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2022/03/11(金) 17:53

公園が旅の目的になる わが国初のPFI事業 三菱地所他「光と風の広場」開業

投稿者:  牧田司

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「光と風の広場」

 海の中道パーク・ツーリズム共同事業体を構成する三菱地所、積水ハウス、一般財団法人公園財団、インザパーク福岡は3月10日、福岡市東区の国営公園「海の中道海浜公園」内に整備した「Park-PFI制度」による滞在型レクリエーション拠点「光と風の広場」を3月15日にリニューアルオープンすると発表した。Park -PFI制度による国営公園の開業は日本初となる。オープンに先立つ9日と10日、施設をメディアに公開した。

 「光と風の広場」は、Park –PFI(Private Finance Initiative)制度により2020年1月に4社からなる事業者がコンペで選定されたもので、工事着手は2021年7月、運営終了は2041年1月。運営終了後は更地返還する。

 国営公園初のPark-PFI事業として公募・認定されたのは「淡路島 国営明石海峡公園」だが、開業するのは本件が日本初。事業スキームは、事業者が施設を建設・整備、運営し、国は利用料収入(土地賃貸料)を得るBOO(Build Operate and Own)方式を採用している。「海の中道海浜公園」の利用者は年間約200万人。

 施設は、JR九州香椎線海ノ中道駅から徒歩20分(福岡空港から車で25分、九州自動車道古賀ICから35分)、「海の中道海浜公園」内にある福岡市東区西戸崎に位置する敷地面積約159ha。建築主は三菱地所、基本設計はオープン・エー。実施設計はシミズ・ビルライフケア、施工はシミズ・ビルライフケア、積水ハウス、積和建設九州。施設運営はインザパーク福岡、公園財団、海の中道アスレチックパーク、ココペリウエスタンライディング。

 博多湾と玄界灘に囲まれたオーシャンビュー、福岡市街の夜景を楽しめるエリア特性を生かし、公園そのものが旅の目的地となる「パーク・ツーリズム」をテーマに様々な仕掛けを施しているのが特徴。〝泊まれる公園〟をコンセプトとした宿泊施設「INN THE PARK」や巨大アスレチックタワー、ホーストレッキング、マリンアクティビティ、ドッグランなどを整備。駐輪場をリノベーションしたレストランでは本格的なフレンチやコーヒーが楽しめる。

 このほか、様々なイベントなども行い、周辺地域や公園のエリアレンタサイクル、電動キックボード事業との連携を図り、光と風の広場を拠点として「憩・学・遊」全てが楽しめる非日常体験を提供し、地域全体に賑わいを促進する。

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「INN THE PARK」球体テント

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球体テント

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「シーサイド キャビン」(左)と「スイートルーム」

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「シーサイド キャビン」

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アスレチックタワー

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キッズコース イメージ図

◇        ◆     ◇

 事業計画が発表された段階で完成したら見学したいと思っていた施設だ。PPP/PFIの将来を占うプロジェクトだと考えたからだ。2020年7月末に開業した渋谷区の「立体都市公園制度」を活用したPPP(パブリックプライベートパートナーシップ)施設「MIYASHITA PARK」を見学して、その思いは強まった。

 取材を全てこなし終えたとき、大きな満足感を覚えたし、成果も得られた。開業はコロナ禍という厳しい船出となったが、PFI事業の成功事例になると確信した。

 施設は、何から書くべきか迷ってしまうほど充実しているが、まず「INN THE PARK」から紹介する。

 宿泊施設は、約28㎡の球体テント13棟、約82㎡のグランピング12棟、約12㎡のキャビン3棟、約49㎡のスイートルーム1棟の全30棟から構成されている。宿泊料金は朝食・夕食付きで約1.5~4.0万円/1人。

 驚いたのは球体テントだ。直径6mの白い球形物体がアトランダムに配されている光景は宇宙人が舞い降りたのではなかと思ったほどだ。これが建築物なのかという疑問も湧いた。建築基準法でいう建築物とは土地に固着された柱、壁や屋根が付いているものと定義されているからだ。見学会で確認したらテントは建築物と認定されており、「鉄骨膜構造」というのだそうだ(小生は「膜」は「テント=幕」だと思った)。

 球体テント、キャビン、グランピングにはベッド、エアコン、テレビなどは付いていたが、浴室・トイレがないのには絶句した(トイレ、温浴施設は別棟)。小生のような糖尿&頻尿で枯れ木のような年寄りをターゲットにはしていないのだろうが、若いカップルなどは汗をかく機会は多いはずで、困るのではないかと聞いたら、関係者は定借期間が20年と短く、配管工事などによる環境への負荷を少なくするためと説明した。

