細田工務店の分譲戸建て「グローイングスクエア成城学園前」を見学しているときだった。話題は「長谷工だからわかるんだ」CMの細田工務店バージョンに移った。
同社分譲企画部広報課・北村義博氏が、「そうそう、あのCMはここで撮影したんです。私はロケに立ち会いました。出演者はみんな社員で総勢36人。事前にPCRの検査を受けて朝の8時からまる1日間かけて撮影しました。出演料? あるわけないでしょ。おいしいロケ弁は食べましたが…。効果? 当社ホームページへのアクセス数が倍増しました。社員も街を歩いていて『出ていたわね』などと声をかけられるようです。従業員満足度、士気もあがっています。当社の企業広告? かつて物件広告は全5段とか全10段とかは出していましたが、企業広告は新聞も含めて出したことは一度もありません」と話した。
これはもう、物件紹介よりCMの話のほうがおもしろいと方向転換。こちらから先に紹介する。
〝♪いいなあ こんな一戸建て〟から始まり〝♪戸建てだったら ♪戸建てのことならわかるんだ ♪技術があるからわかるんだ ♪木造のこだわり丁寧に ♪戸建てのことなら細田工務店 ♪コダテダッタラ ♪タララッタタ〟-こんな長谷工グルーフの細田工務店のCMがここ最近、毎日のようにつけっ放しのテレビから流れてくる。耳にたこができるほどだ。
細田工務店バージョンは、2013年から開始されている「長谷工だからわかるんだ」CMの一つで、昨年11月1日の全日本大学駅伝(名古屋-伊勢神宮)から放映されている。同社社員が軽妙な7拍子の音楽に乗って楽しそうに踊る内容だ。放映時間は30秒。
戸建てメーカーでは〝家に帰れば…〟は別格として、市川海老蔵さんの「すまいいーだ」や、ずいぶん手の込んだ「オペンホウセ」と比べたら細田の事業規模は一桁どころか二桁くらいも差がある。出演料だって細田はゼロだから比較にならない。なのにこの2社を凌駕しそうなインパクトがある。
ロケ舞台となった「グローイングスクエア成城学園前」は、小田急線成城学園前駅から徒歩16分、調布市入間町三丁目の第一種低層住居専用地域(建ぺい率40%、容積率80%)に位置する全29区画。土地面積は112.74~115.71㎡、建物面積は88.60~91.08㎡、価格は6,000万円台~8,000万円台。昨年8月から分譲開始し、第1期10戸は即日完売するなど好調なスタートを切り、モデルハウスを除き残りは2戸のみと好調。
アドレスは調布市だが(京王線仙川駅までバス13分徒歩5分)、小田急線成城学園前駅まではバスで数分の立地。国分寺崖線景観形成重点地区に指定されている周辺には数億円はしそうな立派な戸建てがたくさん建っている住宅街の一角。建物は「認定低炭素住宅」。
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このCMは、ミリ単位の精度を求められる長谷工や細田の仕事からすれば、メロディにやや合わず字足らずか字余りなのが気にならないわけではないが、まあそんなことはどうでもいい。小生がどうしてこのように過剰に反応するかは少し説明が必要かもしれない。
若い読者の皆さんは「細田」と聞いても知らない人が多いかもしれないが、バブルがはじけるまでの建売住宅市場での同社の位置は、東急不動産・東急電鉄、西武不動産、三井不動産、木下工務店、日本新都市開発、日本電建、殖産住宅などと肩を並べていた。我々団塊世代以上の年代の人にとっては「細田」はメジャーブランドの一つだった。自社分譲は年間で700戸くらいはあったのではないか。
その後、バブルがはじけて市場は一変した。詳しくは書かないが、三井不動産は団地型から都市型に転換してバブル崩壊後もコンスタントに数百戸供給してきたが、〝街づくり〟が代名詞の東急は電鉄・不動産含めて年間供給量は200戸あるかどうか。西武はほとんど撤退した。木下は多角化に成功したが、日本新都市開発、日本電建、殖産などは姿を消した。飯田グループはバブルをしのいだが、一時期は危機も伝えられた。
このように激変した市場の中で細田は生き延びてきた。そして昨年4月、長谷工グループ入りすることになった。今後どのような展開を見せるかわからないが、長谷工グループにはマンションだけでなく戸建ての実績も多い総合地所もある。細田と総合地所が組んだら素晴らしい戸建てができるはずだ。
戸建ての法人施工では、最近は西武建設、イトーピアホーム、エスケーホームなどが目立つが、細田はどう動くのか。
かつての「戸建てのことなら細田工務店」の輝きを取り戻すことができるかどうか。平野富士雄社長のかじ取りに注目だ。
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