京阪電気鉄道の「淀屋橋駅」とともに、日本トイレ協会「グッドトイレ選奨2020」の「特別奨」を受賞した西武鉄道・西武プロパティーズ・日建設計の「ダイヤゲート池袋」を見学した。14階の男性用トイレは南西窓側に設けられており、全体としては白が基調で、鉄道の運行図表をモチーフにしたダイヤグラムをモチーフにした手洗いボウルや、淡いブルーのガラスが採用された大便器ブースが目を引いた。美しくて素晴らしいトイレだ。
「ダイヤゲート池袋」は、JR・西武線池袋駅と西武デパートに近接する豊島区南池袋一丁目に位置する敷地面積約5,530㎡、地下2階地上20階建て免震延べ床面積約49,661㎡。設計・監理は日建設計。施工は大林・西武建設工事共同企業体。総事業費は約380億円。2019年2月に竣工。
同ビルは、西武旧本社ビルを建て替えたもので、「大きな樹を植えよう」をコンセプトに、建物の構造体をそのままデザインに活かし、太いV型の柱で構成する足もとは「樹の幹」、その上のタワーボディの外殻を包むトッププレースは「豊かに繁る葉と枝」に見立て、飽きのこない「おおらかな建築」としているのが特徴。
地下は駐車場、1・2階は商業店舗、4~18階が西武ホールディングス、プリンスホテル、西武プロパティーズが入居するオフィスフロア。基準階フロアは約2,100㎡・奥行き18mの無柱空間で、天井高は2,800mm。
記者が見学したのは14階の男性用トイレ。南西向きの窓側に設けられていた。入口に入るとすぐ、白が基調のボウルとパソコンのタブレットのような大きな鏡がセットになった手洗いが目に飛び込んできた。ボウルはダイヤグラムがデザイン化されていた。他ではまずないタイプだ。窓面は直射日光を遮る太陽光自動制御ブラインドが設置されているのもすぐわかった。
その奥の窓に面した小便器は普通だが、晴れた日には富士山を眺めることができるのが特徴だ。小便器の背後の大便用ブースの扉には淡いブルーのガラスがあしらわれており、清潔感をひき立たせていた。便器はTOTO製。
トイレは自席で利用確認ができ、大便器は超節水型を採用し、雨・空調ドレン水の再利用により、年間雑用水の約75%が再生水となっている。
日本トイレ協会の「特別奨」は、一般投票で投票が多かったトイレに贈られるもので、同協会ホームページによると、眺望のいいところにトイレを設置するのは「オーナーの希望」とある。これは、西武鉄道会長・後藤高志氏のことだろうか。
〝富士山を見ながら放尿できる〟トイレといえば、大和ハウス工業の水道橋の本社ビルもそうだった。同社に確認したら、周辺にビルが建ち並んでしまったことから、今では上層階からも富士山は見えないそうだ。
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読者の皆さんは「旧本社ビル」を知らないだろうが、記者はもう30年くらい昔、特に用事もないのによく通った。当時、西武はどこよりも早く勤務席での禁煙を決めていたが、接客ブースでの喫煙は可能だったので、西武不動産広報担当のMさんと一緒にライオンズの話をし、タバコを吸いながら取材ネタを引き出したものだ。
Mさんは寡黙な人で、空振りも多かったが、その前後に必ず寄った西武デパートが親会社の西洋環境開発の女性広報担当者は美しい方で、何らなの情報をもたらしてくれた。
今回、30年ぶりに訪ねて驚いたのは、16階の西武グループ3社の100数坪はありそうな受付だった。ここもダイヤグラムをモチーフにした黒が基調で、大きな生花が中央に据えられていた。グループの西武造園が定期的に活け替えるのだそうだ。写真も添付した。こちらも素晴らしい。
ついでに一つおまけ。真偽のほどは分からないが、明治大学が人気になったのは「女性用トイレをきれいにしたから」と、当時の理事長が話したのを聞いたことがある。取材を申し込んだら、広報から断られた。