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2022/07/10(日) 09:58

奇跡の「見沼たんぼ」に着想 立地難逆手に取った商品企画光る ポラス「北浦和」

投稿者:  牧田司

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「北浦和みのりのプロジェクト」(左側は小学校の敷地)

 ポラスグループ中央住宅は7月8日、「農と住まい・ヒト・モノ・コトがつながる暮らし」をテーマにした全51戸の「北浦和みのりのプロジェクト」記者見学会を行った。浦和駅、北浦和駅、浦和美園駅、東浦和駅4駅が最寄り駅ではあるが、バス便の立地難を逆手に取った商品企画がヒット。3月に分譲した第1期34戸が即日完売するなど、これまで42戸が成約・申し込み済みだ。

 物件は、JR浦和駅からバス12分バス停徒歩7分、北浦和駅からバス11分バス停徒歩7分、さいたま市緑区松木1丁目の第一種低層住居専用地域(建ぺい率50%、容積率100%)に位置する全51戸。土地面積は約110~115㎡、建物面積は100㎡前後、価格は2,980万~4,850万円。建物の構造は在来工法2階建てで、一部を除き完成済み。施工はポラテック。

 プロジェクトは、「見沼の田んぼ」と呼ばれる1200ha以上の農地が近くに奇跡的に残っていることに着想、〝庭で野菜を育てたい〟〝自然が豊かなところで暮らしたい〟〝自分らしい生活をしたい〟など自然・農業・コミュニティを「居・食・住」としてとらえ、分かりやすく具現化しているのが特徴。

 「居」では、自然が多いエリアであることから、ポタジェや緑のカーテン、実のなる木、灯りのいえなみ協定を、「食」では見沼田んぼでの農業体験、ワークショップ、食育・地産地消を考える機会を、「住」では、木の内装材を多用し、安心・安全の住まいをそれぞれ提案。これらが円環となって新たな価値をクリエイトしょうというメッセージを発信している。

 物件のホームページを2月に開設し、3月10日に分譲した第1期34戸は最高4倍で即日完売するなど、これまで42戸を成約・申し込み済み。46%が共働き世帯で、教員など公務員、病院関係者が目立つという。来場者は200組超。購入者の居住地は21%が地元、そのほかは県外を含み中広域に広がっている。

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ポタジェ(背後に隣家の雨水ポンプが見える)

◇        ◆     ◇

 現地見学は、東浦和駅から車で案内してもらったので、いったいどこを走っているのか全く分からなかったが、東浦和駅前通りの街路樹はとても美しく、それを車窓から眺めながら、戸建ての価格は、マンションなら浦和、大宮駅圏は坪単価400万円を突破しているので5,000万円くらいではないかと見当をつけた。

 ここで横道にそれる。緑区の道路維持課によると、植えられている街路樹はユリノキ、クスノキがほとんどで、南部建築事務所が管轄する中央区、桜区、浦和区、南区、緑区の5区の街路樹は約13,000本で、中低木を含めると約16,000本。樹種はこのほかニセアカシア、トウカエデ、ハナミズキ、ケヤキが多いという。年間の維持管理予算は約4億円。とくに緑区は他区と比較して圧倒的に緑被率が高いそうだ。

 話を聞いて課題もあると思った。道路維持課は街路樹などの維持管理を担当し、樹種を決めるのは他の部署とのことだ。ここに街路樹が道路の附属物としか位置づけられていない問題がある。街のポテンシャルを左右する街路樹の選定は、専門家を起用し、部署間連携は当然ながら市民も含めて行うべきだ。街路樹をめぐり市民の苦情が多いのは、市民ほの説明が不足し声を聴いていないからだ。市の街路樹に関する公表データも少ない。

 話を元に戻す。予想は大外れ。信じられない〝安さ〟だった。モデルハウスの質は決して低くない。床、壁、建具・家具は本物の木の挽板が採用されている。

 売れ行きにはびっくりしたが、さもありなんとも思った。2年前、同社が春日部市の調整区域内で分譲した「ハナミズキ春日部・藤塚」(全22戸)の見学会でも感じたのだが、駅に近いとか商業施設が整っているとか、そのような利便性に価値を見出す人は圧倒的に多いのだろうが、そうではないと考えている人も一定存在する。そのような人にフォーカスした今回の商品企画がヒットしたということだろう。

 プロジェクト責任者の中央住宅戸建分譲設計本部設計一部部長・野村壮一郎氏は、「従前は自然の森だった用地を取得し、34棟を当初は計画したが、その後隣接地を買い増しして全51棟に変更。生活利便施設は揃っていたがバス便であることから、何かできないかを考え、『見沼たんぼ』に車で5分の立地でもあることから、地元で農業を営むこばやし農園とコラボし、建物だけではなく暮らしをデザインした」と語り、「こばやし農園の小林さんにアドバイザーになっていただき、日常的に『農』を取り込めるように企画した」と同部営業企画設計課係長・酒井かおり氏が話した商品企画が光った。

 同社が3年前に近隣エリアで分譲したときは購入者の47%が地元だったことを兼ね合わせ考えると、コロナ禍で消費者の住宅選好基準は間違いなく変わっている。そのヒントは、さいたま市は人口流入が全国でもっとも多いことにある。

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 見学会で紹介された見沼田んぼは、さいたま市、川口市の2市にまたがる南北約14km、外周約44km、面積約1,258ha。江戸時代に水田確保のために開発されたのが奇跡的に現在まで残り、野菜などが栽培されている。広さは、東京23区内の農地約95ha、皇居の115haとはケタ違いで、千代田区の1,164haにほぼ匹敵する。

 「こばやし農園」は2014年営農開始、2017年株式会社を設立。年間50~60種類の野菜を無農薬で栽培し、「見沼野菜」として販売している。

 社長を務める小林弘治氏は1996年、さいたま市生まれの55歳。浦和高校-慶応大学を卒業後、広告代理店に勤務していたが、「農業には全く縁がありませんでしたが、突然(天から)降りてきた。これが天職だと思い、脱サラを決意しました。今はパートさんを8人雇い、約2haの農地に50~60種の野菜を栽培しています。今年からコメの栽培も開始しました。獣害? クマやサルはいませんが、カラス、タヌキ、ハクビジン、イタチ…それと人間」と話した。

 取材後、現地を案内してもらった。武蔵野線から眺めたことは何度もあるが、そこが見沼たんぼだとはまったく知らなかった。栽培されている野菜はサトイモやナスなどが多く、小林氏も話したように耕作放棄地も多く、目視したところでは2割くらいあるのではないか。営農者の高齢化、後継者難が課題であるのがうかがわれた。

 小林氏は「ロールモデルにしたい」とも語った。難しい問題が立ちはだかっている分だけ「見沼野菜」の可能性もまた大きいと思った。

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小林氏

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見沼田んぼ

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サトイモ畑

調整区域の市民農園付き200㎡邸宅 ポラス「ハナミズキ春日部・藤塚」企画秀逸(2020/7/3)

 

 

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