1月24日付「レインズ情報の謎」の記事に対して、同業の記者の方から謎を解くカギをいただいた。ここに紹介する。
まず、中古マンションなどの成約件数と新規登録件数の差が大きいことについて。
宅地建物取引業法第三十四条の二第7項とレインズ利用規程第九条では、宅建業者(レインズ会員)は、登録物件の成約があった場合は速やかにレインズに届け出ることが義務付けられているが、この報告を怠る、失念する業者が「信じられないほど多い」とのことだ。きちんと報告したら数値はどのように変わるのか興味深い指摘だ。
新規戸建ての新規登録件数が住宅着工戸数を大幅に上回っていることについて。これは、新規登録件数の中には「建売住宅」のほかに「売り建て」が含まれているのではないかということだ。
「建売住宅」とは読んで字の通り住宅を建てて(着工)から分譲するもので、一方で「売り建て」は、土地を売ってから住宅を建てる販売方法の一つだ。停止条件付売買契約と呼ばれているもので、買主は土地の売買契約を売主と結んだ後に、建物の建築請負契約を売主と結ぶことを条件づけられている。
バブル崩壊までは〝建てれば売れる〟時代が続いたので、「売り建て」方式はそれほど多くなかったが、崩壊後は売主の業者は建物が竣工しても売れ残る(在庫)を抱えるリスクを避けるため、「売り建て」に比重をおく業者が増えた。
レインズの新規登録件数にどれくらいの「売り建て」が含まれるのかは不明だが、この指摘は正しいのではないか。
もう一つ、鋭い指摘があった。「レインズのモラトリアム」というものだ。
不動産業者に売買を依頼する媒介契約を結ぶ場合、複数の不動産業者に仲介を依頼できる一般媒介契約、不動産業者1社に依頼する専任媒介契約と専属専任媒介契約がある。不動産業者は、一般媒介契約の場合はレインズへの登録は任意で義務はなく、専任媒介契約は7日以内、専属専任媒介は5日以内に登録する義務が生じる。
専任媒介は他の不動産会社が売主、買主を見つけた場合は仲介手数料を受領できることになっている(専属専任は仲介を依頼した業者を通じてしか売買契約は結べない)。つまり、専任媒介契約を結んだ不動産業者はこの7日間の猶予期間内に売買を成立させれば売主、買主双方から仲介手数賞を受領でき、レインズへの報告義務は生じないので、これがレインズ情報に大きな影響を与えているというのだ。
以上、これらのアドバイスで全て謎が解けたわけではないので、機会があったらレインズに取材しようと考えている。