RBA OFFICIAL
 
2021/07/26(月) 16:58

リストのAI査定システム「mAI List(マイリスト)」と対決 勝敗は? 弱点は見えた

投稿者:  牧田司

 リストが昨年5月から開始した高額不動産に特化したAI査定システム「mAI List(マイリスト)」を取材・対決した。AIは宅建士と同レベルかそれ以上の知識があり、とてつもない量の情報を一瞬にして処理することは分かったが、マンションの基本的な質・設備仕様レベル、住環境などは人間の査定に頼っていることが判明し、記者は負けなかったような気がしたが、AIは勝負を避けたのか、競うほどの能力はないと記者を見下したのか、代理人に任せっきりで一言も発しなかった。

 「mAI List(マイリスト)」は、「物件名、販売価格、所在地、専有面積など物件に関する必要項目を入力することで、過去10年分の取引事例などのビッグデータに基づき、現在~30年後までの推定成約価格や、貸し出した場合の推定利回りを算出することが可能」(同社プレス・リリース)という触れ込みで、当欄既報のように、先日は都心の高額中古マンション価格上昇率ベスト10を発表した。

 ベスト10に、記者が絶賛した三井不動産レジデンシャル(以下、三井)「パーク・コート赤坂檜町ザタワー」などが上位にランクされ、取材した方は少ないと思われる大和ハウス工業の「D’グランセ南青山ハイヴァリー」と「プレミスト六番町」が入っていたのにはほくそ笑んだのだが、第1位の三井「パークマンション三田日向坂」は取材しておらず、10位のオリックス不動産「ブリスベージュ神宮前」はまったく知らず、自尊心をいたく傷つけられた。

 取材・対決を申し込んだのは、どうして「日向坂」や「神宮前」が上位なのかを聞くのと、あわよくば「mAI List(マイリスト)」の鼻の骨(そんなものがあるのかどうかはわからないが)をへし折ってやるのが目的だった。

 取材に応じてくれたのは、リスト サザビーズ インターナショナル リアルティ、マーケティング部課長・福林悠哉氏だった。AIの上司なのか部下なのか聞き忘れたが、多分代理人なのだろう。

 まず、返事が返ってこないのは承知のうえで、嫌みなジャブをかました。案の定、福林氏は「ジェンダーレス」と優等生みたいな答えしかしなかった。つまり、他のAIもそうだろうが、男か女か年齢も不詳で、未既婚、趣味などは聞くまでもないということだ。(福林氏は既婚で、何と奥さんは記者のことを知っていると聞いてびっくりしたが)

 まあ、これは許せる。肝心の能力について聞いたら、福林氏は「取得する予定はないが、宅建士や不動産鑑定士くらいの能力はあり、偏差値でいえば70~80くらいはある」と答えた。なるほど、これは凄いと認めざるを得ない。

 ベスト10に三井のマンションなどが入っているのは、駅名、駅からの距離、ブランド力が加点された結果であることを福林氏は明かした。これもよくわかる。高額マンション市場では三井が圧倒しているのは紛れもない事実だ。2位以下を大きく引き離している。AIの査定能力を信じよう。

 少し関連すると思ったので、東急リバブルが今年3月、リバブルの営業経験5年以上のベテランと遜色ないレベルの「投資用区分マンションAIマッチングシステム」を開発し、本格稼働したことについても質問した。

 福林氏は、「実需マンションでは住環境、日照条件、生活利便施設など加点・減点項目を増やさないとベテラン営業担当と同等の正確な対応は難しいが、投資用はAIが得意とする分野なので、ベテラン営業マンと遜色ないレベルというのは十分ありうる」と語った。

 AIの弱点も分かった。個別物件の住環境や生活利便施設の集積状況、耐震・断熱性能、天井高、その他設備仕様レベルは自ら判断はできず、人間の手(ポータルサイト情報や営業マンの査定)に頼らざるを得ず、肝心のフェースツーフェースの会話などまったく出来ないことだ。

 ここに付け入る隙がある(ある社は「当社はAIと営業マンを勝ち負けでは考えておりません」と言っているが)。記者はずっと思っているのだが、不動産の最大の特性である唯一性やユーザーの物件選好を果たしてAIはどう評価するのか。金融商品に近い投資用不動産はともかく、ファミリー向けマンションなどの物件選好はそれこそ千差万別。個別性が高い。記者の例を紹介する。

 バブルが発生する前だ。郊外マンションを買い、家族で内覧会を済ませ鍵も渡されたときだ。夜中に独りで酒を飲んでいたら、小学2年生の息子が夢でも見たか突然起き出し、「お父さん、引っ越し嫌だ。友だちと別れたくない」と大泣きした。やむなく契約をキャンセル。手付も放棄した。

 子育てファミリーにとって譲れないのは子どもが安心して通える教育環境ではないか。たくさんある不動産ポータルサイトも、検索項目を増やし絞り込みできるようにしているが、この不動産の唯一性、個別性を前にしたら無力とまではいわないが、ユーザーの心に迫るのは容易ではない。

 福林氏にこの点を質問したら、「芸術作品のように心を持たせるためにはハードルも高い」と話した。同社に所属する「不動産エージェント」の本田さん、大丈夫だ。AIが幅を利かす時代だからこそ、ユーザーの琴線に触れるエージェントの出番だ。

個人「不動産エージェント」の普及を 〝先進企業〟3社が合同セミナー(2021/7/16)

リストAIシステムを用いた高額中古マンション価格上昇率ベスト10発表(2021/7/13)

 

rbay_ayumi.gif

 

ログイン

アカウントでログイン

ユーザ名 *
パスワード *
自動ログイン