東急不動産は5月17日、渋谷区代官山「代官山東急アパートメント」の建て替え複合プロジェクト「(仮称)代官山町プロジェクト」を着工し、デザイン設計に隈研吾氏が担当すると発表した。
プロジェクトは、東急東横線代官山駅から2~3分、渋谷区代官山町119に位置する敷地面積約4,084㎡、10階建て延べ床面積約21,875㎡。用途は賃貸住宅、店舗、事務所、駐車場。基本設計は隈研吾建築都市設計事務所。実施設計は竹中工務店・東急設計コンサルタント共同企業体。施工は竹中工務店。竣工予定は2023年秋。従前は複合施設「TENOHA代官山」。
賃貸住宅、オフィス、商業施設で構成する複合施設を建築し、「暮らす」「働く」「遊ぶ」をシームレスに融合する「新しいライフスタイル」を提案する。
隈氏はプロジェクトにかける「想い」として次のコメントを寄せている。
コロナは建築と都市の歴史にとって大きな転換、折り返しポイントになるであろう。コロナ以前の建築のテーマは「集中」であった。都心部に集中させることが効率的であり、幸福であると考えられていた。コロナのあと、われわれは都市の様々な活動を分散、多様な存在へと作り変えていかなければならない。『代官山町プロジェクト』はそのような新しい試みの一つのモデルとなるであろう。そこで、われわれは集中の時代の単調な箱にかわる、新しい自由でやわらかな建築を提案しようと考えた。
代官山は様々な意味でそのような自由な建築をつくるために最適な場所である。
まず、多様な地形を持ち、丘があり、川があり、それによって風の流れ、光の射し方も複雑で豊かである。
この地は利便でありながら「集中の時代」の退屈な都市とは異なる豊かな自然がそこかしこに生きているのである。そのうえ、新しい自由な街を追求する、様々な試みがつくられてきた「街の実験場」であり「集合住宅の聖地」でもある。
戦前の実験的集合住宅の傑作、同潤会代官山のヒューマンなコミュニティに魅せられて僕は学生時代からその食堂や共同浴場を愛用していた。ストリート型集合住宅の原型を作ったといわれる槇文彦先生のヒルサイドテラスも僕の大事なデートコースであった。
そんな代官山の自然と伝統に助けられ、教えられてわれわれは新しいチャレンジをこの地に刻みたいと考えている。
『代官山町プロジェクト』は「集中の時代」の大きくて閉じた箱に換わり、様々なプロポーションの小さな木箱を積み上げようと考えた。木箱の多様性は街の自由とサステナビリティを象徴する。木箱と木箱の間には緑が植えられ、木箱のやさしいテクスチャーと緑が響きあって、街の緑につながっていく。その真ん中に空とつながるアトリウムを設けた。そのアトリウムから駅へとつながる路地がのび、木箱は空とつながるだけではなく、街とも結ばれ、木箱の生活は代官山の街の活動の一部となるであろう。われわれのデザインと街のシンボルが響きあって新しい時代の新しい生活が始まるだろう。
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記者は昨秋、現地を見ている。一等地だ。「代官山アドレス」に隣接し、道路を挟んだ対面は野村不動産の億ション「プラウド代官山フロント」が建設中だった。記事では「分譲なら坪1,000万円台に乗るか」と書いたが、分譲ではなく賃貸となる。
期待の大きさの分だけ深い失望 「渋谷川・古川の河川再生」現地を歩く(2020/10/15)