一つ例示しよう。5年前に立川市のマンションを取材したときだ(別掲記事参照)。公園の周囲は鍵付きのフェンスで覆われており、開園するのは平日の9時から午後4時までで、土・日曜日は閉園するほか酒気、寝泊り、迷惑行為、ペットの放し飼いなどが禁止されていた。泥酔者による喧嘩等の不法行為が多数発生するようになり、連日昼夜を問わず大騒ぎの状況になり…たかりや恐かつとも思われる犯罪行為も発生したための規制だった。近くの保育園児はフェンスの中でハイハイをして遊んでいた。
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長々と公園での喫煙と利用者減、規制強化などについて書いたが、言いたいのは公園のあり方を行政任せにしないで、利用者のわれわれも積極的にかかわらなければならない時に来ているのではないかということだ。先日、トーセイの「相模原」のマンションを見学してつくづくそう思った。
東京ドームに換算すると約35個分の161haの公園面積を誇るわが多摩市の「多摩市みどりのあり方懇談会」(2013~2014年)の懇談会会長を務めた涌井史郎氏は、「多摩市には、多様な公園緑地がたくさんあります。市民ニーズを上手く反映しながら公園緑地の利用効用と存在効用の拡充を図るために、自分が積極的に関わって意見を言い、自らもそこに責任を果たしていく。こういう協働の関係性を、公園緑地を媒体にして作り上げていくことが、多摩市のみどりのルネッサンスではないかと考えます」と締めくくっている。
記者は民設民営を提案したい。公園利用者は劇的に増加するはずだ。