小田急不動産は6月23日、大規模マンション「リーフィアレジデンス橋本」が竣工したのに伴うメディア向け内覧会を行った。JR・京王相模原線橋本駅からバス便の全425戸で、分譲開始から1年半で約9割を成約するなど極めて好調に推移している。敷地内の里山を所有し、維持管理も行うというほとんど前例のない企画がヒットした。
物件は、JR横浜線・京王相模原線橋本駅から徒歩19分(バス3分、バス停徒歩3分)の町田市小山ヶ丘六丁目に位置する敷地面積約21,850㎡、12階建て全425戸。平均専有面積は78.7㎡。最多価格帯は3,300万円台、坪単価は150万円。売主は同社(事業比率50%)のほか、積水ハウス(同40%)、神鋼不動産(同10%)。設計・施工は長谷工コーポレーション。竣工は2021年4月。
2019年12月から販売を開始し、当初は町田市、相模原市などの地元中心だったのが、昨年6月以降は広域からの集客ができており、これまでに累計来場者は2,000件を突破し、約9割が成約済みとなるなど好調に推移している。
約21,850㎡の敷地の4割を占める「民有緑地」=「里山」の保全・維持管理を居住者が行うという提案が支持された。行政、環境シンクタンクとの協議や緑地内の環境調査などを重ね、20201月に「いきもの共生事業所認証(ABINC=エイビンク)」の「優秀賞」を受賞している。
内覧会に臨んだ同社住宅事業本部開発企画部長・髙橋浩朗氏は、「敷地は小田急電鉄が所有していたのを吸収分割手法により当社が取得したが、事業化するにあたって2つの課題があった。一つは、バス便で400戸を超える需要が果たしてあるのかということ。もう一つは、敷地は市の地区計画による『民有緑地』に指定されており、一切自然の植生に手を加えてはならないという規制があったこと。開発を断念することも考えたが、思い切ってチャレンジした。販売状況は当初の想定をはるかに超えている。自然と共生する取り組みが高い評価を得た」と語った。
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この物件については、同社が2019年10月7日に行った記者内覧会を取材しており、「坪単価は都内ではまずない150万円くらいに落ち着きそうだ」とし、「売れるかどうかは価格もさることながら、カギは『さとやまの森』の魅力をアピールできるかどうかだろうと思う…似たような事例は『フォートンヒルズ』がある。ここは信じられないような売れ行きを示した」と記事に書いた。
分譲価格(単価)は、土地代がただでも建たないような破格値で、大型商業施設が近接するのは訴求力があるが、橋本駅からバス便というのはネックになるはずで、で400戸を超えたら、いかに隣接地に大型商業施設があるとはいえ、売れるのは年間100~150戸として、完売まで3~4年かかるのではないかと予測した。「いきもの共生事業所認証(ABINC=エイビンク)」認証は必ずしも販促につながらないこともこれまでの事例で分かっていた。
そしてまた、当時は「マンションは『駅7分以内』しか買うな!」というプロパガンダが新型コロナのように市場に蔓延していた。下手をすると在庫は根雪のようにずっと残るのではないかと危惧もした。
この日(6月23日)、販売住戸は残り約1割と聞いて安堵した。記者の予想を覆したのは、大型商業施設に隣接し、新型コロナによる〝新しい生活様式〟も大きな要因だろうが、「フォートンヒルズ」と同等かそれ以上の取り組みが自然志向の消費者の心を捉えたからだと思う。高橋氏も「想定外の売れ行き」と語ったように、ここまで売れると考えていなかったようだ。
約21,850㎡の敷地を戸数で割ると、1戸当たりの持ち分は約51㎡。1戸当たりにするとそれほど大きくもないが、これをみんなで所有し、維持管理をし、毎日のように散策したり様々な交流イベントなども行ったりできる〝価値〟はお金には代えられないものがある。維持管理費として1戸当たり月額500円を徴収するというのも妥当な価格のはずだ。
1階部分からの比高差約30mの里山にも上った。枕木などで木道が整備されており、年寄りでも苦もなく登れる。樹木はクヌギが多く、草花を含めて約200種とのことだった。山椒の木がたくさん生えており、タラの木もあるとのことだった。原始規約では喫煙禁止というのはどうかと思うが、飲酒は定めがないので、飲めるはずだ。(入居者の1~2割は喫煙者のはずで、管理組合も喫煙くらい認めてもいいのではないか)
里山は八王子市との市境にもなっており、フェンスの先には八王子市が所有する手つかずの雑木林が広がっていた。