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2022/07/03(日) 17:10

コロナで市場激変 ポラス商圏 人口流入増2020年1.6万人⇒2021年2.5千人へ

投稿者:  牧田司

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ポラスの先導的モデル街区「浦和美園E-フォレスト」

 ポラスグループの2022年3月期決算を先に紹介したが、同社の発表会は十分時間を割き(1時間半)、メディアの質問にも丁寧に答えるのがいい。小生は同社の分譲戸建てやマンションを結構見学しているので、遅行指標の決算数字にはあまり興味はないのだが、配布される40ページくらいの資料はなかなか興味深い。同社グループの商圏の分譲戸建て・注文住宅市場をほぼ完ぺきにとらえているからだ(どうしてそのようなことができるのか不思議)。

 その一つ、同社グループ商圏エリアの分譲戸建て市場平均価格(以下、市場)と同社グループの平均価格((以下、同社)の「差」がそうだ。

 さいたま地域(上尾市含む)では、市場は4,090万円であるのに対し、同社は4,685万円、その差は595万円だ。越谷地域(春日部、越谷、草加、三郷、吉川、八潮など)の市場は3,589万円なのに対し、同社は4,192万円、その差は603万円。常磐地域(松戸、柏、流山、野田、我孫子、鎌ヶ谷)の市場は3,549万円で、同社は4,242万円、その差は693万円だ。年度によってその差は縮まったり拡大したりしているが、過去4年間でみるとその差は500万円前後で推移している。

 一方で、同社商圏エリアでの着工戸数に対する同社のシェアは13.3%(前年比0.6ポイント増)で、本拠の越谷地域は20.3%(同2.4ポイント増)にのぼっている。2022年度予測では、市場着工20,156戸に対し同社着工は2,903戸なので、シェアは14.4%と見込む。

 この数字をどう読むか。市場価格より500~600万円、率にして14~20%高くてもなぜ売れるのか、仕入れを強化してシェア拡大を図ったらどうなるかだが、マンションも含めて同業他社と比較して基本性能・設備仕様レベルはまず負けないと記者は思う。戸建てでいえば、1階のリビング天井高を2.7mとしており、マンションでは100万円前後する収納付きピアキッチンを標準装備していることが象徴している。

 問題は検討者の取得能力だろう。記者は、マンションも含めて一般的な一次取得者の取得限界価格は6,000万円(マンションも同様)とみている。同社の平均価格4,546万円(前年度比405万円上昇)からしてまだ余力はありそうだが、消費者の可処分所得が伸び悩んでいるのは気になる材料だ。

 分譲戸建ての課題の一つでもある質向上では、どこもやっていないZEHレベルに引き上げるべきだと思うが…発表会で中央住宅・品川典久社長は明言を避けた。どこが先陣を切るか。

 商圏やターゲットが異なるので単純比較はできないが、参考までに主な会社の分譲戸建ての直近の売上戸数(または契約戸数)と1戸当たり単価を紹介する。

・飯田グループHD  41,534戸 2,866万円
・オープンハウス     5,546戸 4,206万円
・ケイアイスター不動産  3,604戸 3,451万円
・ポラスグループ     3,050戸 4,546万円
・三栄建設設計      1,990戸 4,260万円
・三井不動産        507戸 7,591万円
・野村不動産        451戸 6,650万円
・積水ハウス      2,261戸   8,469万円※

※積水ハウスの「分譲住宅」は、停止条件付き土地分譲も含まれ、建築設計・請負も含まれる。ZEH比率は新築戸建てと同程度(90%以上)となっている。20221月期の分譲住宅セグメントの売上高は前期比37.6%増の1,914億円で、優良土地の仕入れや営業体制の強化が奏功し、大幅な増収増益となった。また、注文戸建住宅の1棟単価も4,265万円(前期比127万円増)と突出している。

◇        ◆     ◇

 同社グループ商圏エリアの住宅着工戸数と人口動向を見た資料がまた面白い。このテータは毎年発表されるのだが、字が小さくてよく読めないし、商圏エリアで人口が増加するのは当たり前だと思っていたので詳細に読むことなどなかった。今年の資料には「ポラス商圏内には、メインターゲットである25~44歳の住宅一次取得層世代が2.5千人流入超過」とあった。

 すると、同業の記者の方が「昨年の資料には1.6万人流入超過とあるがこれはどうしたことか」と質問した。これには驚いた。桁が違うではないか。

 早速、同社から昨年度の資料を頂いて比べてみた。人口は2020年度の11,222,722人(前年比32,073人増)から11,221,753人(同969人減)へ減少に転じ、25~44歳の第一次取得層の流入出は2020年は16,038人の増加だったのが、2021年度は2,594人増にとどまっている。

 エリア別にみると、2020年度は「さいたま」が8,174人、「越谷」が1,558人、「松戸」が6,304人といずれも流入増となっているのに対し、2021年度は「さいたま」は3,601人、「越谷」は944人とそれぞれ増加しているものの、人数は大幅に減少し、「松戸」は1,951人減となっている。

 区市町別では、2020年は5,317人増のさいたま市、3,442人増の江東区、2,224人増の流山市など26区市が流入増となっていたのが、2021年度は4,648人増のさいたま市、3,218人増の流山市、1,669人増の江東区など流入増は18区市に減少。逆に、江戸川区、板橋区、浦安市、市川市、船橋市などは1,000人以上が減少している。

 「1.6万人増」が「2.5千人増」と激減したのがどのような影響を及ぼすのか。品川社長は「売れるところとそうでないところの二極化が進んでいる。直近4-6月の反響は前年比75%だが、それでもコロナ前を上回っている」と話した。

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 首都圏の人口減少が注目されている。2022年1月現在の人口は36,828,661人(前年同月比73,348人減)で、都県別では東京都が13,988,129人(同48,592人減)、神奈川県が9,231,177人(同5,160人減)、埼玉県が7,336,455人(同7,541人減)、千葉県が6,272,900人(同12,055人減)と全ての都県で減少。東京都は26年ぶり、神奈川県と埼玉県は調査を開始して以来初の減少となった。

 人口減少の最大の要因は、コロナ禍での外国人の人口流失だ。東京都を例にとると、令和2年1月では577,329人だった外国人は令和4年1月には517,881人へ10.3%減少している。もっとも外国人居住者が多かった新宿区は42,598人から33,907人へ実に20.4%減少し、2番目に多かった江戸川区の35,220人(令和2年1月は38,173人)に抜かれ、3番目に多かった足立区の33,138人(同34,040人)とほとんど並んだ。

 総務省のデータによると、在留外国人は2020年6月の約289万人から2021年6月は約283万人へと約6万人減少している。地方都市が一つ消えた数字だ。

 もう一つは、テレワークの定着による首都圏脱出者の増加と思われるが、これは詳細な流入出の調査をしないと分からない。

 総務省のデータによると、2022年5月の市区町村間移動者数は42万3842人と前年同月に比べ6万6049人(18.5%)増加し、外国人の市区町村間移動者数も5万8217人、前年同月に比べ99.3%増加した。この時期は入社、転勤、入学などで移動・異動が多い時期ではあるが、今後どのように推移するか。

 参考までに流入増と流出減の上位10都道府県を紹介する。流入は埼玉県がトップで、流出は千葉県が最多。

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ポラスグループ2022年3月期決算 売上高は6期・経常利益は3期連続過去最高(2022/6/30)

 


 

 

 

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