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2022/02/14(月) 09:58

売却価格は安すぎる 「ザ・プリンス パークタワー東京」だけで1,500億円の価値あり

投稿者:  牧田司

 当欄2月10日付で「プリンスホテル売却へ30か所で1,500億円は安すぎないか/西武は分譲に力入れて」の記事を書いた当日、西武ホールディングスは、子会社プリンスホテル(PH)が保有する「ザ・プリンス パークタワー東京」などホテル・レジャー施設31物件をシンガポールの政府系ファンドGICに約1,500億円で譲渡すると発表した。2021年5月13日に公表した中期経営計画に基づき、より強固な財務・事業体質を構築するための経営改革の一環で、譲渡による帳簿価額を前提とした譲渡益は800億円程度となる見通し。

 譲渡する施設の運営は昨年末に設立した「西武・プリンスホテルズワールドワイド(SPW)」が行い、PHは2022年4月1日付で「西武プロパティーズ」に吸収合併、「西武プロパティーズ」は「西武リアルティソリューションズ」に商号変更する予定。

 「西武リアルティソリューションズ」は総合不動産会社として今後本格化する品川・高輪・芝の再開発事業や軽井沢・箱根などのリゾート事業を強化し、向こう10年間に国内外のホテル拠点を84か所から250か所に拡大するとしている。

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 発表された施設31か所のうち記者が知っているのは「ザ・プリンスタワー東京」「サンシャインシティプリンス」「ザ・プリンス京都宝ヶ池」しかない。知らないことは書けないが、「ザ・プリンスタワー東京」の〝価値〟だけでも1,500億円あると思っているし、創業から60年以上の「苗場プリンス」を含む31施設で簿価を基準にした譲渡益は800億円にしかならないのは理解できない。なぜそんなに安いのか。「ザ・プリンス パークタワー東京」を詳しく見てみよう。

 「ザ・プリンス パークタワー東京」は、都営大江戸線赤羽橋駅から徒歩2分、都営三田線芝公園駅から徒歩3分、港区芝公園四丁目に位置。1990年(平成11年)、都市計画法第59条4項(特許事業)の認可を受けて建設されたもので、従前は昭和の時代から親しまれていた西武鉄道所有の「芝ゴルフ練習場」だった。

 敷地面積は約3.7haで、30階建て延べ床面積約9.1haの全603室。客室面積は約28~325㎡。宿泊料金はホームページによると約7万~254万円。設計は丹下都市建築設計、施工は鹿島建設。開業は2005年4月。

 ホテルに何を求めるかで評価は変わってくるが、記者は都内のラグジュアリーホテルの中でベスト10入りするのではないかと思っている。

 なによりも素晴らしいのは四方八方が芝公園という立地・眺望だ。こんなホテルは他にない。設備も充実しており、客室面積も平均40㎡以上だ。文字通り「西武・プリンスホテルズワールドワイド(SPW)」にふさわしいホテルだ。

 仮に、何の法的規制もないと仮定したら、地価相場からして坪1,300万円でも安いはずなので、敷地の評価額はざっと1,500億円だ。ここにマンションを建てたら坪単価800万円以下はありえず、販売総額は数千億円になるはずだ。

 ただ、実際はこのホテルには減価要因もある。前述したように都市公園と一体として開発する条件付きの特許事業だからだ。容積率の規制も受けており、他の用途に変更することなどはまず認められない。西武がこのホテルを売却の対象にしたのは法的規制が強いからということも考えられる。

 もう一つは稼働率の低さだ。このホテルはコロナ前からも稼働率の低さが指摘されていた。PHはホテルブランドを最上位の「ザ・プリンス」から「グランドプリンス」「プリンス」「プリンス スマート イン」まで4つに分けているが、「プリンス」が圧倒的に多いためか、あるいは「西武」のイメージがいま一つであるためか、「ザ・プリンス」の浸透度はいま一つのようだ。ブランディングに課題がありそうだ。外資系ホテルに学ぶ点は多い。

 さらに言えば、これはPHだけの問題ではないが、わが国のホテルの格付けだ。現在、フォーブスの「5つ星」を筆頭とする日本ホテル格付けが知られてはいるが、それほど浸透しているとも思えない。旅行代理店のサイトも肝心の質についてはどこも触れていない。わが不動産情報サイトと同じだ。

 それにしても売却価格は低すぎる。不動産鑑定の仕組みはどうなっているのか。GICにしてみればどうしても手に入れたかった物件であり、西武としては名を捨てて実を取ったということか。

プリンスホテル売却へ30か所で1,500億円は安すぎないか/西武は分譲に力入れて(2022/2/10)

 

 

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