新型コロナが今後の不動産業界にどのような影響を及ぼすか現段階ではいま一つ不透明だが、再編を促すのは間違いない。
その嚆矢となりそうなのが、オープンハウスのプレザンスコーポレーションに対する株式の公開買い付けであり、アスコットによるTHEグローバル社の連結子会社化だ。
オープンハウスは東証上場6年後に売上高5,000億円超を達成したことから次の目標に1兆円を掲げており、プレザンスコーポが地盤とする関西圏、名古屋圏などの地方への展開、ワンルームなど投資向け事業の拡大を狙う。
アスコットのTHEグローバル社の連結子会社化はとても分かりやすい。両社の創業時期が近く、マンションの供給エリアも日本橋や人形町、浜町など重なっており、販売委託・受託の物件も少なくないからだ。仕入れなどは双方が連携し、商品企画などで補完しあえばシナジー効果は間違いなく大きい。
ホームページによると、アスコットのスポンサー・中国平安グループの総資産額は約103兆円、売上高は約15.5兆円(2017年度)となっており、資金力も潤沢だ。
これまで両社とも大型案件はなかったが、商品企画には光るものがあった。記者は昨年末、THEグローバル社の「ウィルローズ日本橋浜町公園」25戸を見学した。専有面積50~66㎡中心のコンパクトマンションだが、7.5~10.0mのワイドスパンで2.4mハイサッシ、突板フローリング、突板建具・家具などを採用していた。早期に完売したはずだ。
ずいぶん昔だが、菱重エステートとのJV「グラウス日本橋浜町」37戸もいい物件だった。周辺物件はコンパクト中心だったのに対し、専有面積を敢えて72㎡以上としたのが奏功し、わずか1カ月で完売した。
アスコットはデザイン性の高い分譲・賃貸マンションを供給してきた。双方のいいところを融合させればきっといい物件が供給できるはずだ。今後が楽しみだ。
◇ ◆ ◇
アスコットは1999年4月、加賀谷愼二氏が創業。2008年にJASDAQに上場したが、その年にリーマン・ショックの直撃を受け、翌年9月、第三者割当増資により澤田ホールディングスの関連会社となり、2016年5月、平安ジャパン・インベストメント1号投資事業有限責任組合が筆頭株主となり、2017年4月、中国平安グループの子会社となった。マンションブランドは〝アスコットパーク〟。
一方のTHEグローバル社は2010年7月、永嶋秀和氏が設立。〝ウィルローズ〟ブランドのマンションを事業会社のグローバル・エルシードが分譲してきた。
今年5月、新型コロナの影響によりホテル事業の業績が悪化したことから「継続企業の前提に関する事項の注記」を発表。2020年6月期決算では20億円の営業損失、48億円の純損失を計上した。
そして10月28日、THEグローバル社はアスコットを割当先とする総額約30億円の第三者割当増資を12月21日付で行い、同時にアスコットから約60億円の融資を受けることで合意に達していた。11月13日、「注記」の記載を解消した。
アスコットはTHEグローバル社を連結子会社化する予定。