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2020/08/09(日) 10:59

坂茂氏も坂倉竹之助氏も素晴らしい 日本財団の民設民営 渋谷区公園トイレ

投稿者:  牧田司

 利用者が激減している公園の利活用を促進するには、民設民営が有効ではないかと書いた矢先に吉報が飛び込んできた。既報のように、日本財団が安藤忠雄、伊東豊雄、隈研吾、槇文彦氏ら16人の著名なクリエイターを起用し、渋谷区の公園17か所にトイレを建設したうえ、市に寄付し、維持管理は同財団と市・渋谷区観光協会が行うというものだ。完成した2か所と建設中の1か所を見学した。

最初に見学したのは、小田急線代々木公園駅から徒歩数分の「はるのおがわコミュニティパークトイレ」だ。利用者が個室ブースに入っていないときは、ブース内が透けて見えるため、ネットなどで〝シースルートイレ〟などと話題になっているもので、2014年に建築分野の国際的な賞プリツカー賞を受賞している〝紙の建築〟で知られる建築家・坂茂氏がデザインした。

見学したこの日(88日)は、トイレに電源が入っておらず利用不可だった。千葉県浦安市から見学に訪れていた建築関係の仕事をしているという夫婦は「素材はアクリルガラス。これは値段も高い。このほかの著名な建築家のトイレもぜひ見たい」と話していた。

次に見学したのは、「はるのおがわ」と徒歩23分しか離れていないやはり坂茂氏の「代々木深町小公園トイレ」。小田急線代々木公園駅3番出口のすぐ傍。20代の女性は「外から丸見えなので入るのはちょっとためらうかもしれませんが、斬新なデザイン。素敵だと思います」と写真に収めていた。

記者も利用してみた。個室ブースは男性用、女性用、多目的の3つ。広さは男性用と女性用が2m×2.5mくらいで、多目的は2.5m×2.5mくらいか。ブース内は白が基調で美しい。暖房便座機能はないが、TOTOのウォッシュレット機能が付いており、男性用もベビーチェアが備わっている。

〝行列ができるトイレ〟になるかどうかは不明だが、ゆったり寛げるので他の公園トイレよりははるかに利用時間は長くなりそうだ。坂茂さんなので〝紙のトイレ〟を期待したのだが、どこにも紙の素材は採用されていなかった。

最後に見学したのは、坂倉建築研究所の創設者・故坂倉準三氏の息子で同研究所代表取締役会長・坂倉竹之助氏が担当した「西原一丁目公園トイレ」(831日完成予定)。これがまた素晴らしかった。

京王新線幡ヶ谷駅から徒歩数分の甲州街道から一歩入った、地下化された京王新線の線路上にある線形の公園の一角にある。トイレの形状は坂茂氏の作品とよく似ているが、グリーンが基調のデザインが美しいのが特徴。外周部も修景されており〝隠れ家〟的な雰囲気がある。

問題は、果たして誰が利用するかだ。現地周辺にはマンションや戸建て以外に飲食店らしきものはほとんどない。近所の人も「西原一丁目公園? 知らないな。そんなの聞いたことない」と話した。場所の選定は渋谷区が行ったのだろうが、疑問が残る。整備費用は数千万円かもっと高いかもしれないので、もったいなさすぎる。

       ◆     ◇

 トイレの見学・写真撮影の可否を日本財団に問い合わせたら、写真撮影は市の許可を得ていただきたいという返事が返ってきた。小生が住む多摩市も営利を目的とするものに対しては事前に許可申請を出し、撮影料を徴収することは知っていた。都市公園法第10条には禁止事項や許可が必要な事項が定められているからだ。どこの自治体も同じだろうと思っていた。

渋谷区も、都市公園条例第11条の規定により営業行為、募金や署名、業としての撮影、各種集会などなどで区立公園を使用する場合は、事前に許可を受けることが必要とあり、許可申請はおおむね5日前までで、使用料(撮影料)は1時間35,000円と定められていた。(多摩市は業として行う映画、テレビ、ビデオ撮影、興行などは1時間6,750円)

区の担当者に電話で「取材が目的」と伝えた。許可は必要なくいつでも自由に撮影は可能と思ったらそうではなかった。やはり許可申請が必要と担当者に言われた。

撮影の許可を得るのが本旨ではないのでそのまま引き下がったが、記事を書くための撮影にも申請・許可が必要というのは納得できない。明らかに憲法が定めた「表現の自由」に背馳する。公園の写真を撮ることはそれ自体が目的ではなく、記事の一部としてあるいは記事を補強する材料として用いるのが目的だ。公衆トイレが「芸術作品」であっても、撮影は著作権法に抵触しない。〝お金を払えば許可してやる〟というのはほとんど買売春と同じだ。記者はそのようなことをしたくないので、写真は掲載しない。〝悪法も法なり〟というが、腹が立つ。

 ばかばかしいことを長々と書いたが、日本財団に画像データの送付をお願いしたので、送られてきてから添付することにする。

渋谷区に安藤忠雄、伊東豊雄、隈研吾、槇文彦氏ら16人がデザインしたトイレ誕生(2020/8/7

激減する利用者 激増する1人当たり占有面積 公園のあり方考える(2020/8/3

 

 

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