昨日(1月23日)の中古マンションの成約件数などの記事は、東日本レインズの発表資料をそのままコピペしたものだ。新築マンションや新築戸建てなら多少のことは分かるのだが、それと連動するはずの中古マンションや中古戸建ては、実のところ何も分かっていない。
分からないことを書かないのが記者の鉄則だ。知ったかぶりは間違いなく墓穴を掘る。致命傷にもなりかねない。以下は、何も分からない記者がどうしても腑に落ちない疑問点を書き連ねたものだ。
まず、新規登録件数と成約件数の隔たりについて。中古マンションも中古戸建て、新築戸建て、土地ともその差は大きい。
2020年の中古マンションでは、新規登録件数は181,750件で成約件数は35,825件なので、登録件数に占める成約件数の割合は19.7%だ。同じように中古戸建ては20.7%、新築戸建ては8.4%、土地(100~200㎡)は11.2%だ。
新築マンションや分譲戸建てではまずありえないことだ。100戸分譲し、売れるのは年間20戸だとしたら、完売まで5年かかる計算になる。普通のデベロッパーは持ち堪えられない。
不動産は腐らないからいいようなものの、店頭に並べたトマト100パックのうち20パックしか売れなかったら店主は真っ青になる。売れない不動産は根雪のようにずっと残り続けることになるのか。それとも在庫を処分する奥の手でもあるのか。
次に、新築戸建ての新規登録件数の多さについて。レインズのデータによると、2010年は約35,000戸だったのが、年々増加しており、昨年は前年比で16.5%減少したものの登録件数は約75,000件もある。倍増だ。これが分からない。
国交省のデータによると、首都圏の建売住宅の着工戸数はここ10年来ほぼ5~6万戸台で推移している。このうち、レインズに登録しない自社分譲と販売委託する戸数比率を50%と仮定すると、レインズの登録件数はその倍だ。信じられないほど多い。これはなぜか。畢竟するに、着工時には持家、あるいは貸家として申請したのち何かの都合で分譲に切り替えたということなのか。
それにしても、新築戸建ての新規登録件数に占める成約件数割合は8.4%にしか過ぎない。これも不自然だ。「新築」の定義は完成してから1年間だれも住んでいない住宅のことだから、売れなかった数万戸の「新築」はそのまま「中古戸建て」に移行するのか、それとも売主の都合などで登録が解除されるのか。これも謎だ。
もう一つ、レインズ情報の非対称性だ。ビッグデータは全て公的機関や不動産会社に握られている。一般の人はレインズ情報にたどり着くことはできない。
なので、記者はレインズ情報にはどのような項目が盛り込まれているのか知る由もないが、レインズが公表しているデータから推測すれば、物件の基本的な概要は全て入力されているはずだ。
新築戸建てであれば、駅からの距離、用途地域(建ぺい率・容積率)、土地面積、建物面積、価格、間取り、売主、施工会社、完成年月などだ。
レインズ会員の不動産業者がこれらを並び替えれば、ほとんど瞬時に全体のマーケットを把握することができる。記者が先日書いた土地面積が「60~80㎡」のミニ戸建てだって、どれくらい供給され、契約率はどうなっているかなど手に取るように分かるはずだ。
レインズは、利用規定で「会員(不動産業者)は機構から取得した物件情報・成約情報を、原則として、会員自らが機構を通して不動産取引を成立させるために適正に利用すること」(利用の目的)とし、「機構から取得した物件情報・成約情報を外部に開示することはできません」(目的外利用の禁止)としているが、実際は「機構から取得した物件情報・成約情報を集計・加工・分析したもの」(同)としか思えない情報がWEBサイトに飛び交っている。