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2021/09/11(土) 17:56

「士」の矜持を見た 添え物のヒノキも本物 菊池建設のモデルハウス「檜の家」

投稿者:  牧田司

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「現代数寄屋『檜の家』」

 別掲のナイスが9月18日にオープンする注文住宅モデルハウス「tvkハウジングプラザ横浜」とともに、隣接する同社グループ菊池建設のモデルハウス「現代数寄屋『檜の家』」を見学した。木造ファンの記者は「tvk横浜」にある50以上のモデルハウスのうちどこが好きかと聞かれたら、ここを真っ先に挙げる。モデルハウスは、木造2階建て延べ床面積約224㎡(68坪)。

 宮大工・菊池安治が1955年に創業した同社ならではのモデルハウスだ。社寺・仏閣の工事事例が豊富な、その匠の技がいたるところに施されていた。

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玄関

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「広間茶室」

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「群青の間」

 外観-アプローチ-玄関は高級料亭そのもので、そのまま酒席に案内されるのではないかという錯覚を覚えた。

 最初に案内されたのは、8帖の「広間茶室」と6帖の「群青の間」だった。見たとたん記者が育った昔の住宅がよみがえった。昔の住宅の欄間には贅を尽くした装飾が施され、その奢侈のほどが家の格にもなった。

 今回の「檜の家」の欄間は端正な格子模様で奢侈に流れる嫌みは全くなく、見えないところに匠の技が注ぎ込まれていた。

 説明を行ったのは同社代表取締役社長・松本敏氏で、わが国には天然針葉樹で建材に用いられるのは木曽ヒノキ、秋田スギ、青森ヒバの3種しかなく、「広間茶室」に使用されている化粧柱は伊勢神宮に用いられている木曽ヒノキそのものと松本社長は話した。

 それだけではない。柱は樹齢300年、差し渡し1mもある巨木のうち、芯を外した部分を使用することで、柱の4面には板目がまったく出ない、分かりやすく言えばバームクーヘンのような切り口にはならないものを使用しているとのことだった。

 柾目と板目の区別は記者もできるが、4面とも均一の表情になるのか説明はさっぱり理解できなかったので値段を聞いたら、松本社長は「市場には出回らないから値はつけられない。普通の柱との比較? これくらい(長押まで手を伸ばした)」と語った。

 記者は、同社の「ハウジングプラザ松戸」モデルハウスに使用されていた古木の「神代欅」を見ているがそれと同じような希少なもののようだ。

 その柱をしげしげと眺め、触ってみた。樹齢300年、築30年ものなら、記者のような醜い老人斑だらけになっておかしくないのに、木肌にはシミなど一つもなく、肌触りは例えていえば芳紀まさに十八か、あるいは鬼も十八番茶も出花というべきか、薄絹のようなきめの細かさだった。その美しさにほおずりしたくなったが、あの金メダルをかじって顰蹙を買った市長さんが目の前にちらつき思いとどまった。

 この柱に舞い上がり、香気に酔った記者は、もう充分、早く帰って記事を書こうと決めたのだが、それだけでは済まなかった、次に紹介された「和厨・茶の間」にとどめを刺された。

 主人(料理人)と家族、友人知人などが食を通じて語り合う空間デザインにほれ込んだ。目線を近づけるように「和厨」は「茶の間」より20cm下げ、床はケヤキのナグリ仕上げだった。

 説明をした方は、まるで高級料亭のシェフかデパートの催事のトップセールスマンかと見まがうほどの巧みな話術でもってまくし立てた。記者は、どこかから借りてきた講釈師ではないかといぶかり、名刺交換をした。「菊池建設 取締役営業本部本部長・二瓶正裕」とあり、松本社長と同じ「一級建築士」だった。

 松本氏や二瓶氏の凄いのは、口八丁手八丁の手練手管で客を丸め込むタイプとは真逆の本物の「士」であり、手抜きをしそうな添え物にまで細やかな気配りをしていることにもそれが現れていることだ。

 添付した和食を擬した写真を見ていただきたい。住宅展示場は火気厳禁なので料理を作り、供することは不可能なので、削り節に似せたものは鉋屑であることはすぐわかった。和食料理の添え物としてよく利用されるヒノキも添えられていた。てっきりフェイクだろうと思ったが、本物だった。鉢物にはこれまた本物の杉の種子が使われており、鰹節もまたスーパーなどで売っているような安価な代物ではなく、最高級の土佐の鰹節だったし、玄関正面の飾り床にも本物のヒノキが飾られていた。

 記者は、これまで何度もモデルルーム・モデルハウスのフェイクの観葉植物はやめよと書いてきた。フェイクはおもてなしの心の欠片もない、「画竜点睛を欠く」そのものだ。せっかくの立派な設備を台無しにする。菊池建設はそんな愚を犯していなかった。ここに匠のこだわり、矜持を見た。

 ナイスは有線テレビ事業も行っている。「檜の家」の販促のテレビショッピングを立ち上げ、「茶室・群青の間」には松本社長を、「和厨・茶の間」には二瓶氏をそれぞれギャラなしの講釈師に起用して宣伝すれば、ジャパネットたかたも真っ青の売り上げを達成するのではないか。お二人には成果報酬としてストックオプション制度を導入すれば文句は言わないだろうし、費用も最小限に抑えられるではないか。

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広縁-書院-広間茶室の床の間

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左が築30年の和室柱、右が新しい木曽ヒノキの板

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「和厨」のケヤキのナグリ床

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菊池安治が開校した日本建築専門学校キャンパス(トイレは出たくなくなるほど気持ちがいい空間だ)

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人が歩くと床が鳴く「鴬張り」体験 匠の技と現代技術を融合 菊池建設のモデルハウス(2017/1/19)

 

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