積水ハウスは9月17日、全国の小学生以下の子どもを持つ20代~50代の男女9,400人を対象に育児休暇の取得実態を調査した結果を「イクメン白書2020」とまとめ発表した。
「イクメン白書2020」では、同社が独自に設定した5項目4指標に基づき「イクメン力全国ランキング」を公表しているが、1位には昨年36位の佐賀県が浮上、2位に熊本県(同14位)、3位は福岡県(同29位)となるなど〝 九州男児〟の九州勢が上位を独占した。昨年1位の島根県は27位へ大幅に後退した。
山口祥義・佐賀県知事は「佐賀県が日本一のイクメン県になったこと、本当に嬉しく思います。今、佐賀県では、結婚、出産、子育てのあらゆるステージで支援を行い『佐賀で子育てしたい』と思ってもらえる環境をつくるプロジェクト『子育てし大県(たいけん)さが』に取り組んでいます」とコメントを寄せた。
このほか、男性の育休取得率は昨年9.6%から12.8%に、「1か月以上」取得した男性も昨年13.1%から18.1%に増え、育休満足度は昨年67.5%から81.8%にそれぞれ大幅アップした。
また、男性の約8割が家事・育児に幸せを感じており、家事・育児スキルが高く、仕事に対する生産性の向上や会社への愛着も向上したと報告。
男性社員の育休取得が進んでいる会社は「企業イメージが良くなる」(89.9%)、「生産性が高い企業だと思う」(83.7%)、「就職したい(子どもに就職してほしい)」(86.7%)と、全ての項目で高い評価を得た。
調査結果について、子ども支援政策や男性の家庭参加の専門家・治部れんげさんは「今回の調査結果で興味深かったのは、佐賀、熊本、福岡という九州三県がトップ3 位を独占したことです。これまで『九州男児は保守的』とされてきたイメージを覆す画期的な内容だと思いました。もしかしたら『九州男児』に対するイメージ自体が特定地域と性役割の強さを結び付ける『ジェンダーバイアス』なのかもしれません」「都内の女子大で積水ハウスの男性育休について話したところ『うれしくて泣きそうになった』いう声がありました。男女共に育休を取れる会社、社会は次世代の大きな希望になるのです」などとコメントしている。
同社は、男性社員の育児休業1か月以上の完全取得を目指し、2018 年9 月より「イクメン休業」制度の運用を開始しており、2020年8月末時点で取得期限(子が3 歳の誕生日の前日まで)を迎えた男性社員670名全員が1か月以上の育児休業を取得しており、2019年2月以降、取得率100%を継続している。9月19日を「育休を考える日」として記念日制定し、2019年から企業で働く男性の育休取得実態を探る「イクメン白書」を発表している。
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小生は「イクメン」なる造語は好きではない。そもそも中身を不問にして外見だけで「イケメン」などと評価すること自体ばかばかしいことなのに、それを夫婦共同の仕事であるはずの「育児」に熱心な男性に当てはめるのは、不平等を当然のように肯定・固定化する考えが透けて見えるからだ。
いったい「イクメン」と呼ばれることに当事者はどう思うか聞いてみたいものだ。例えば、8月26日に同社の「みんなの暮らし7stories」のメディア向け見学会を取材した際、モデルハウスを説明した同社住生活研究所課長・木野村昭彦氏(41)。木野村氏は「うちは完全フルタイムの共働きなので、家事は妻と出来る限り平等に分担していて、私も妻と同様に料理や洗濯も普通にこなします」と語った。木野村氏は「イクメン」と呼ばれることをよしとしないはずだ。木野村氏の奥さんだって「イクジョ」などと呼ばれたら嫌な気分になるのではないか。
更にまた、男性の家事・育児時間は1日平均1.46時間なのに対し女性は5.14時間と大きな差があるのは、いわゆる専業主婦(これまた嫌な言葉)の回答者もいるからだろうが、こんな状態で生産性が上がるわけがない。
まあ、本旨から外れるのでこれくらいにしておく。「イクメン」も「主婦」も死滅するような世の中にしないといけない。
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レポートは全体で8ページの長大なもので、とても面白い。小生も全文を読んだ。
驚いたのは、やはり〝九州男児〟の言葉に象徴されるように、まだ家父長制が色濃く残っているのではないかと思われる九州勢が「イクメン力全国ランキング」で葉隠れの佐賀県がトップに躍り出て、〝肥後もっこす〟の熊本県、〝亭主関白〟の福岡県の順にベスト3を独占したことだ。宮崎県(6位)、沖縄県(9位)、鹿児島県(19位)、大分県(21位)、長崎県(25位)と九州の他県もみんな上位にランクされた。
九州勢の上位独占について治部さんは「もしかしたら『九州男児』に対するイメージ自体が特定地域と性役割の強さを結び付ける『ジェンダーバイアス』なのかもしれません」とコメントしたが、そうだろうか。
ならば、〝かかあ天下〟で知られる群馬県(昨年14位)は得点が30点しかなく、佐賀県の205点、24位の千葉県の118点より断トツに低いのはどう説明するのか(参考までに。わが故郷・三重県も18位(同5位)と大健闘しているのもうれしいのだが、若いとき、小生を〝花を愛せる人になって〟と殺し文句で捨てられた彼女の出身地は群馬県だ)。
まだある。隣り合う府県なのに京都府が11位なのに大阪府は44位、奈良県は46位だし、5位の長野県に対し岐阜県は37位で、鳥取県は7位なのに島根県は27位だ。順位が激しく入れ替わったのはなぜかの説明もほしい。
その理由としては、一つにはサンプル数が少ないこともあるだろうが、設問の仕方にも回答者は影響されているのではないかと小生は考える。九州の人も群馬県の人も回答者は祖父母、両親などから父親像、母親像を刷り込まれているはずで、その色眼鏡で自分自身を、そして配偶者を評価しているはずだ。治部さんは「ジェンダーバイアス」といったが、そのバイアスを取り除くフィルターを通せばまた違った結果が得られるのではないか。
それにしても、葉隠れ・佐賀県とかかあ天下・群馬県の人が結婚したらどのような夫婦になるのか。三日坊主になるのか、それともおしどり夫婦になるのか。
従来の総花的提案から脱却 積水ハウス ライフスタイル型モデル「7stories」開設(2020/8/27)