 グランピングは、大人数の利用も可能で、テントの外には暖炉のあるリビングやダイニングを備えている。キャビンはコンテナのような外観だが、潮の香りと波の音に酔いしれながらつがいのタコかサメのように絡み合うことが出来そうだ。スイートルームはラグジュアリーホテル並み。

 水風呂もある温浴施設は波の音も聞こえるすぐ海のところに設置されていた。とてもいいのだが、海側に面したところにはシートで覆われていた。

 どうしてこんな馬鹿なことをするのかと聞いたら、福岡市公衆浴場法施行条例第4条の「営業者が講ずべき入浴者の衛生及び風紀に必要な措置」として「脱衣室及び浴室は、屋外から見通せない構造とすること」とする条項に抵触するとして許可されなかったのだそうだ。

 しかし、この施設の「屋外」は遊泳も禁止の海だ。船を繰り出し女湯、または男湯を覗き込むことは可能かもしれないが、そんなことをしたら軽犯罪法(窃視の罪)に問われる。海に向かって素っ裸を晒すことが「風紀紊乱」につながるのか。条例は何もかもお上が取り仕切ろうとする狙いが透けて見える。

 引綱ではなく自分が手綱を操れる「ホーストレッキング」は最高に素晴らしい。競馬ファンにはたまらないのではないか。全国乗馬倶楽部振興協会公認の乗馬指導者が配置されているので安全・安心な野外騎乗が楽しめる。30分コースで7,000円、1時間コースで1.5万円。ギャロップは無理だろうが、ダク、キャンターくらいはできそうだ。

 馬はサラブレッドではなく、乗用馬として育てられた従順・温厚な性格で足腰が丈夫なアメリカンクォーターホースで15歳(人間の年齢の2.5~3倍とか)くらいとか。オスは早い段階で去勢されるそうだが、メスは不妊処置を施されておらず、発情もするそうだ(発情したらどうするのか聞けばよかった)。

 厩舎では〝ウマが合う〟のか4頭の馬が歓待してくれた。木の香りがするおが屑に触らせてもらったし、固形アルファルファ―飼料を1個もらった。若草のとてもいい匂いがする。指導員の方には「(人も)食べられると思いますが、食べない方がいい」と言われた。煎じて飲めないか。ネットで調べたらアルファルファ―の飲料が売っていた。

 アスレチックタワーは九州初で、身長100cmからプレイ可能なキッズコースを付属したものでは国内最大の規模。92種のアスレチックアイテムを設置し、高さ16.8mの有料展望台からは、博多湾と玄界灘を一望することができる。

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温浴施設(海側には目隠しのシート)

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記者に秋波を送る牝馬(左)と牝馬には関心がなさそうな牡馬

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乗馬指導員歴20年というココペリ ウエスタン ライディング主任乗馬指導員 井上朋香さん(馬と会話できるそうだ)

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「ホーストレッキング」イメージ図

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レストラン

◇        ◆     ◇

 記者は飛行機が怖く(過去、福岡の2度の取材は飛行機で、生きた心地がしなかった)、新幹線を利用したために片道7時間くらいかかった。9日の取材を終えたのは17時過ぎ。中洲に繰り出そうとホテルの外に出たところが限界。脚が言うことを聞かず、「海鮮」のうたい文句につられてホテル近くの飲食店に入った。刺身をしゃぶしゃぶ風に少し焼いて、刻んだキャベツとゆずポン酢で食べるという料理は初めてで、はっきり言ってとてもまずかった。

 10日はタカラレーベンの50周年記念物件「LEBEN福岡天神ONE TOWER」(153戸)を見学取材した。1月から販売開始し、これまで約100戸を成約するなど圧倒的な人気を呼んでいる(詳細は後ほど)。

 一つ書き忘れた。「光と風の広場」の砂浜は「白砂青松」ではなく黄色、または茶色に見えた。黄河と対馬海流の影響かと思ったが、そうではないようだ。しかし、海の中道の砂層は「薄黄色」という学術論文が見つかった。黄色い砂は初めて見た。

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海の中道の砂(右は擁壁) 

若い人で溢れかえる 「立体都市公園制度」を活用した三井不「MIYASHITA PARK」(2020/9/6)

 

 

 

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